【短答後の会計士受験生のお悩み 井上修先生に聞いてみた③】租税法や経営学はどう勉強する?


こんにちは! 編集部です。

5月23日に令和3年公認会計士試験短答式試験が実施されました。

本特集の第1回では、福岡大学准教授・公認会計士で、受験指導にも熱心に取り組まれている井上修先生に、今年の短答式試験を振り返っていただき、次回の短答式試験を視野に入れている場合、どう対策すべきか、お話を伺いました。

第2回では、「科目合格をねらう戦略」を含む、論文式試験への向き合い方についてお話しいただきました。

最後となる第3回では、いよいよ8月の本試験までの具体的な戦略をお話しいただきます。

5月短答を受験された方の多くは、まずは短答式試験の対策に全力で取り組んできたのではないでしょうか。特に今年は12月短答がなかったため、論文式試験の対策が後回しになっている方も多くいらっしゃるかもしれませんね。

そのような受験生の皆さんは必見です! 本記事の内容を参考に、本試験までの残りの期間を駆け抜けてください。

目次
租税法は「公式集」を作ってみよう
経営学は“なるべく自分の言葉では書かない”
毎朝のルーティンで“計算力”を維持
答練で“書く力”を身につける
超直前期は徐々にやることを減らしていこう

租税法は「公式集」を作ってみよう

――租税法に選択科目(本記事では経営学)と、新たな科目を勉強する論文式試験。残りの期間、どのような対策をすればよいのでしょうか? まずは、租税法について教えてください。

井上先生 6月末までは、「租税法8:経営学(ファイナンス)2」の割合でインプットを進めましょう。租税法は「法人税7:消費税3」くらいで進めます。特に、消費税は範囲も狭いため、短期間で「完結」させることが可能です。所得税は、これまでまったく租税法をやってこなかったのなら、後回しにしてください。

ただし、租税法は講義を聴くだけでは身につきません。ただ駆け足でインプットするのではなく、「計算問題を解くこと」が必要です。

――「計算問題を解くこと」が重要なのですね。その際、意識しておくとよいことはありますか?

井上先生 租税法の計算では、自分で「公式集」を作ってみるのがオススメです。少し大きめの単語カードなどでいいです。租税法は、減価償却の限度額や受取配当金、交際費など、多くの計算式を覚えないといけません。

私は受験生時代、6月末までのインプット期にこの「公式集」を作成しました。テキストを見るのではなく、自分で作るのがキモです。面倒な作業ですが、だからこそ、大事な点だけを工夫して内容を絞る必要性に迫られます。この自分で考えて取捨選択するプロセスが、そのまま理解や記憶の定着につながります。

とはいえ、すぐには「暗記」は不要です。自分でまとめた「公式集」を横に置いて、それを見ながら問題を解くようにしてください。悪い表現ですが、「カンニング」しながら問題を解きます。

「公式集」を見て問題が解けるのであれば、「それに書かれた公式さえ覚えれば十分」ということですよね。自作の「公式集」は、8月までの時間がないなかで、最も効果的かつ効率的にパフォーマンスを上げてくれる道具です。

正直な話、7月中に法人税と消費税の計算が、自作の「公式集」を使って一通り解けるようになれば、勝利の可能性が見えてきます。

経営学は“なるべく自分の言葉では書かない”

――次に、経営学の対策について教えてください。

井上先生 経営学(理論)は、なるべく多くの問題に触れ、論点を確認する必要があります。しかし、経営学で注意してもらいたいのは、それだけでは答案を書けるようにならないという点です。

会計学(財務会計論・管理会計論)も租税法も理論は出題されますが、これらは論点を確認する(たとえば、問題と模範解答を読む)なかで、ある程度は書く力も身につきます。

なぜなら、計算問題も解いており、会計学は短答式試験を突破した科目でもあるからです。計算問題は理論(ルールや理由)がわかっていないと解けません。そのため、これらの科目の理論問題は、ある程度、論点の確認だけで対応が可能です。

しかし、経営学はそうではありません。短答式試験もなく、ファイナンス以外は計算問題がない純粋な理論科目。そのため、論点を確認しただけで答案を書けるようになるかは少し不安なところです。したがって、経営学(理論)の理想的な対策は「書くこと」となります。

――経営学(理論)は独特な科目なのですね。しかし、「書く」となると時間がかかりそうです……。

井上先生 たしかに時間がありません。なので私は受験生時代、経営学(理論)の基本的な定義や解答は、いっそのこと最初から「暗記」していました。答案を考えて書く時間も惜しかったので、(小)声に出して読みながらカッチリ覚えました。

経営学は、先ほど述べたように短答式試験もなく、計算もほとんどないことから、基盤となる知識が根づきにくいという特徴があります。つまり、ウソ(間違ったこと)を書く可能性が非常に高い科目です。よく経営学は「作文大会」と言われますが、たくさん書いたのに0点などザラにあります。

私はこの経営学の特徴を大きなリスクと感じていたので、自分の言葉では書かないこと、すなわち、正確な知識と用語で書くことを心がけていました。

時間のないなかで経営学を対策する以上、ある程度は“作文力”の勝負となるかもしれません。しかし、ウソ(間違ったこと)を書くリスクが高い科目であることは頭に入れておいて、できるかぎりプラスアルファの勉強をしてください。

毎朝のルーティンで“計算力”を維持

――続いて、科目にかかわらず全体的なお話をお伺いします。本試験まで毎日やっておくとよいことはありますか?

