この春から始めたい、税理士試験「簿記論・財務諸表論」―①勉強するメリットは?


資格の学校TAC講師 加茂川 悠介

【編集部から】
令和4年度となりました。いよいよ来年度の税理士試験から会計科目(簿記論・財務諸表論)の受験資格が撤廃されます。

それは、税理士試験の入口でもある簿記論・財務諸表論を受験するハードルが下がり、「誰にでも挑戦できるチャンス」が生まれたということ。

来年度の話だし、まだ先のこと……と思う方もいるかもしれませんが、資格の学校TAC税理士講座の加茂川悠介先生は、新しく簿記論・財務諸表論の勉強を始めるなら「今が絶好のタイミング」と話されています。

本記事では、簿記論・財務諸表論に関心のある方に向け、受験するメリットを中心にアドバイスをいただきました。

※2回目「レベル別!勉強の始め方は?」はこちらから。

はじめに

みなさん、こんにちは! 資格の学校TAC税理士講座で財務諸表論を担当している加茂川悠介です。

本記事では、税理士試験の科目である「簿記論」と「財務諸表論」を勉強するメリットをご紹介します。

簿記論と財務諸表論は、税理士試験の11科目のうち「会計科目」といわれる2科目で、毎年8月に試験が実施されています。

簿記論はすべて計算問題で、財務諸表論は半分が計算問題、残り半分は理論問題です。

税理士になるためには5科目に合格しなければならず、そのうちの2科目ということになります。

会計科目の合格は税理士試験に必須なので、多くの税理士受験生がこの2科目から勉強をスタートします。

これだけ聞くと、「単なる通過点か」と感じられるかもしれません。しかし、そんなことはないのです。

就職時の「アピール材料」に、本格的な勉強の「スタート地点」に

たとえば、簿記論か財務諸表論、またはその両方に合格すると、それは「一生もの」となり、履歴書などにも書くことができるアピール材料となります。

税理士試験は、1科目から受験でき、合格した科目の効力は一生です。

私がこれまで教えた受講生のなかにも、科目合格をアピール材料として会計事務所などに就職した方がいます。

また、簿記論・財務諸表論に合格すると、公認会計士試験の一部科目免除も受けることができます。

そのため、税理士になるか、公認会計士になるか、はたまた別の職業か、今後のさまざまな可能性も踏まえて、会計を本格的に勉強する際のスタート地点とするのも有効だろうと思います。

今が勉強を始めるチャンス!

もうひとつ、私が簿記論・財務諸表論の勉強をすすめる理由として、受験資格の撤廃があります。

これまで簿記論・財務諸表論の受験には、高いハードルが設けられていました。たとえば、「大学で法学や経済学の単位を取得している」とか、「日商簿記1級に合格している」などです。せっかく先ほど話したようなメリットがあっても、実際に受験できる人が限られていました。

しかし、令和5年度から簿記論・財務諸表論の受験資格が撤廃され、「誰でも受験できるようになる」のです。

これにより簿記論・財務諸表論の受験者数は増えていくと考えられますが、まだこのことを知らない方も多いようです。また、今から来年度の試験に向けて準備(勉強)している方も少ないのではないでしょうか。

一般的に、簿記論・財務諸表論の合格を目指すためには、少なくとも1年くらいの勉強が必要です。そのため、今この時期が、新たな制度を利用して勉強をスタートする絶好のタイミングなのです。

高校生も、理系も、社会人も

高校生の方も、令和5年度からは誰でも簿記論・財務諸表論を受験することができます。高校生の間に合格すれば、卒業後は残りの3科目を勉強したり、公認会計士試験に挑戦することも可能でしょう。また、就職活動はもちろんのこと、大学のAO入試などのアピール材料となるかもしれません。

大学生も同様に、学年にかかわらず、今すぐ勉強をスタートしたら、来年度の試験で合格することが十分可能です。受験資格がなくなるので、会計系の学部ではない方も、今すぐ勉強を始めることができます。

私が教えた受講生に理系大学出身で合格した方がいましたが、合格報告の際に「簿記は数学みたいなものですね」と笑顔で話してくれました。文系はもちろん、理系の方にも受験のチャンスは広がっているように思います。

また、簿記論・財務諸表論の合格が「大学での単位取得にとても役立っている」と教えてくれた受講生もいました。

社会人の方も、これまでのような受験資格を気にすることなく、今日から簿記論・財務諸表論の勉強をスタートさせることができます。受験資格が撤廃されるまさにこのタイミングが、絶好のチャンスではないでしょうか。

次回は、現時点のレベル別に、どう簿記論・財務諸表論の勉強を始めるとよいのか、アドバイスさせていただきます。

【執筆者紹介】
加茂川 悠介(かもがわ・ゆうすけ)
税理士、CFP®。中央大学法学部、早稲田大学大学院法学研究科修了後、大手専門学校で教鞭をとる。その後、立命館大学大学院法学研究科で税法を学び、会計事務所勤務を経て、財務捜査官採用試験に合格。宮城県警退職後、資格の学校TAC税理士講座で講義を行う。現在、TACほか芦屋大学や近畿大学等でも講義を行い、日々、わかりやすい講義に向けて自己研鑽している。


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