税理士うば先生から新・会計人へ ポジティブになれる春のメッセージ


税理士 伯母敏子

【編集部から】
この春から社会人となった皆さんのなかには、働きながら資格取得を目指そうと考えている方もいるのではないでしょうか。

会計に関する仕事に就いた場合は、税理士や公認会計士、日商簿記など、さまざまな目標が考えられますね。

しかし、そんな難関試験、働きながら目指しても大丈夫なのかな……そう足踏みしている方もいることでしょう。

そこで、税理士の伯母敏子先生から、この春はじめの一歩を踏み出そうとしている皆さんに向けて、メッセージをいただきました。

経験×知識は一生の財産になる

たとえば英語をマスターしたいと思ったとき、可能なら英語を母国語とする国に留学してしまえば手っ取り早い、という考えがあります。

会計人を目指す人が、仕事をしながら受験をする。

これは、語学をマスターするために海外留学することと、似ていると思いませんか?

いやいや、仕事も受験も覚えることだらけ、仕事でトラブルがあれば受験勉強を一時停止しなければならない、だから仕事を減らしたい・・・。

そんなつらいことばかりに目を向けているせいで、実はもったいない思考になっている方が多い気がします。

会計人を目指す人にとって、仕事で得られる経験と、受験で得られる知識は、どちらもとても大切です。

語学と同じように、その経験と知識は一生ものの財産となります。

今よりも、目指したいステージに向かうための底力として、多くの機会を得られるでしょう。

私が税理士試験の受験を決意するまで

私は、簿記3級の知識で会計事務所に入所しました。

はじめは出金伝票を起票することにすら自信が持てず、オロオロする毎日。

見よう見まねで会計ソフトに向かい合い、平気で貸借逆の仕訳を立てたり、消費税の区分を間違えたり、恥ずかしい失敗をたくさんしながら、それでも経験年数だけは増えていきました。

いつしか実務に自信が持てるようになりましたが、基礎知識が欠如している自分は、今の会計事務所を辞めたら、その経験は社会でまったく評価されないのではないか。そんな気持ちになりました。

時間をかけて手に入れた経験を、なんとかこれからの人生で役立てたい、という思いが少しずつ膨らんでいったのを覚えています。

私は、父が税理士試験に合格するまでどれだけ勉強していたかを見て育ちました。

だから、税理士試験は膨大な勉強時間を確保しなければならない、楽しいことを犠牲にしなければならない。

人生を賭けた苦しい戦いになる気がして、ずっと尻込みしていました。

けれど、本気で自分が満足する人生を生きるには、どんなことをするにせよ人生を賭けた戦いになるのではないか?

苦しそうだからと避けていては、なにも成し遂げられない、自分自身を褒めることも、認めることもできない人生になってしまうのではないか、と気がついたのです。

特に不幸でもなく、だからといってものすごく幸せというわけでもない、平均点の自分がいました。

平均点のまま終わりたくない。それなら、今まで培ってきた経験を活かし、わかりやすい資格を手に入れることができたら、社会からも必要とされ、自分の力で人生を切り拓けるのではないか・・・!

そうしてようやく、税理士試験に焦点を合わせる勇気が出ました。

仕事に勉強、途中からは育児も加わりました。理由をつけて諦めたいと思ったこともたくさんあります。

でも、乗り越えてきた経験は、すべて、自分の自信につながりました。平均点から、少しだけ抜け出せた気がしました。

仕事の経験が合格後に必ず活きる

独立して税理士業を営んでいる今、会計事務所での実務経験がなければ、資格を持っていたとしてもお客様に価値を提供できなかった、ということを実感しています。

私の顧客は主に法人ですが、会社は生き物ですから、想定外のさまざまなことが起こります。ひとつも教科書通りにはいかないというのが現実です。

税理士は、財政状態・経営状況を熟知している立場として、顧客から助言を求めれるわけですが、「経験」という引き出しがなかったら、おそらくほとんどのことに、うまく答えることはできないでしょう。

本で読んだ知識ではなく、少なくとも自分が経験してきたことと関連付けることができるからこそ、リアルな意見を言うことができています。

知識は本を読めば手に入ります。けれど、経験は、自分が時間を費やし、現場にいた記憶からしか身につきません。

記憶が映像となって脳裏に残っているからこそ、引き出しからすぐに取り出すことができるのだと思うのです。

英文法を知っていても、英会話ができないのと同じだということです。

資格とは、合格することが目的ではなく、社会の役に立つ、自分が生きていくためのツールでしかないのです。

生きた経験を積み上げていくためには、受験勉強で知識を得ながら、仕事で経験を積むことがベストパフォーマンスです。

今こそ、本気を出すとき! 人生を賭けて臨んでください。ファイト!

<執筆者紹介>
伯母 敏子(うば・としこ)
税理士。大学卒業後、大手リース会社の営業職、税理士事務所への転職を経て、平成28年4月に税理士登録、平成29年11月に独立開業。YouTube「ゆるふわチャンネル」は登録者数3,400名を超える。各種媒体への執筆、セミナー、イベントの開催、オンラインサロン運営など幅広く経理・税務関連サポートサービスを行う。
伯母敏子税理士事務所HP
ブログ「UBA-Style」


関連記事

ページ上部へ戻る