もしもタイムリープできるなら? 税理士が振り返る、合格のための環境づくり


しのはら先生
横浜生まれ横浜育ちのメガネの開業税理士。
税理士試験5連敗の後、4年間で5科目合格。
過去に税理士試験専門学校で講師を務め、現在は税理士事務所の経営とともに、ブログを通じて未来の税理士である受験生たちを応援中。

はぐみ
犬(ペキニーズ)。趣味は食べること。
しのはら事務所の看板犬として事務所の広報関係を担当。

受験1年目にタイムリープできるなら……

まずは、第71回税理士試験を受験された方、本当におつかれさまでした。9月から専門学校の講座も開講していますので、すでに勉強の日々が始まっていますね!

タイトルを見たら……しのはら先生、タイムリープ系に手を出したのね。今、「東○リベンジャーズ」とか流行っているものね。

僕はタイムリープといったら、「時をかける少〇」とか「シュタインズゲ〇ト」だけどね!
というわけで、僕は税理士試験に5連敗したのだけど、その後に自分を取り巻く環境を大きく変えたら順調に合格できました。
いま、僕が受験初年度にタイムリープして、その環境づくりを当時の僕に伝えることができれば、5連敗を阻止できる! 早く税理士になれる!
だから、今からタイムリープしてみようかと思ってね!
あ、でも……タイムリープして過去の自分に会ったらタイムパラドックスが……以下略

皆さん、こんにちは。税理士の篠原と申します。

タイムパラドックスの話は置いておいて……僕は税理士試験に5連敗しました。
当時は税理士事務所に勤務していて、税理士の仕事が本当に大好きで、どうしても合格したいと思っていました。でも5連敗……(涙)

そこで僕は、受験6年目からは気持ち新たに自分を取り巻く環境を大きく変えることにしました。
そして、6年目で念願の初・科目合格。結果的に、5連敗の後は4年間で5科目合格を果たしました。

そんな僕の経験から、合格するためにはやはり「環境」がとても大事になってくると感じています。
ですので、今回は僕が受験生時代に実践した環境づくりを皆さんにお伝えしたいと思います。

もちろん、一人ひとりの置かれた状況によって実践できるものとできないものがあるでしょう。
しかし、置かれた状況の中で、「どうしたら合格する可能性が高まるか?」を考え、実践することが大切です。

ちなみに、専門学校のカリキュラムをこなす、演習教材をこなす、理論暗記の精度を上げるなど、最低限やるべき当然のことは書きません。

本記事が皆さんの受験生活において何かのヒントになったら嬉しいです。

なぜ、環境づくりが大切なのか?

税理士試験って長丁場ですよね。
僕の場合は、さすがに5連敗もすると、毎日、毎日、毎日、毎日、「頑張るぞ!」と自分を鼓舞するのは疲れてしまいました。

それでも税理士になりたい! 諦めたくない!
だったら勉強することを朝起きたら歯を磨くのと同じくらい日常生活に溶け込ませようと思いました。

やる気スイッチ?
いやいや! やる気スイッチなんて押すことも省略したほうがいいです。
勉強するのが当たり前になれば、やる気スイッチなんてわざわざ押す必要ないですから。

ぜひ、声を大にしてカッコよすぎるセリフを言ってください。
「毎日勉強がつらくないかって? そんなの息を吸うのと同じことさ!」

【環境づくり1】税理士試験に挑戦していることを宣言する

僕ははじめに、家族、友人、職場の人たち、お客様など、とにかくたくさんの人たちに税理士試験に全力で挑戦することを宣言しました。
「前回まではウォーミングアップだ! 今回からが本番だ!」とね(笑)
結果的に、本気で応援してくれる人が増え、そんな方々にいい報告がしたい! と思うようになりました。

いい報告をするためには、毎日勉強して合格する確率をアップさせるしか道はありません。
しだいに勉強するのが当たり前になり、勉強しない日はほぼなくなりました。
(僕が勉強を休んだのは、本試験後から専門学校で新しい講座がスタートするまでのみ。それ以外は必ず毎日勉強していました。もちろん元旦もね!)

