税理士試験は「独学」で合格できるのか?
勉強を始めたら、誰もが一度は思うことかもしれません。
そんな興味に応えるべく、独自の勉強法で官報合格し、受験生から絶大な支持を誇るYU ME NO U Eさんと、働きながら独学で官報合格し、このたび『税理士試験 「独学×家勉」で合格する方法Q&A』を出版された西﨑 恵理先生の対談が実現!
受験生の頃から、それぞれのブログを通して情報交換をしていたおふたり。
お互いに税理士となった今、「独学」と「家勉」をテーマに、税理士試験の勉強について語りつくしていただきました。
独学に必要なものは「理解しよう」という思い
YUMENOUEさん:
どうもーー!
今日は西﨑さんとの対談ということで、いろいろお話をお聞きします!
まず、書籍の出版おめでとうございます! 「独学」がテーマの本ですが、西﨑さんが独学しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
西崎さん:
ありがとうございます! 独学のきっかけというより、そもそも学生時代から、塾や予備校に通うことを前提として考えたことがなかったんです。たとえば、当時住んでいた愛媛県には大学受験のための大手予備校がなく、通うなら、海を渡って広島にまで行かなければいけないような環境でした。
予備校に通わないで大学受験をするとなると、普段から学校の授業をしっかり受けて、配られた宿題をしっかり解いて、中間テストや期末テストに向けてしっかり勉強するしかありません。けれど、これさえやっていれば、予備校には通わなくてもいいのかなと思ったんです。
なので、税理士試験も、「どの予備校に行こうかな」とかではなく、「予備校に行かなくてすむにはどうすればいいのだろう」から始まりました。
YUMENOUEさん:
独学するにあたって不安は感じなかったのでしょうか? テキストを1人で理解できるのか、予備校で教えてもらったほうが早いのではないか、と考える人もいると思うのですが、西﨑さんはどのように考えていたのでしょうか?
西崎さん:
怒られるかもしれませんが、学生時代も私、授業を半分くらいしか聞いていなくて(笑)。というのも、翌日に提出する宿題を授業中に終わらせていました。部活動もしていて、帰ったら漫画も読みたかったので、授業中に宿題まで終わらせてしまえば家で何もしなくていいな、と。なので、先生の話を頭の上のほうで聞きながら、教科書をバーッと読んで、その日に出されるだろう宿題を先取りしてやっていました。
教科書を読んでもわからないところは板書をノートに書き写していましたが、そんな感じで授業を受けていたので、すごく真面目に先生の話を聞くタイプではなかったんです。そのときから、「講義を受ける」というイメージが自分のなかにあまりなかったのかなと思います。
YUMENOUEさん:
そんなことして、先生に怒られなかったんですか?
西﨑さん:
怒られなかったですよー。だって、一生懸命にノートをとっているように見えていたはずですから。やっている内容は違っていましたけど(笑)。
YUMENOUEさん:
たしかに、授業を受けているからといって、必ずしも全員が全員、しっかり先生の話を聞いているとはかぎりませんよね。
西崎さん:
そうですよね。YUMENOUEさんもそうだと思うのですが、独学だろうと予備校だろうと、みんな自力で理解しようとしているはずなんです。
これは今日の結論になってしまうかもしれないですが、私は問題を解いて、それが解けるようになったなら、理解できていると思っています。だいたいの人は、講義を聞いて理解してから問題を解こうという順番だと思うのですが、私は「問題が解けるようになれば、そのうち理解もできるようになるだろう」と考えていました。
そもそも、講義を聞いて理解できるなら、みんな問題も解けて合格しているはずです。けれど、不合格になる人もいますよね。となると、「どう理解するのか」というやり方が合っていないのかなと思うんです。
YUMENOUEさん:
たしかに、「聞いているのにわからない」は、結局「聞けていない」んですよね。
西﨑さん:
そうですね。一番怖いのは、「聞いたから大丈夫!」と“わかったつもり”になってしまうことです。予備校の問題は解けるのに、なんで本試験の問題は解けないんだろうという話はよく聞きます。それは、問題を解くための理解がちゃんとできていないからじゃないのかな、と思います。
YUMENOUEさん:
そうそう、「問題を解きながら理解する」と本書にありましたが、西﨑さんにとって、個別問題はインプットツールという位置づけだったのでしょうか?
