【税理士試験 会計科目から税法科目へ】教えて先生! 税法ってどう学べば効果的? 


会計科目から税法科目に移行した受験生にとって、“新年度”が始まった今の時期は、悩みがつきもの。

会計科目とのギャップを感じ、税法科目をどう勉強していけばよいのか、悩まれている方もいることでしょう。

そんな不安を払拭するべく、専門学校講師として財務諸表論・法人税法、両方の指導キャリアをもつ岩下 尚義先生(税理士)に、さまざまな受験生のお悩みに答えていただきました。

前回はモチベーション・心構えについてお話しいただきましたが、今回は学習法に関するアドバイスをお届けします。

これから税法科目の学習を進めていく方は必見です!

学習時間を「4つ」の要素に分けよう

ボリュームや必要な学習時間も会計科目より格段に多い税法科目。効率的な学習法はありますか?

私は法人税法の講師時代、1つの科目について学習内容を「4つ」に分けましょう、と伝えてきました。理論勉強、計算勉強と分けるだけではなく、これをさらに細分化します。

理論は①理解学習と②暗記学習、計算は③個別問題と④総合問題に分け、それぞれの時間はあいまいにせず、しっかり区切ります。

たとえば、税法科目を6時間勉強できる日があったとします。無計画に「6時間勉強しよう」とするとなかなか難しいので、図のように振り分けてみます。

税法科目はボリュームが多いぶん、いま勉強している論点だけではなく、すでに学習した論点の復習がカギになります。

1 理論学習と計算学習のバランス
2 学んだばかりの論点の学習(狭く深く)と今まで学んだ論点の学習(広く浅く)のバランス

を意識するとよいでしょう。

毎日4つの要素を取り入れることが理想ですが、なかなか勉強時間が確保できない場合には優先順位をつけたり、過去に学んだ論点を掘り下げたいときにはその時間を確保したりするなど、臨機応変に対応してみてください。

「文章」と「算式」の両方をイメージしよう

会計科目と比べて、計算と理論の関係はどう違うのでしょうか? また、バランスよく計算と理論を勉強するコツはありますか?

税法科目は会計科目に比べ、計算と理論が直接的に結びつくケースが多いです。

会計科目の理論は、「結論」だけでなく「なぜ、その方法を採用するのか」という「根拠」がとても重要です。

一方、税法科目の理論は法律なので、基本的には「結論」を学びます。理解を深めるために、背景や根拠を学ぶ必要はありますが、最終的に本試験で問われるものは「結論」です。よって、税法科目の計算と理論は、法律の内容を「条文で答える=理論」「算式で答える=計算」か、という表現の違いだけです。

理論の理解・暗記が進めば計算力も向上し、逆に計算力がつけば理論の理解も進みます。勉強するコツは、その相乗効果を常に意識することです。

たとえば理論を理解・暗記する際に、その理論に対応する計算問題を解きながら覚える。計算問題を解く際に、その計算の根拠となる条文を読む。

1つの条文について「文章」「計算式」両方のイメージが浮かぶようなトレーニングをするとよいでしょう。

段階的にキーワードを1つひとつ暗記しよう

理論は一言一句を覚えなければいけませんか? その場合、挫折することなく覚える方法はありますか?

この相談は非常に多いです。条文の重要度や内容によって差はありますが、最終的には多くの条文を一言一句レベルで覚えなければいけません。

会計科目の理論は、会計基準などを根拠にしています。たとえば「○○は、△△のために、□□を採用します」というように、文章のなかに根拠や結論が混在しています。

一方、税法科目の理論は、どれだけ長い条文でも、それが全体で「結論」になります。となれば、省けるところがありません。

挫折することなく覚えるコツは、段階を追って進めることです。

長い文章のなかで、いま理解できているキーワードだけを、まずしっかり覚えます。知識が増えてきたら、キーワードを肉付けしていきましょう。

最初から丸暗記ではなく、骨格を固めて知識を肉付けしていくことで、理解も深まります。

また、理論の理解と暗記を相互に高めていくことで、計算問題を解く際にも、問題文で読み取るべきポイントを瞬時に判断できるようになります。

難しい税法条文に慣れる3つのコツ

税法用語に慣れず、なかなか覚えられません。条文を楽しく読むコツはありますか?

条文を楽しく読めるかどうか。これは、ある程度、理論を“極めた”人がたどり着ける境地かもしれませんね。そこに至るまでは、やはり「楽しい」よりも「大変」が勝つかなあと思います。ただ、条文に慣れるコツはあります。

1 「用語の定義」を押さえる

まず、用語の定義を理解・暗記することが最重要です。条文でみられる用語は、これから繰り返し用いていくので、自然と慣れます。しかし、定義自体の理解があいまいだと、土台がしっかりしない状態で理論を積み重ねていくことになります。これは、とても効率が悪く、直前期にスランプに陥る方に多い傾向です。「慣れないな」「この言葉なんだっけ?」という段階で、税法用語の意味をしっかりマスターしておきましょう。

2 算式や図に置き換える

理論に行き詰まったときは、その理論を算式や図に置き換えてみてください。文章としても、算式・図表としてもイメージが浮かぶようにするトレーニングです。税額計算の理論であれば算式を、納税義務者の判定などであれば図表を簡単に書いて整理してみるとよいでしょう。オリジナルな図表を書くことが大変であれば、テキストなどの図解を写してみるだけでも効果があると思います。

3 声に出してみる

私は、法人税法の条文を暗記する際、「理論が楽しい」と思える時期がありました。このときは、とにかく理論を口に出していました。自分で問題を出して答えるセルフティーチングを挟みつつ、自室をうろうろ徘徊しながら理論書の全ページを暗唱していました。見て覚え、書いて覚え、そして喋って覚える。古典的ですが、やはり効果的です。

過去問を見て「ゴール地点」を把握してみよう

会計科目と税法科目で解答形式にギャップを感じます。税法科目特有の解答形式に慣れるために、今からやっておくべきことはありますか?

事前にしておくべきことは、国税庁ホームページに掲載されている過去問を見ることです。未学習の論点ばかりですので、実際に解くのではなく、“2時間でどのような問題を読み、解答するのか”をイメージするトレーニングをしましょう。

そして、会計科目と同様、税法科目でも時間配分が重要です。

1 問題文を正確に読み解くスピード
2 解答をイメージするスピード
3 (科目によっては)書くスピード

このうち、1と2は「税法の理解力を高めること」と「問題に慣れること」が向上のカギです。3は意識づけが大切です。

解答形式のギャップを克服するには、積極的に総合問題を解くしかありません。まずは2時間の時間配分を意識し、理解力を上げていきましょう。


以上、前回の記事と合わせて、計8つの質問に回答させていただきました。

今は、モチベーションや学習法に悩みを感じ、なかなか思うように学習ができていないという方が大半だと思います。

そんななかで、「やる気が出てきたぞ」「学習スタイルがつかめてきたぞ」「勉強の成果が出てきたぞ」とポジティブになれたら一歩リードです。ファイト!

【執筆者紹介】
岩下 尚義(いわした・たかよし)
税理士・ファイナンシャルプランナー
TAC税理士講座にて財務諸表論、4年制専門学校にて法人税法の講師を経験。実務のほか、顧客や税理士向けの研修講師、小学生から大学生まで各課程での租税教室講師を担当。税務の専門誌をはじめ、「お金の専門家」として子育て情報誌のお悩み相談を担当するなど、伝える活動の幅を拡げている。noteにて、税務や子育てに関する記事も掲載中。


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