“わかったつもり”をなくす「反転授業」メソッドとは?(紹介編)


髙木 昭宏(株式会社M-Cass取締役)

【編集部から】
理解したつもりだったのに問題を解くことができない、覚えたつもりだったのに思い出すことができない、そんなお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
学習が進めば進むほど、このような“わかったつもり”に陥ってしまいがち。
そこで、そんな“わかったつもり”をなくす学習法について、簿記検定や税理士試験などの指導キャリアがあり、実務にも詳しい髙木昭宏先生(株式会社M-Cass取締役)にご紹介いただきます。

皆さんは、「わかったつもり」になってしまう勉強をしていませんか?

たとえば、専門学校の講義が非常にわかりやすく、「ふむふむ、納得できた!」と思っても、家に帰って「さあ、問題集を解いて復習だ!」と張り切って机に向かうと、まったく問題が解けない。何度も読んで覚えた会計基準も、なんとなく定義はわかるのに、文章のつながりや意味を理解できていない。

なぜ、このようなことが起こってしまうのか? それは「わかったつもり」=「流暢性の幻想」に陥っているからです。

「流暢性の幻想?」 はじめて聞く言葉かもしれません。

1.「流暢性の幻想」とは?

流暢性とは、情報を適切に素早く処理し出力する能力のことです。そして、先生が話したこと、テキストで読んだことなどをその場ですぐに思い出せると、翌日や翌々日になっても思い出せるのではないか、そう信じてしまう現象のことを「流暢性の幻想」といいます。

この「流暢性の幻想」は非常に強力で、「わかったつもり」を招いてしまう可能性があります。

わかりやすい講義を受ける、テキストに線を引く、問題を繰り返し解く、レジュメに目を通す、板書を見直す……これらは、「流暢性の幻想」を生み出す学習テクニックといえるものなのです。

では、どのように学習したらよいのでしょうか?

2.“わかったつもり”をなくす「反転授業」

「流暢性の幻想」を防ぐには、「反転授業」の方式を取り入れるのが効果的です。

私が運営に携わっている株式会社M-Cassでは、講義にこの「反転授業方式」を取り入れています。

では、具体的に「反転授業」とは何か? 私たちの講義を例に、その特徴をご紹介します。

① インプット(基礎)を自分で行い、アウトプット(発展・応用)を教室やオンラインで講師と対面しながら、また、受講生同士で話し合いながら行う。ここでいうアウトプットは、とあるテーマ(「現金預金」、「有価証券」など)の課題について、自分で調べて説明すること。

【課題例】
・引当金には、どのような種類があるのか、自分なりに調べて、列挙してください。
・「基準」における有価証券の評価とその論拠について説明してください。

② 基本的に①で講師が解説することはない。受講生自身が説明する、話し合う、質問に答える。講師から受講生への質問は、イレギュラーな質問が飛ぶことも。

③ 受講生は、②ができるようにレジュメを作成するなどの事前準備をする必要があり、これが1つのペースメーカーとなる。

④ 他人に「説明」しなければならないため、「わかったつもり」を防ぐことができる。また、「他人に説明する」という視点をもつため、「説明の順番」「どこが大事か」「要はどういうことか」などを意識しながら勉強を進めることができる。また、他人の説明を「聞く」ことで、重要なフレーズや用語が自然と耳に残り、何度も書くより、効率的・効果的に理解、記憶することができる。

以上が、私たちが取り入れている「反転授業方式」です。

反転、すなわち講師と受講生の立場が入れ替わり、受講生自身がテーマについて説明したり、質問に答えたりする。

「自分の言葉」で説明することで、そのテーマについて、より理解を深めることができるのです。

3.「反転授業」を普段の学習にどう取り入れる?

さて、この「反転授業」ですが、先ほど説明したそのままに実践するのは難しいでしょう。ただ、「反転授業」のエッセンスは取り入れることができると思うので、その方法をご紹介します。

① 1枚の紙に「他人に説明する」ことを意識して勉強した内容をまとめる。

具体的には、仕訳の意味を考える、会計基準等のどの部分が根拠になっているのかを考える、など。

②  「要はこういうこと」が言えるように理解する。

具体的には、まとめノートやポイントノートを作成し、間違いやすいポイントも含め、重要ポイントを短い文章で記録しておくとよいでしょう。

③ ①の紙を裏返しにし、何も見ないで説明できるか確認する。

直前に説明した内容でも、何も見ないと説明できないことが意外に多いものです。語句の意味や文章のつながりを考えながら、説明することを心がけましょう。

4.最後に

以上、私たちが推奨する「反転授業」メソッドについてご紹介しました。

公認会計士試験や税理士試験、日商簿記1級検定などの難関試験を突破するためには、知識の量も必要ですが、知識の深さも大切です。

そのためには、会計原則や会計処理の共通点や相違点、その論拠など「つながり」をしっかりと理解しなければなりません。

しかし、テキストを見ながら、講義を聞いて、問題集を解くだけでは、しっかりと理解することはなかなか難しいものです。

そこで、いつもとは違った「説明する」という視点を取り入れてみましょう。

なんとなく読んでいたテキストも、何度も解いていた問題集も、「誰かに説明する」ということを意識するだけで、違う視点で見ることができ、より実践的・本質的に理解できるようになるはずです。

なかなか時間がかかる作業なので、最初は大変かもしれませんが、大きな力につながることを信じて、ぜひチャレンジしてほしいと思います。

次回は、今回ご紹介した反転授業の効果を体験してもらうべく、実際に私たち株式会社M-Cassが受講生に与えている課題例をご紹介します。

皆さんも、ぜひチャレンジして、反転授業の世界に触れてみてください。

【執筆者紹介】
髙木 昭宏(たかき・あきひろ)
株式会社M-Cass取締役

熊本大学大学院修了。専門学校や大学・企業にて、簿記検定講座やファイナンシャルプランニング講座で講師を15年以上担当。知りたい知識を覚えるのではなく、スッと体にしみこむような指導法で多くの資格試験合格者を輩出。税理士試験会計科目、日商簿記1級、建設業経理士1級などに合格。株式投資における幅広い知識と鋭い分析力にも定評がある。

株式会社M-Cassでは、「反転授業」の体験・相談会を随時実施しています。ご興味のある方はぜひ、下記のURLからアクセスしてみてください。
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