西﨑さん:
そうですね。YUMENOUEさんも『社労士試験 この勉強法がすごい!』に書かれているとおり、問題はアウトプットツールではなくインプットツールだと思います。
YUMENOUEさん:
さりげなく紹介していただいてありがとうございます!(笑)
僕は5科目すべて通信で、いわゆる独学は一切やったことがないのですが、講義を聞いている時間と問題を解く時間の割合がどれくらいだったか振り返ると、講義を聞いていたのは気持ち的には1~2割くらいかもしれません。自分で問題を解いているのが9割近くを占めているような感覚です。
実際、講義も倍速でしか聞いていなかったなあ。しかも布団の中で横になりながら(笑)。もしかすると、講義の重要度は1割とは言いませんが、そこまで高くないのかもしれませんね。
西﨑さん:
そうですね。私は、仮にお金と時間があって予備校に行っていたとしても、高校のときと同じように、講義を受けながら問題を解いていたと思います。先生の話を聞きながらテキストを流し読みして、実際に問題を解いてみて、「なんでこの解き方なんだろう?」とわからなければ解説を読んで、それでもダメならテキストに戻って…と。
ただ、これは私だけではなく、先ほども話したように、独学だろうと予備校だろうと、合格している人はみんな、自分なりに理解しようと考えながら勉強していると思うんです。そういった理解しようという意識や方法が人よりもあっただけなのかな、と思います。
YUMENOUEさん:
なるほど。けれども僕はやっぱり、「1人で勉強できなかったらどうしよう」という不安が勝ってしまいそうです。
西﨑さんにとって、「独学に向いている人」「向いていない人」の見極め方法はありますか? 僕が思ったのは、「主体的に勉強してきた経験があるかどうか」なのですが、実際はどうでしょう?
西﨑さん:
見極め方ですか…。難しいですが、「税理士になりたい!」という意志は大切だと思います。中学・高校までの学習は与えられるもので、おそらく「やらされている」というマイナスのイメージをもたれていた方も多いと思うのですが、税理士試験は違いますよね。「与えられたからやる」ではなく、「資格を取りたいからやる」。
なので、主体的に動けるかどうかよりは、税理士試験に対するモチベーションが強いかどうかだと思います。このモチベーションも、そんなに立派なものである必要はなく、私も「自分の力で稼いでやる!」の一心でした(笑)。自分が経験したことのない未知のものでも、「やってみよう」という意志さえあればスタートできると思います。
YUMENOUEさん:
なるほど、西﨑さんはモチベーションが原動力だったんですね。そうじゃないと長続きしませんよね。
あと、独学できる人は「もとから天才なのかな」「頭がいい人なのかな」とやっぱり思ってしまうのですが、どうなのでしょうか。天才とまでは言わずとも、勉強するための基礎体力とか調べる力は必要な気がします。西﨑さんは、独学するための力をどこで培われたのでしょうか?
西﨑さん:
力というよりは「執念」ですね。負けず嫌いなだけかもしれないですが、「なんとしてでも、この問題を解けるようになってやる!」みたいな。わからないことがあれば、テキストやネットを駆使して徹底的に調べるようにしていました。
YUMENOUEさん:
意外と根性論(笑)。でも、きっと西﨑さんの場合は、高校時代のコソ勉(笑)のときに勉強に対する姿勢が培われていたんじゃないかなと、私は思います。そして、わからなかったら悔しいので調べる。そうやって調べる力は大事ですよね、実務でも。
西﨑さん:
そうですね。実務だと「正解」がないじゃないですか。誰かに聞いてもはっきりしたことは教えてもらえませんし、「Aの考えもあれば、Bの考えもある」という世界です。そういうときに、根拠を集めたり条文を読んだり、主体的に調べて考える力は必要になってくると思います。
試験勉強は「自分の成長を見つける」の積み重ね
YUMENOUEさん:
私はたまに、「同じ科目を再受験するのですが、次も講座を受けるべきか、それとも独学にしてもよいか」と相談を受けるのですが、西﨑さんだったら、このような方にどんなアドバイスをしますか?
