第157回日商簿記2級 合否を分ける大問別5つのポイントと、今後の対策


渡邉 圭
(千葉商科大学基盤教育機構准教授)

2021年2月28日、第157回日商簿記検定が実施されました。受験された皆さま、おつかれさまでした。

特に2級は、難化が続いているといわれていますが、今回も第2問や第3問に難問が登場しましたね。

本記事では、そんな2級について、第157回試験を振り返り、合否を分けたであろうポイントについてお話しさせていただきます。第157回を受験された方はもちろん、今後2級を受験される方も、ぜひ参考にしていただければ幸いです。

第1問:仕訳

第1問は、基本的な論点が出題されました。

① 売買目的有価証券の売却(端数利息あり)
② 約束手形の更改
③ 仕入割引
④ 修繕工事の資本的支出・収益的支出の処理(修繕引当金設定あり)
⑤ その他有価証券の時価評価差額の処理(税効果会計あり)

①の端数利息の日数ですが、売却日の9月1日を入れるか入れないか、悩まれた方もいらっしゃると思います。問題文には「売買日までの端数利息を計算」とありましたので、この指示に従えたかがポイントです。

今後の試験においても、仕訳は同じくらいの難易度で出題されると思いますので、基本的な仕訳は解答できるよう、問題集などを使って学習しましょう。

第2問:固定資産台帳・リース会計

日商簿記2級の第2問は極めて難易度が高くなっているのですが、第157回の難易度は「☆☆☆☆☆(激激ムズ)」でしたね。固定資産台帳を作成する以外に、リース会計に関する勘定記入の問題を解答するのは難しかったのではないでしょうか。私も問題を見たときは、税理士試験簿記論の個別問題かと思いました。

第2問は、いったん飛ばして工業簿記から先に解き、合格点を稼ぐテクニックが必要でした。今後、このような難易度の問題が出題されないことを祈ります。

第3問:損益計算書(商的工業簿記)

第3問も極めて高いレベルが続いていますが、第157回でも難易度が高い問題が出題されました。出題されたのは、以下の論点です。

・材料・労務費・製造間接費の記帳
・原価差異
・製品勘定の棚卸減耗損の算定
・売掛金の回収
・買掛金の支払い
・販売費の支払い
・減価償却費(月次)
・貸倒引当金の設定
・退職給付引当金(月次)
・製品保証引当金
・満期保有目的債券
・その他有価証券

「売上原価」以外の表示科目、減価償却費と退職給付費用のうち、製造業に関する部分を、製造間接費勘定で処理すると理解できていたかがポイントになります。

第4問:費目別計算

第4問では、費目別計算が出題されました。

内部材料副費の処理、労務費の消費、配賦、製造間接費差異といった、基本的な工業簿記の仕訳が理解できていたかがポイントでした。

第5問:標準原価計算(シングルプラン)

過去問では差異分析、仕掛品勘定の記帳といった論点が多く出題されていましたが、第157回では材料勘定に差異を記帳する問題が出題されました。

シングルプランによる記帳方法の全体像を理解できていたかがポイントでした。

今後の2級対策

来年度から新試験となり、出題形式が変わりますが、テキストや問題集で問われる基本的な論点は解けるように学習しましょう。

工業簿記から学習を始め、商業簿記は工業簿記を復習しながら学習すると効率的です。この順序で学習すれば、第157回の第3問で出題されたような「商的工業簿記」もスムーズに理解できます。

また、パート別やヨコ解きの問題集がありましたら、それを学習した後、模試や答練に入るとよいでしょう。

来年度から新試験!

第157回日商簿記検定で、従来の出題形式は終了となりました。来年度からは、いつでも受験できるネット試験と、あらかじめ試験実施日(6月・11月・2月)が定められている紙媒体の統一試験の両建てで実施されます。

試験時間も、ネット試験・統一試験ともに、2級は90分となります。試験の難易度も調整され、ネット試験も統一試験も難易度を同一にするそうです。

このように、来年度から日商簿記検定が変わるわけですが、これは受験の機会がより増えるということです。たしかに2級のレベルは上がり、なかなか合格できない試験にはなっていますが、新試験となることをチャンスととらえ、ぜひ諦めずにチャレンジしていただければと思います。頑張ってください!


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