【『財務会計講義』を読もう!】第4回:偶発債務


長島正浩
(茨城キリスト教大学経営学部教授)

【編集部より】

税理士試験の財務諸表論、公認会計士試験の財務会計論。
「計算は得意だけど理論はニガテ」という受験生の方は多いですよね。

理論が得意になるためには、個々の論点をただ暗記するのではなく、隣り合った論点を「総合的かつ横断的」に理解することが大事です! 
その1つの学習方法が、基本書を使って、キーワードをもとにさまざまな箇所で解説されている内容を横断的に押さえること。

本連載では、長島正浩先生(茨城キリスト教大学経営学部教授)に、代表的な基本書である『財務会計講義』(桜井久勝著)の索引を手がかりに、「総合的かつ横断的」な理解に不可欠な論点を解説していただきます。

ぜひ理論の得点アップにお役に立てください!

学位授与式にて

本題に入る前にちょっとした世間話を。

先日、わが茨城キリスト教大学で学位授与式(卒業式)が挙行された。本学はキリスト教の学校なので、学位授与式はキリスト教式で行われる。オルガンによる奏楽から始まり、賛美歌を歌い、聖書朗読があり、お祈りする。学位授与式にはぴったりの厳かで神聖な雰囲気に包まれる。天台宗を信仰する私ですら「キリスト教の大学でよかったぁ」と思える瞬間である。

しかし、コロナ禍に見舞われた本年度の学位授与式は、例年と異なり入場者数を制限し、時間を短縮し、賛美歌は声を出さずに歌い(?)、卒業生全員の名前の読み上げも省略された。私はその名前読み上げ役だったので、お役御免となり内心ほっとした。漢字の読みは不得意なほうではないが、最近のキラキラネームの読みは本当に苦手だからである。

でも、例年と変わらないものもある。私の式用の服装である。普通のフォーマルスーツを着ているが、その下にはウイングカラーのドレスシャツにシルバーストライプのフォーマルタイを巻き付けている。10年以上もずっと同じ恰好である。実はこれが曲者である。毎年変わらず、次のようなやりとりが交わされる。

卒業生A「先生、襟立ってますよ」 
私「そういう襟なの。わざと立ててるの」
卒業生B「先生、ネクタイはみ出てますよ」 
私「わざとはみ出させてるの」

なかには気の利いた学生もいて、無言でネクタイを直してくれたりする。

男子卒業生「……」 
私「お、おい、締めすぎ..ぐっぐるじぃ..」(気を失いかける)
女子卒業生「……」 
私「……」(こんなとこ家内に見られたら..やはり気を失いかける)

このように命がけで出席する今年度の学位授与式も無事終了した。

索引を見てみよう

さて本題に入ろう。

これまでと同様、お手元に『財務会計講義』がある人は、該当ページを確認していただき、今は手元にないという人は、学習ポイントだけでも眺めていただければ十分である。

「偶発債務」は、p.141、p.249にある。まずは、主な内容と学習ポイントを確認していこう。

p.141

【内容】
割引や裏書譲渡した手形が不渡りとなった場合、割引や裏書譲渡を行った者は、手形の所持人からの償還請求があれば支払に応じなければならない。このような条件付の遡求義務は偶発債務(contingent liability)の一種であり、金融資産の消滅に伴って新たに発生した金融負債の性質をもつ。

【学習ポイント】
偶発債務は前回(第3回)の引当金とどう関連するのか。また負債のどこに分類されるのか。

p.249

【内容】
偶発債務とは、いまのところ現実の債務にはなっていないが、将来において一定の事象が生じた場合に、当該企業の負担となる可能性のあるような債務をいう。たとえば手形遡求義務、債務の保証、係争事件に係る賠償義務などに起因して生じる債務がその例である。

【学習ポイント】
偶発債務を財務諸表上にどのように開示するか。引当金の設定要件が満たされず引当金として負債計上できない場合には貸借対照表本体には表示されず、注記という形で情報開示される。

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