井上先生 朝のルーティンとして、毎日欠かさず計算問題を解いてください。毎日のルーティンで計算力を徐々に身につけ、メンテナンス(維持)していきましょう。

6月末までは「財務計算1問&管理会計1問」と、1時間程度の総合問題を解きましょう。過去の論文答練でもかまいませんし、財務は2問でもOKです。

7月から7月末は、朝の計算ルーティンに租税法と経営学(ファイナンス)を加えてください。租税法は総合問題よりも基本問題を重視し、ファイナンスは2~3日に1回でもOKです。

租税法は、7月になっても伸びる科目です。6月末に租税法のインプットが8割くらい終わっていれば、7月からは計算力をつけていきたいところ。いきなり総合問題を解くのは厳しいと思うので、まずは“ブツ切り”論点で、例題やトレーニング問題をコツコツ解きましょう。

――計算力は身につけるだけではなく、その先の「メンテナンス」も大事なのですね。

井上先生 そうですね。また、計算ルーティンの際にはノートにケアレスミスをすべて記録するのもオススメです。本番前に確認するための「自前の教材」になります。

公認会計士試験は「確実に取らなければいけない問題を確実に取るだけ」で合格します。その場合、必要な能力は「ケアレスミスをしないこと」です。短答式試験の計算問題は、ケアレスミスをしても選択肢に救われることもありますが、論文式試験ではケアレスミス=0点です。管理会計などでは、計算結果を用いて他の問題を解くこともあるので、ケアレスミスが不合格につながる可能性もあります。

そのため、ノートに自分のケアレスミスを集約することで、最後までケアレスミスには気をつけてほしいと思います。

また、日々ケアレスミスノートを「確認すること」を絶対にやってほしいです。過去のミスを見返すことは本当に嫌な作業ですが、それをやらないとケアレスミスを意識してなくすことはできません。

嫌な作業だからこそ、「今日は絶対にケアレスミスしない!」という気持ちで計算問題と対峙できます。ルーティンゆえの、ただ漠然と問題を解くという「作業」にならないように気をつけてください。

答練で“書く力”を身につける

――答練などは受けたほうがよいのでしょうか?

井上先生 答練などがあれば、必ず受けてください。特に、企業法にとって答練は、企業法特有の長い論証をする絶好の機会です。本番と同じような形で企業法の答案を書く練習は、自学自習ではかないません。答案構成が限界です。逆に、自学自習では答案構成に特化するとよいでしょう。答練を通して、白紙答案ではなく、とにかく条文を引いて一通りの答案を書く練習をしてほしいです。

また、普段から、短答式試験からの理論科目(財務理論・監査論・企業法)については、基本的には論文答練の復習で対応してください。各科目の割合はお任せしますが、企業法はボリュームが多いので「毎日」がよいと思います。

ただし、監査論は「テキストの読み込み」もオススメです。監査論はボリュームが少なく、一貫した流れがあり、全体像を把握することが重要です。

「まだ仕上がっていないのに答練を受けるのは時間がもったいない」という人もいますが、ほんのわずかな時間、緊張感をもって答練を受けた経験は、本番に必ず活きます。短答式試験を乗り越えたわけですから、知らない論点はありません。むしろ自信をもって答練に臨んで大丈夫です。

超直前期は徐々にやることを減らしていこう

――最後に、超直前期の過ごし方を教えてください。

井上先生 8月に入ってから本番までは、計算ルーティンは継続し、理論は答練の復習を中心に、まんべんなく全科目の“バランス”を意識してください。

また、租税法はいよいよ「自前の公式集」の暗記期間です。基本的な問題でかまいませんので、総合問題を数問やってみましょう。あくまで本番の形式に慣れるためです。

そして、本番まで徐々にやることを“物理的に”減らしていってください。いつまでも目の前にやることが山積みだと、不安がつきまといます。不安を感じると、ものすごく実力があったとしても、本試験では実力が発揮できないかもしれません。

確認する(もしくは解く)部分に付箋を貼り、やったら付箋を外す、やることリストを作成し、一つひとつ潰していくなど、逆算的な計画がオススメです。強い自信や高いモチベーションにつながるように、本番直前まで“やることが何もない状態”にもっていきましょう。

――受験生の皆さんが論文式試験で健闘できるといいですね。参考になるお話をありがとうございました!

〈お話を聞いた人〉
井上 修(いのうえ・しゅう)
福岡大学准教授・公認会計士
慶應義塾大学経済学部卒業。東北大学大学院経済学研究科専門職学位課程会計専門職専攻、同大学院経済学研究科博士後期課程修了。博士(経営学)。研究分野は、IFRSと日本基準の比較研究、特別損益項目に関する実証研究。福岡大学では「会計専門職プログラム」の指導を一任されている。当プログラムでは、現役の大学生が多数、公認会計士試験や税理士試験簿記論・財務諸表論に在学中に合格を果たしている。本プログラムから2018年は10名、2019年は5名、2020年は6名が公認会計士試験に合格。


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