【令和3年公認会計士試験合格発表!】就職活動を成功させるために、今すべきこと


桑本 慎一郎

【編集部より】
令和3年公認会計士試験に合格された皆さん、おめでとうございます!

ほっとしたのもつかの間、さっそく就職活動も本格化し、もうじき大手監査法人では面接期間に突入します。

すでに準備を進めている方も多いと思いますが、後悔しない就職活動にするためには何をすればよいのでしょうか?

そこで今回、さまざまな会計士のキャリアを紹介するウェブメディア「会計士の履歴書」を運営し、エージェントとして多くの会計士の就転職をサポートされてきた桑本 慎一郎先生(公認会計士・株式会社PCP代表取締役)に、「合格した今やるべきこと」をお話しいただきました。

公認会計士試験合格、おめでとうございます!

合格に至るまでの道は大変だったと思います。本当にお疲れ様でした。

しかし、ここでひと安心してはいけません。試験合格は受験生にとってはゴールですが、試験に合格した今、あなたは会計士としてのスタート地点に立ったのです。

このスタート地点において将来キャリアを見据えてどのように行動していくかで、あなたの会計士としての人生は大きく変わってきます。

公認会計士が行う監査は国から認められた独占業務であるため他者と差別化しやすい、また受験勉強で学んだことを実務で活かしてみたいといった理由もあって、試験合格者の約9割は監査法人に就職します。

そこで本記事では、試験合格者の大半が就職するであろう「大手監査法人」を対象に、会計士としてスタート地点に立っているあなたが今やっておくべきことをお伝えしたいと思います。

今年の採用状況は?

監査法人の採用状況は、そのときどきの景気や社会情勢によって急変します。ただし、ここ5年ほどは安定的に推移していて、2022年入社者を対象とした採用についても例年通りの売り手市場(受験生有利)になると予測されます。

そのため、「大手監査法人ならどこでもいい」と考えているのであれば、よほどの問題がないかぎり、いずれかの法人の内定はとることができると思います。

しかし、もしあなたが「どうしても入社したい」と思っている監査法人があるのであれば、しっかりと準備をしたうえで就職活動をすべきです。

採用は「コミュニケーション能力」と「人柄」で決まる

監査法人への就職対策は、実は一般的なものと比べて大差はありません。

面接を受ける人たちはみんな試験合格者であり、監査で必要とされる基礎能力があることは認められた人たちです。

では、どういった点で採用の可否が決まるのでしょうか。

それは「コミュニケーション能力」「人柄」です。

コミュニケーション能力とは、相手の質問の意図を汲み取り、自分の考えを相手が理解しやすいように伝える能力です。

これは簡単なように思えますが、しっかりできている人は意外と多くありません。特に質問と回答が対応していない人が多いので注意が必要です。

よくあるのは、面接官の質問内容をちゃんと理解できていない(もしくは、緊張しすぎて質問内容を忘れてしまった)にもかかわらず、無理やりに回答をひねり出すケース。

このような場合に、質問と回答がずれてしまうことが多いです。

正しい対応方法としては、無理矢理に回答をひねり出さず、質問内容をもう一度聞きなおすことをおすすめします。

次に、監査法人が求める人柄とは「誠実性」をいいます。

この誠実性は、面接という短い時間で伝えるのはなかなか難しいです。

しかし、ハキハキとした挨拶と笑顔があれば、多くの場合はいい印象を与えることができます。

逆に、聞き取れないような小声で話したり、緊張でこわばった顔だったりするといい印象を与えられません。

特に、コロナ禍にある今年の各監査法人の面接形式はオンラインとなることも想定されます。

インターネットの通信状況が悪いと声が聞き取りづらくなってしまったり、カメラの角度によっては顔が暗く映ってしまったりして、面接官にマイナスな印象を与えかねません。

そのため、少し面倒ではあると思いますが、面接時はパソコンをなるべく有線でつなぐようにし、カメラの角度は自分の目の高さと水平になるように設置しましょう。

また、できれば顔が明るく映るように、小型の照明を使うとなおよいですね。

入社後の満足度が高い人・低い人の違いとは?

「コミュニケーション能力」と「人柄」にさえ注意を払っておけば、監査法人から内定を獲得することは試験合格に比べるとそれほど難しいものではありません。

しかし、入社後に後悔しないためにも、今こそ考えておくべきことがありますのでお伝えします。

実は、監査法人に入社するまでに、将来キャリアを考えて行動した人とそうでない人とでは、入社後の満足度や成長速度に大きな差が生じます。

就職活動の時点で、将来キャリアを考え、目的意識をもって選択・行動した方は、自らがよしとする職場環境(たとえば、IPO準備企業をたくさん支援できる、超有名大手企業に携われる、ワークライフバランスが保たれている、など)である監査法人を選択するために、入社後の満足度も当然高いです。

また、将来の目標のために監査法人でどんな経験を積んでどんな能力を磨くかも明確なため、あれもこれもと目移りすることなく、集中して業務に取り組むので成長速度も速くなります。

とはいえ、将来キャリアを考えるためには、どうすればよいのでしょうか。

この方法はたくさんありますが、ここではひとつご紹介します。

お金・時間・やりがい、どれを優先する?

ほとんどの人にとって、将来を考える基軸は「お金・時間・やりがい」に収斂されます。これらをすべて満たせるとよいのですが、現実はそうはいきません。

そのため、まずは「お金・時間・やりがい」をどの順で優先していきたいかを決めましょう。

その際、具体的な数値にまで落とし込むとイメージがもっとつきやすくなるのでおすすめです。

たとえば、

「5年後にはIPO準備企業からの相談事項や会計論点については一通り回答できるような知識・経験を身につけ、年収1,000万円を稼げるようになる。それまでは残業をたくさんしてでも実力をつけることを重視する。」

といった具合です。

このような具体的なイメージをもつためには、いろんな会計士の事例を知るのが効果的かつ効率的です。

その事例については、さまざまな会計士のキャリアを取り上げている「会計士の履歴書」というウェブメディアがあるので、ぜひご覧ください。

◆「会計士の履歴書」執筆者のページ

さいごに

私のアドバイスがあなたの就職活動に少しでもお役に立てば、これ以上に嬉しいことはありません。

よりよい監査法人とのご縁があることをお祈りいたします。

そして、なんらかのかたちで同じ業界の仲間として、いつの日かお会いできることを楽しみにしています。

〈執筆者紹介〉
桑本 慎一郎
株式会社PCP代表取締役/公認会計士
1981年生まれ。同志社大学商学部卒業。監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)において、上場企業や公益法人等の監査や金融機関の自己査定関連業務に携わる。
監査法人から事業会社への転職活動中、会計士の転職に関する情報がほとんどないために、将来キャリアをイメージしづらいという問題があることを認識する。この問題を解決し、会計士が適材適所で活躍するためのインフラを構築して社会貢献することを理念に、会計士専門の転職エージェントであるPCPを創業。会計士の口コミで認知を広げ、これまでに1,000人以上の会計士を支援する。
また、2018年には「会計士の履歴書」というさまざまな会計士のキャリアが描かれたメディアサイトをリリース。現在は「垣根を越えて繋がれる会計士のサードプレイス」という位置づけで、キャリア情報以外にも役立つ情報を提供している。
著書に『会計士が転職を考えたら読む本』(中央経済社)がある。

★就活生も将来キャリアを考えるときに読みたい! 会計士による会計士のためのキャリアガイド

著者:桑本 慎一郎
定価:2,200円(税込)
発行日:2021/07/08
A5判 /144頁
ISBN:978-4-502-38881-1
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