【税理士試験】簿・財同時合格を目指すためにやるべきことQ&A(後編)


【編集部から】
この9月から、来年度の税理士試験に向けて新しく簿記論・財務諸表論の学習を始めた方も多いと思います。

「簿・財同時合格」を目指すためには、何をすればよいのでしょうか。

今回、千葉商科大学「瑞穂会」で例年多くの合格者を輩出している渡邉圭先生に、簿記論・財務諸表論の受験生の素朴なギモンに答えていただきました。

前編では基本的な学習方針を伺いましたが、後編ではより具体的な勉強法について伺いました(前編はこちらから)。

Q 税理士試験では幅広い論点が出題されますが、まんべんなく学習したほうがよいですか?

Q 財務諸表論では、理論と計算のどちらを優先すべきですか?

Q 伝統的な論点はイメージがしにくいのですが、どう勉強すればよいですか?

Q どうしても理解できない論点がある場合は、どうすればよいですか?

Q 同じ問題を何度も解くのと、たくさんの問題を解くのとでは、どちらがよいですか?

Q 財務諸表論の理論が覚えられるか不安です。オススメの勉強法を教えてください!

Q 税理士試験では幅広い論点が出題されますが、まんべんなく学習したほうがよいですか?

渡邉先生 簿記論・財務諸表論ともに、まんべんなく学習してください。ただし、重視すべきは「基礎」です。

たとえば、今年度の財務諸表論(理論)で出題された「総合償却」は、マニアックな論点でしたが、このような特殊論点の前に、現金預金、売上債権、貸倒引当金、棚卸資産、有価証券、有形固定資産、資産除去債務、借入金、為替予約、賞与引当金、退職給付引当金、純資産といった基礎論点に加えて、出題頻度の高い論点を重点的に学習しましょう。

なお、「総合償却」については、会計人コースWebでの連載「日商2級から税理士へ ステップアップ会計教室」第29回で学習できます。他の特殊論点についても解説しているので、よければご参考ください。

Q 財務諸表論では、理論と計算のどちらを優先すべきですか?

渡邉先生 問題量や難易度に関係なく、計算を優先してください。理論は複数の模範解答が考えられますが、計算は正解が1つしかありません。そのため、他の受験生に差をつけやすいのが計算であるといえます。目安としては、難易度に関係なく40点以上(50点満点)を目指したいところです。

とはいえ、瑞穂会では、自己採点で同じ総合点でも、計算と理論をバランスよく得点できている学生のほうが、実際に合格できている傾向があります。極端ですが、ボーダーラインには乗っていても計算が40点、理論の大問1つが0点という受験生よりは、計算は40点に届かなくても理論でカバーしてボーダーラインに乗った受験生のほうが合格しています。

計算を優先的に学習するのが原則ではありますが、「総合的に解く」という視点は忘れないことが大切です。

Q 伝統的な論点はイメージがしにくいのですが、どう勉強すればよいですか?

渡邉先生 たとえば、今年度の財務諸表論で出題された「有形固定資産の総合償却」、「為替手形」などは、今の時代や実務に即しているのかという観点でみると、なかなか理解しにくい論点だと思います。

ただ、簿記論・財務諸表論は、「考え方」を学ぶ科目です。為替手形も、「キャッシュレス」という観点でみると、中世イタリアでは「キャッシュレス」を目的に利用されていました。特殊仕訳帳も紙としては残っていなくてもプログラムとしては考え方が受け継がれています。つまり、時代は変わっても、根底にある考え方は変わっていないんです。

ですので、伝統的な論点は、「なぜそれができたのか」という背景や目的を考えると、勉強がしやすくなると思います。

Q どうしても理解できない論点がある場合は、どうすればよいですか?

渡邉先生 人によってイメージしやすい論点もあれば、イメージしにくい論点もあります。どうしても理解できない場合は、「とりあえず暗記する」「暗記してから理解する」と頭を切り替えてしまったほうがよいと思います。

もちろん理想としては、理解するための勉強が望ましいですが、やはり試験には試験日という期限があるので、どうにもならないときは「暗記で乗り切る」というのも1つの戦略です。

また、何度も問題を解いているうちに「あれはこういうことだったんだ」と後付けの理解ができるようになりますから、まずは立ち止まらずに勉強を進めていきましょう。

Q 同じ問題を何度も解くのと、たくさんの問題を解くのとでは、どちらがよいですか?

渡邉先生 これは計算と理論で違います。理論の場合、複数の専門学校の問題集で同じ論点が出題されていても模範解答が違うことがあります。ですので、理論は、自分が「理解しやすい」と思う解説をしている専門学校を選択し、そこから出されている問題集だけを解くほうが効率がよいと思います。

一方で計算は、基本的には、たくさん問題を解いたほうがよいでしょう。専門学校に通っている方は、問題集がたくさん支給されていると思いますので1校のみで十分だと思いますが、独学の方は、複数の専門学校の市販問題集を解くのがよいと思います。

Q 財務諸表論の理論が覚えられるか不安です。オススメの勉強法を教えてください!

渡邉先生 私が受験生のときは、1週間単位で暗記する範囲を決め、1週間が経ったら、①頭の中で言えるか、②口で言えるか、③実際に書けるか、3段階で定着度を確かめていました。

③ができなかったら②に戻り、なるべくアウトプットよりはインプットを重視します。

翌週は、先週暗記した理論を復習し、完了したら新しい論点の学習に入ります。それを繰り返していき、網羅的に理論の学習を進めます。

このとき、一言一句を覚えることは当然できません。ただ、理論で重要なのはキーワードなので、「最初はキーワードだけでも押さえて、それをつなぐ言葉はあいまいでもいい」と考えていました。

回転数をこなし、キーワード以外の文章を徐々に押さえていこうと意識することで、文章の8割方は自然と身についてきます。まずは、キーワードを覚えることが大切です。

<執筆者紹介>
渡邉 圭(わたなべ・けい)

千葉商科大学基盤教育機構で准教授を務める傍ら、会計教育研究所「瑞穂会」で税理士試験講座(簿記論・財務諸表論)と日商簿記検定1級~3級講座を開講し、ともに多数の合格者を輩出している。

千葉商科大学 会計教育研究所 瑞穂会ホームページ


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