ちなみに、僕にとっては昼休みも貴重な勉強時間でした。昼休みに職場の応接間でお昼ご飯を食べてすぐに勉強スタートです。
宣言してからは、「ランチ行かない?」といった誘いはなくなりました。
それでも職場の皆さんとは仲良しでしたし、直前期には仕事面でもサポートしてくれました。

それは、全力で税理士試験に挑戦することを宣言したからです。
そして、毎日、昼休みも勉強して行動で示したからです。
その結果、応援してもらいながら勉強する環境をつくることができました。

【環境づくり2】お客様や家族に勉強で得た知識をフィードバックする

僕は税理士事務所に勤務していたので、勉強したことをお客様にフィードバックするようにしました。
お客様の仕事に直接は関係のない知識でも、話の小ネタになります。

たとえば、
「社長! ドラッグストアの風邪薬って医療費控除の対象になるからレシートをポイポイ捨てないほうがいいですよ! あと、病院までの電車代やバス代などの交通費も医療費控除の対象ですよ。でも、自家用車で通院した場合の駐車場代は対象外です! それにはちゃんと理由があって、医療費控除の対象になるものは、病院などへ収容されるための人的役務の提供の対価のうち……以下略」
みたいな感じです。

「自分の言葉で勉強した内容を誰かに伝える」、これはものすごく理解が深まりますよ!
相手に説明する過程で、自分の理解が足りていない部分や曖昧になっている部分が明確化してきます。
だから僕は、なんでもいいので、お客様、家族、友人、職場の人たちに勉強で得た知識をフィードバックしました。

聞く相手が素人さんだとチャンスです。
勉強した内容を、日常生活の何かに当てはめられないか? そう考えるだけでも理解が深まり、記憶の定着に役立ちました。
誰でもわかる平易な言葉で説明するには“真の理解力”が必要ですから!

それに、相手から「知らなかった! ありがとう!」と言われると嬉しいですし、モチベーションアップにつながりますから、税理士試験の勉強が楽しくなってくるんです。

ちなみに、フィードバックを続けていると、いろんな人たちから「しのはら君! なにか面白い情報ない?」と催促されるようになりますので、より一層アウトプットの機会が増えますよ! まあ大変なのですが(笑)

【環境づくり3】生活導線に“勉強のキッカケ”を取り入れる

まず僕は、専門学校が通勤経路上になるように引っ越しました。
仕事からの帰り道に、当然のように専門学校へ通います。お洒落なカフェや立ち飲み屋には目もくれず専門学校に行くのです。だから平日に専門学校に行くのが「日常」になりました。

休日も、通勤経路上に専門学校があれば、平日と同じ経路で専門学校に行くことができるので、普段と違う経路で通うよりも圧倒的にストレスが少ないです。
だって本当なら、休日は専門学校に行かずに家でゆっくり休みたいですからね。

ついでに、定期券を利用して専門学校に通えるのでお得です。

ちなみに僕は、休日に専門学校に行くときは、「2リットルの水を持参すること」をマイルールにしていました。
1日に2リットルの水を飲むとダイエット効果が……とそれはそうですが、「この水を全部飲むまで自習室で勉強するぞ!」と決めて、勉強時間を増やすためです。
しかし、2リットルのペットボトルのほうが、500ミリのペットボトルより安いのはなぜなのか……これは永遠の謎です(笑)

また、引っ越し先は「税理士に関係するシンボルが近いところ」にしました。
毎日、税理士に関係するシンボルが見えるのです。呪われそうな荒行ですけどね!(笑)

もうひとつ、引っ越しでは、周りに図書館やカフェなど自習できる環境が多くあることを条件にしました。基本は専門学校の自習室に行くので図書館やカフェなどで自習することはないのですが、どうしても気が乗らない日ってあります。そんな日は勉強する環境を変え、図書館やカフェなどで勉強するようにしていました。

他にも、自宅のすぐ近くに、深夜2時まで営業しているファストフード店があったので、専門学校で勉強した後に、そこでコーヒーを飲みながら1時間くらい理論暗記をしたり、総合問題を解いたりしていました。

生活導線に勉強するキッカケとなるような場所が何個もあれば勉強する習慣が自然とできあがり、勉強時間は格段に増えていきます。
勉強トラップですね(笑) 自分を罠にかけてしまいましょう!

