役に立たない今、できることを考える


中村 亮介

執筆の依頼をいただく前から「会計人コースWeb」のコラムを拝見していましたが、これまでの執筆陣と異なり、豊富な実務経験も深い知識も持ち合わせていない私から読者の皆さんに伝えられることはほとんどないなと感じていました。

そこで、大学教員という職に就いている私の立場から、ステイホーム期間中に感じたことを述べたいと思います。これによって、読者の皆さんに何かしらのヒントを提供できれば幸いです。

自分には何ができるのか?

実は3月に一時、発熱していました。すぐに熱は下がりましたが自主隔離のため、同居する4人の家族にはすぐさま近隣の親戚の家へ避難してもらい、2週間の一人暮らし生活がスタートしました。

この間、普段できないこと、たとえば読んでいない本を消化しようとか、引っ越し当時から自室に3年間置きっぱなしの段ボールを片付けようとか、押し入れにあるCDを整理しようとか考えていましたが、ほとんど実行できませんでした。

捗ったのは映画「釣りバカ日誌」と「刑事コロンボ」の視聴くらいです。時間があり余っていると(もちろん療養期間中でもありましたが)、逆に何もしないということを改めて実感しました。

そんななか、テレビで激変する世の中をボーっと観ながら、自分は何の役に立つのだろう、と自問自答し続けました。たどりついた結論は…

「役に立たない」

ということでした。病気の人に対して、何も提供できない自分が今できることはありません。

ただし、「今は」です。そこで、来るべき今後のために、月並みですがこの時間を「チャンス」ととらえることにしました。わずらわしい出張などがなくなることで確保される時間を有効に使って新しい研究を始めよう、と。

新しい時代は,すぐそこに

新型コロナウィルスは、いわゆるデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させると言われています。たとえば、人との接触を避けるためのオンライン講義や単純作業のロボット化です。その一方で、これは既存の事業を淘汰する可能性を秘めています。

私のような会計学を担当する大学教員は、「会計専門学校の人気講師の講義をいつでもどこでも受けられる」「AIが自動的に合理的な会計基準を判断してくれる」ことになればお払い箱になる、という時代がいつか来るかもしれません。

否、もうそこまで来ているのです。

本記事の読者である会計人も対岸の火事ではないでしょう。そうであるならば、時代が変化しても必要とされるよう、新しいことに取り組まなければならない、と考えたのです。

自主隔離期間が明けると、今度は大学のコロナ対応による特別な準備など、通常時にはない仕事がいくつも発生し、業務は昨年までよりもむしろ増えました。ただ、趣味のゴルフもできなくなったせいで、普段よりも研究するようになりました。大学と自宅を往復する通常の生活ではとれなかった時間を、新しい研究の基礎データの収集に充てることができたからです。

むしろ研鑽を積むチャンス

以上、コロナ騒動によって生じた私の心境の変化について書いてきましたが、要するに、時代の変化スピードが急加速するなかで、研鑽を積まなければ私たちは社会から必要とされなくなってしまうかもしれないのです。

そこで、腰を据えて自分と向き合うことができる今こそ、新しいことにチャレンジしてはいかがでしょうか。どんな状況でも「役に立たない」自分にならないために。

<執筆者紹介>
中村 亮介(なかむら・りょうすけ)
筑波大学ビジネスサイエンス系准教授
1982年生まれ。2004年一橋大学商学部卒業,09年一橋大学大学院商学研究科博士後期課程修了,博士(商学)。帝京大学経済学部講師,准教授を経て,13年より現職。
主要著書として『財務制限条項の実態・影響・役割-債務契約における会計情報の活用-』(河内山拓磨氏との共著,中央経済社,2018年。第61回 日経・経済図書文化賞受賞)がある。趣味はゴルフ,プロ野球観戦(開幕が決まってよかった…),ラジオ鑑賞。


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