西﨑さん:
すでに一通り講義を受けてきたわけですよね。それなら、講座を受ける前にもう一度イチから個別問題を解いてみるのがいいと思います。「ここはこうだからこの答えになる」と導き出せるかを、まずは確認してみるのがいいのかなと。これができないなら、やはり理解がまだ足りていないので、講座を受けなおしてみてはどうでしょうか。
同じ講座を受けるにしても、事前に「自分がどこを理解できていないのか」をわかったうえで受けるのと、とりあえず受けてみるのとでは、効果も違うと思うんです。なので、たとえば、年内は個別問題集を自力で解いてみて、それで理解できていないなら年明けから講座を受けるとか。
ただ、忘れないでほしいのが、1回目の受験のときからは絶対に成長しています。たとえば、テキストを読んだときの感触とかも、はじめて読んだときとはまったく違うはずです。なので、「自分はこれだけ成長したんだな」と、自分で自分をほめてあげてほしいです。自分自身で成長を見つけないと、税理士試験は乗り切れません。
YUMENOUEさん:
「自分で自分の成長を見つける!」 いいこと言いますね!
西﨑さん:
私は、法人税法を受けて不合格で、消費税法を受けた後に法人税法に戻ったのですが、そのとき、簡単な「減価償却」の問題ができただけで「自分、解けるやん!」と自分をほめちぎりました(笑)。
やっぱり長丁場の試験なので、何がどれだけできるようになったかを見つけてほしいです。小さなものでいいので、その積み重ねが最終的な合格につながると思います。
YUMENOUEさん:
そういう姿勢、大切ですよね。僕は消費税法に不合格だったとき、次の年はできなかったところを上乗せしようという気持ちで勉強していたときがあったのですが、これは結構きついんですよね。
簡単な問題は、できて当然、間違えたらショックを受ける。なんだか減点方式で勉強している感じがあって。あと、苦手論点ばかりを勉強しがちになるのも大変でした。
でも、そんなときに西﨑さんに相談したら、「イチから勉強しなおす気持ちで」と言われたんですよね。それで気持ちがすごく楽になったのを覚えています。
西﨑さん:
やっぱり最初から新鮮な気持ちで勉強してみようというスタンスがいいと思います。私も、法人税法の不合格通知を見たときは、「やっぱりか」というショックもありましたが、もう半分は「もう一度イチから勉強しよう! やってやろう!」とポジティブな気持ちでした。
「家勉」のコツは、とりあえず手を動かす
YUMENOUEさん:
この本のもう1つのテーマである「家勉」ですが、僕は家だと一切勉強できないんです。家はリラックスする場所で、外は仕事や勉強をする場所と分けていました。なので、お子さんもいるなか、家で勉強していた西﨑さんが本当にすごいと思います。頭を切り替えるスイッチはあったのでしょうか?
西﨑さん:
特になかったですね。育児をされている方だとわかってくれるんじゃないかと思うのですが、常に色んなことを考えているんですよ。仕事しながら「今日の晩御飯は何にしよう」とか、晩御飯を作りながら「この後は子どもたちに宿題をさせてお風呂にいれなきゃ」とか。1つのことだけを考える時間がないのがワーママの実情だと思います。
私は、これに勉強が加わった感じで、「子どもたちが寝たら勉強しよう」みたいな。勉強できそうなときがあれば勉強していたので、正直なところ一切勉強と私生活を切り分けられてはいないんですよ。
でも、集中できないなと思っても、とりあえずテキストを読みはじめたり、ペンを動かしていました。漫画とかも、とりあえず読みだしたら没頭するじゃないですか。だから、勉強も、問題を解いているうちに自然と没頭できていました。
YUMENOUEさん:
「とりあえず手を動かす」というのは大事ですよね。テキストを開いたらすぐに問題が解けるようにしていたということは、やることは事前に決めていたのでしょうか?
