連載 『会計士・税理士・簿記検定 財務会計のセンスが身につくプチドリル』(第82回)ー 固定資産の減損①‐⑩の復習


長島 正浩(茨城キリスト教大学教授)

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Q1(空欄補充)
固定資産の減損とは,資産又は資産グループの( ① )により( ② )の回収が見込めなくなった状態であり,減損処理とは,そのような場合に,一定の条件の下で( ③ )を反映させるように( ④ )を減額する会計処理である。

A
① 収益性の低下
② 投資額
③ 回収可能性
④ 帳簿価額
*減損意見書三3
『人の体に例えると減損は“病気”で,減損処理は“手術”のようなもの』

Q2(空欄補充)
減損の( ① )とは,固定資産に減損が生じている可能性を示す事象である。
減損の( ① )がある資産又は資産グループについて,それから得られる( ② )が帳簿価額を下回る場合に減損を認識する。
減損損失を認識すべきであると判定された資産又は資産グループについては,帳簿価額を( ③ )まで減額し,当該減少額を減損損失として( ④ )とする。
減損損失は,原則として,( ⑤ )とする。

A
① 兆候
② 割引前将来キャッシュ・フローの総額
③ 回収可能価額
④ 当期の損失
⑤ 特別損失
*減損会計基準二1,二2(1),二3,四2
『兆候(腹痛)で病院へ,簡単な診察で減損(病気)と認識,精密検査して減損損失(手術で切除)を測定』

Q3 固定資産の減損における「資産又は資産グループ」とは何を指すか,説明しなさい。

A
企業が保有する固定資産で,他の固定資産から概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位をいう。
*減損会計基準二1,二6(1)
『単独の資産の場合もあれば,多数の資産を含む資産グループの場合もある』(桜井23版,188頁)

Q4 減損処理された固定資産は,何によって評価されているか,用語を答えなさい。

A
回収可能価額
※回収可能価額とは,資産又は資産グループの正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額をいう。
*減損会計基準二3
『今売ったら100万円,使い続けたら90万円,さてどっちを選ぶ?』

Q5 正味売却価額とは?

A
正味売却価額とは,資産又は資産グループの時価から処分費用見込額を控除して算定される金額をいう。
*減損意見書四2(3)
『正味売却価額とは結局手取り額のことである』

Q6 使用価値とは?

A
使用価値とは,資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値をいう。
*減損意見書四2(3)
『将来キャッシュ・フローは現在価値に割り引く』(桜井23版,189頁「設例8」)

Q7 減損処理と臨時償却の違いは何か?  

A
臨時償却が予見することができなかった原因等による耐用年数の短縮や残存価額の修正に基づいて一時に行われる減価償却累計額の修正であるのに対して,減損処理は収益性の低下を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理である。
*減損意見書三2,三3
『臨時償却は減価償却の一種であるが,現在は廃止されている』(変更誤謬訂正基準57項)

Q8 なぜ減損損失の戻入れは行われないのか?

A
減損の存在が相当程度確実な場合に限って減損損失を認識及び測定することとしていること,また,戻入れは事務的負担を増大させるおそれがあることなどから。
*減損意見書四3(2)
『“手術”で患部を切り取ったら,元に戻せない…』

Q9 減損処理を行った資産についてはどのように減価償却を行うか?

A
減損処理後の帳簿価額をその後の事業年度にわたって適正に原価配分するため, 毎期計画的, 規則的に減価償却を実施する。
*減損意見書四3(1)
『術後退院しても元のような元気はないかも…』

Q10 減損処理を行った資産の貸借対照表表示は?

A
減損処理前の取得原価から減損損失を直接控除し,控除後の金額をその後の取得原価とする形式で行う。ただし,当該資産に対する減損損失累計額を,取得原価から間接控除する形式で表示することもできる。
*減損会計基準四1
『控除後の金額をその後の取得原価とする形式は減価償却累計額とは違う』

◎復習しましょう!
1.CF計算書
2.一株当たり当期純利益
3₋1.金融商品会計①‐⑦
3₋2.金融商品会計⑧‐⑭
3‐3.金融商品会計⑮‐⑳
4-1.棚卸資産会計①‐⑥
4-2. 棚卸資産会計⑦‐⑫
5‐1.収益認識会計①‐⑦
5₋2.収益認識会計⑧-⑫
6.リース会計①‐⑥

〈執筆者紹介〉
長島 正浩
(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師,会計事務所(監査法人),証券会社勤務を経て,専門学校,短大,大学,大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後,松本大学松商短期大学部准教授を経て,現在に至る。この間35年以上にわたり,簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。

*本連載は,『会計人コース』2020年1月号付録『まいにち1問ポケット財表理論』に加筆修正したものです。


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