加藤大吾
(公認会計士・税理士)
本連載では、税理士試験の簿記論・財務諸表論において、執筆者の指導経験上、誤答が多かった論点を取り上げます。【問い】に対する【解説】のなかに誤りを含む部分があるので、「ここが間違いじゃないかな?」と指摘してください。電卓をたたかなくても、スキマ時間に間違いさがしは可能です。この連載を解くことで、簿記の勉強はもちろん、実務において取引記録を見ながら誤りを発見するという職業体験もすることができます。ぜひチャレンジしてみてください。
【問い】に対する【解説】について,誤りを含む部分を指摘しなさい。
【問い】
次の〔資料〕に基づき、当期(X1年4月1日~X2年3月31日)の損益計算書の為替差損益はいくらか、求めなさい。なお、解答上、為替差損の場合は、金額の頭に△の符号を付すこと。
〔資料〕
1.X2年3月1日に、商品1,000ドルを輸入し、代金は掛けとした(決済日はX2年5月30日)。また、買掛金の為替変動リスクをヘッジするために、取引銀行とドル買い為替予約1,000ドルの契約を締結した。
2.X2年3月1日とX2年3月31日の為替相場は、次のとおりである。
X2年3月1日
直物為替相場 1ドル=105円
先物為替相場 1ドル=104円
X2年3月31日
直物為替相場 1ドル=110円
先物為替相場 1ドル=108円
3.為替予約の会計処理は,独立処理によること。
4.税効果会計は考慮しないものとする。また,ヘッジ会計の要件は満たしている。
【解説】 ※誤りを含みます!
1.期中仕訳および決算整理仕訳
(1) 輸入取引(ヘッジ対象)
(借) 仕入 105,000
(貸) 買掛金 105,000
(注)1,000ドル×105円=105,000円
(2) 買掛金の換算替(ヘッジ対象)
(借) 為替差損益 5,000
(貸) 買掛金 5,000
(注)1,000ドル×(110円-105円)=5,000円
(3) 為替予約の時価評価(ヘッジ手段)
(借) 為替予約資産 4,000
(貸) 繰延ヘッジ損益 4,000
(注) 1,000ドル×(108円-104円)=4,000円
2.P/L為替差損益(解答の金額)
△5,000円(買掛金の換算損)