西﨑さん:
そうですね。個別問題集をはじめから順番に解いていたので、「昨日はここまでやったから今日はここから」という感じでした。
YUMENOUEさん:
あと、家だと勉強を終える時間も不規則になってしまうように思います。たとえば、子どもが泣いてしまったので勉強を切り上げないといけない、というようなことはなかったのでしょうか?
西﨑さん:
それはもうたくさんありましたよ! 泣いている子どもをあやしてから勉強を再開する、みたいな。あとは、リビングのローテーブルで勉強していたので、なんなら夫がソファでテレビを見ている横で私は勉強している、ということもしょっちゅうありました。気づいたら私もテレビを見てしまうときもあったのですが(笑)。
YUMENOUEさん:
(笑)。もしかすると、雑音があるほうが集中できるタイプですか?
西﨑さん:
そうですね。図書館とかシーンとしているのは苦手で、音楽が流れているカフェとかのほうが勉強しやすいかもしれないです。
ただ、実際の本試験は、紙をめくる音とか電卓を操作する音とか、まったくの無音というわけじゃないじゃないですか。「自分だけの静かな空間だと集中できるのに…」という人もいると思うのですが、試験でそんな環境になることは絶対にないので、ある程度の雑音とか周りに人がいる雰囲気に慣れるのは大切なのかなと思います。
YUMENOUEさん:
たしかに、完璧な空間でしか勉強できないとなると、本試験の場面で苦労してしまうこともありそうですね。適度な雑音も勉強には必要なのかも…?
次回は、学習計画の立て方や勉強法について具体的に聞いていきます! 引き続きよろしくお願いしますー!
後編へ
【対談者のプロフィール】
YU ME NO U E
税理士・中小企業診断士・社会保険労務士(試験合格)
トヨタ自動車(株)に10年間エンジニアとして勤務。仕事のなかで携わった中小企業との出会いがきっかけで、中小企業支援に関心を抱き、エンジニアとしての勤務のかたわら社会保険労務士試験、中小企業診断士試験に合格。2017年、35歳にして退職、実務経験ゼロで税理士法人へ転職。故郷である静岡県に戻り、中小事業者の力になれるよう、第2の人生のスタートラインに立っているところ。2014年から税理士試験を受験し、2020年に官報合格。
勉強法や等身大の受験生活の日々を綴ったブログ「資格の先のYU ME NO U E」が大人気で、アメブロ資格ジャンルのランキング上位常連。
著書に『社労士試験 この勉強法がすごい!』(単著)、『税理士試験 税法理論のすごい暗記法』(共著)(ともに中央経済社)がある。
西﨑 恵理(にしざき えり)
税理士
愛媛県出身。大阪大学法学部卒業後、大阪市内の法律事務所へパラリーガルとして就職。結婚を機に退職、愛知県へ転居。日商簿記3級・2級を受験し、税理士事務所へ未経験で就職。2012年、第一子妊娠のため事務所を退職。2013年に税理士試験の簿記論に合格し、同じ事務所に再就職。以後、2014年財務諸表論受験(合格)、2015年法人税法受験(A不合格)、2016年消費税法受験(A不合格)、2017年法人税法・消費税法受験(ともに合格)、2018年相続税法受験(50不合格)、2019年相続税法受験(官報)。現在は、所属税理士として愛知県内の税理士法人に勤務するワーママ。
著書に『税理士試験 「独学×家勉」で合格する方法Q&A』(中央経済社)がある。
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A5判 / 148頁
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