【環境づくり4】ライフスタイルは受験第一! 他のことは頑張らない

僕は、カフェのようなお洒落なインテリアに憧れていました。部屋も常にきれいにし、朝は優雅にパンケーキを焼いてコーヒーを淹れ、サラダとフルーツも食べて……みたいな生活を家族としたい、そう思っていました。Yシャツも好きなブランドで、毎朝アイロンをかけて……。

しかし! これら全部を頑張らないことを家族に宣言しました。
なので受験生時代は、自分の部屋は散らかっていました。
税理士って物をきれいに整理していそうですが(笑)

家族にも、「ごめん! 今はできない! 許して!」と話していました。
ただ、そうすることで気が楽になり、家族が家事などをサポートしてくれると、「1年でも早く合格しなきゃ!」という思いもより一層強くなりました。

優雅に朝食を食べたくなったときは、コーヒーショップでモーニングを注文して理論暗記をし、Yシャツはアイロンがけが不要な「形状記憶」一択にし、洗濯もクリーニングに。

そのぶん、浮かせた時間を勉強に充てるように意識しました。
洗濯物をクリーニングに出しに行ったら、そのまま近くの公園で1問だけ理論暗記をする! といった感じです。

「優先順位が一番高い勉強を棚上げするために、何かしら理由をつけて別のことをするのを避けたかった」、これが他のことを頑張らなかった一番の理由です。

たとえば、模試の前日に部屋の片付けをした経験ってないですか?(笑)
あれは、模試の点数がよくないときの逃げ道を自分で作っていると思うのです。

僕は6年目からは、そのような逃げる行為は一切しないと決めました。
模試は常に全力! 自分に足りない部分を知ることができる貴重な機会です。
模試で点数が思うように取れなくても、「自分の課題を発見できた」とプラスに考えましょう。
だから模試から逃げちゃダメだ! 逃げちゃダメだ!(いや、本当につらいときは逃げていいときもありますよ~)

ちなみに、「他のことを頑張らないこと」は「怠けること」とはまったく違います!
他のことを頑張らないぶん、税理士試験により一層、力を注ぐわけですから!

こういった取捨選択は、税理士試験の合格に必須のスキルですよね!
皆さん、今日からより一層の「選択」と「集中」ですよ!

頑張っている自分は最高にカッコいい

このように税理士試験に全力で挑戦することを宣言し、合格するための環境づくりを進めていくと、自分自身のなかで心境の変化が生まれました。

「僕って、仕事も頑張っているのに自主的に勉強までしているなんて、意識高くてカッコいい!」

そう思い込むようになったのです。
これを言うと笑われてしまいそうですが、当時、僕は自分のことを「イケメンの完全体」だと信じていました(笑)
たくさんの方から応援をしてもらって、ちょっと勘違いしちゃったのかも!

もちろん、「当時の僕ってカッコよかった?」と誰かに聞くような野暮なことはしません。
真実は知らないほうがいいこともあります(笑)

税理士試験はその制度上、合格するまでに何年もかかります。だからこそ、前向きに楽しく挑戦しましょう。
だって、途中でつらくなって税理士試験を諦めたら税理士になれないのですから!
「諦めたらそこで試合終了ですよ」ですよ!

僕はいま、税理士になることができ、毎日が楽しくて幸せです。
僕が本当にタイムリープし、合格するための環境づくりをできていたら、5連敗などすることなく、もっと早くから「税理士」という最高の仕事ができていたはずです。

だからこそ、皆さんには1年でも早く税理士試験に合格してほしい、そう思います。
そして合格したら、僕はこの仕事に携われる喜びを、皆さんと共有したいと思っています。

税理士になるのは楽ではありません。しかし、だからこそ、税理士としての資質が備わるのです。ちょっとやそっとじゃへこたれないのが税理士です!

もし、皆さんが不安に押しつぶされそうになったら、僕が声を大にして叫びますよ!
「頑張っている皆さんは最高にカッコイイ! 輝いているぜ!」

【執筆者紹介】
篠原 寛顕(しのはら・ともあき)
しのはらともあき税理士事務所所長。元・TAC税理士講座講師。働きながら9年間、税理士試験に挑戦。最初の5年間は合格科目ゼロ! それでもモチベーションを維持し,その後4年間で5科目合格。5連敗中に試行錯誤の末、合格するための環境づくりを構築。受験生にエールを送るべく、ブログを不定期更新中。


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