並木秀明
続・合格発表~同時合格の思い出
タイトルを続・合格発表としたのは,12月号において「税理士試験の合格発表」について書いたからである。本来は,1月号の発売日の月が税理士試験の合格発表である。この合格発表の忘れられない思い出がある。10年ほど前であるが,予備校の簿財横断クラスなる自主企画の講座を受担当していた頃の話である。教室の右列2番目と3番目にIさんというご夫婦がいた。Iさんご夫婦は,会計人コースの読者でもあり,そろって簿財に合格し報告をいただいた。旦那さんは,試験中に「電卓が動かなくなる不幸に遭遇した」そうであるが,「先生のご指導のおかげで合格しました」なんて言われると猛烈にうれしくなった思い出がある。その数年後,Iさんご夫婦がさらに嬉しい報告をいただいた。ご夫婦の名前が上と下に並んでいる官報を持参してくれたのである。当時は,「奇跡」のように感じていたが,いまは「努力」,「継続」の文字が浮かんで来る。ご夫婦には,読者の励みに会計人コースに「写真付きの合格体験記」にも登場してもらった。写真には家中に「企業会計原則」,「会計基準」が拡大コピーで貼りつけてあった。
ヤル気が出ないときの対策
「はじめての会計基準」の改訂版の執筆,「・・・」タイトルの決まらない新書籍の執筆,「気まぐれ並木道」の原稿,明日の授業のテキスト作り・・・,体がどうしても仕事に向かわない。「一杯のコーヒーを飲んでから」とだらだらと時間が経過する。そこで「言い訳のできない装備品を回りに配置する」のである。
わたしの身の回りを見渡してみる。正面にデスクトップ・パソコン,右にもう一台のノート・パソコンがあり,左に19インチのテレビ,テレビの上にステレオ,ビデオ,DVD,ラジオがある,床には本が4つのタワーとなり積まれている。さてこれからがヤル気対策である。手の届く範囲にポット,コーヒー,紅茶,日本茶,おせんべ,ビスケット,チョコレート,たらたらしてんじゃねーよ,などの非常食をたんまり準備する。つぎは,手帳,メモノート,ドリンク剤,ハサミ・ホッチキス・クリップ・筆記具をはじめとする多様な文具などを整然と配置する。すなわち,一日不自由なく過ごせる仕事などの装備品を身の回りに配置するのである。勉強も仕事も切羽詰ったときに無駄な時間と思わず行うルーティン・ワークである。
もう年が明けようとしている。税理士試験までおよそ8か月,今こそペースをつかまなければならない時期である。年末年始は,不断とは異なる時間の流れでペースが乱される。まだ気分が乗らない読者はマネしてみてはいかがだろう。
年末年始
そういえば去年は,紅白歌合戦のあと,除夜の鐘を聞きながら会計人コースの原稿を書いていた。108つの煩悩(四苦八苦,4×8+8×9=108)を次期に繰越していた。
昔々その昔,子供だった頃の私には原稿も講義の心配もなく,長い楽しい冬休みを満喫していた。脳味噌のどこかにそんな記憶が残っているから年末年始が好きなのかもしれない。「メリー・クリスマス」,そして「明けましておめでとう」,良いお年をなるように!
<執筆者紹介>
並木 秀明(なみき・ひであき)
千葉経済大学短期大学部教授
中央大学商学部会計学科卒業。千葉経済大学短期大学部教授。LEC東京リーガルマインド講師。企業研修講師((株)伊勢丹、(株)JTB、経済産業省など)。青山学院大学専門職大学院会計プロフェッション研究科元助手。主な著書に『はじめての会計基準〈第2版〉』、『日商簿記3級をゆっくりていねいに学ぶ本〈第2版〉』、『簿記論の集中講義30』、『財務諸表論の集中講義30』(いずれも中央経済社)、『世界一わかりやすい財務諸表の授業』(サンマーク出版) などがある。
※ 本稿は、『会計人コース』2020年1月号に掲載した記事を編集部で再編成したものです。
記事一覧
第1回:恋と愛と会計人コース
第2回:生きていくために必要な力
第3回:筆記具蒐集
第4回:勉強の成果
第5回:合格発表から年末年始
第6回:覚える、忘れる、思い出す
第7回:海外旅行でのエピソード
第8回:出会いがもたらしたもの
第9回:タイムマシン
第10回:季節の変わり目
第11回:本試験までの勉強
最終回:試験日までの最終アドバイス