わたしの独立開業日誌 #税理士・中村圭吾
- 2025/9/18
- 独立開業日誌

【編集部から】
士業の魅力は、独立開業できることにもあります。「将来は独立」を目標に合格を目指している方も多いのではないでしょうか。
そこで、「わたしの独立開業日誌」では、独立した先輩方に事務所開業にまつわるエピソードをリレー形式でお話しいただきます(木曜日の隔週連載)。
登場していただくのは、税理士・会計士をはじめ、業務で連携することの多い士業として司法書士や社労士などの実務家も予定しています。
将来の働き方を考えるヒントがきっと見つかるはずです。
はじめに
2025年1月、33歳で「ホームスチール税理士事務所」を立ち上げました。
独立前は、新卒で入社したスタッフ300人超の士業グループで、企業顧問をメインに担当する傍ら、相続専門部や医療・介護専門部で多くの案件に携わってきました。
大きな事務所ということで、事務所内の新入社員育成にも関与しましたし、チームでクライアントを支援する経験を積むことができました。
ここでは、私の独立開業について書かせていただきます。

大学受験で失敗、税理士試験への挑戦を決意
税理士を目指したきっかけは、大学受験の挫折です。
理系で進学を目指していたものの、センター試験で大きく崩れ、一旦目標を見失いました。
私の性格上、浪人生活が向いていないと考え、文転して税理士試験に挑戦することにしました。
「文系資格の中で、税理士であれば理系的な思考を活かせるのでは?」と思ったのです。
とはいえ、税理士試験は、甘くありません。
特に、大学を卒業して働きながらの受験では、結果が振るわない年が続きました。
諦めかけた時期に、当時の上司に言われたのが、「合格すると見える世界が変わる。君にはその世界を味わってほしい」という言葉でした。
自分の中のスイッチが切り替わったような気がしました。
おそらく、その言葉がなかったら今でも合格していないのではと思っています。
決して合格することがすべてではありませんが、税理士にならなければ見えない世界は確かにあります。
受験生の皆さんにも、ぜひ自分の目でその景色を見てほしい。
そう思っています。
事務所名「ホームスチール」に込めた思い
さて、事務所名の「ホームスチール」は、父が営んでいた建物金物工事会社の社名が由来です。
本来は「家×スチール(金物)」の意味です。
私はこの父の会社の名前を事務所名として選びました。
父は、365日のうち360日働くような人でした。
5年前にがんで他界。
もしあと半年生きていれば、孫の顔を見られたはずのタイミングでした。
私はすでに税理士業界にいましたが、最も身近な「社長」である父と経営の話を深く交わすことは、ほとんどありませんでした。
「世の中の社長を支えたい」と言いながら、一番近くの社長の話を聴こうとしなかったことが今でも後悔です。もしあの頃、少しでも話を聴き、負担を軽くできていたら…。
その気持ちをいつまでも忘れないように事務所名を決めました。

税理士は経営者にとって「ちょうど良い他人」
独立後、「苦労」と感じることは、実はあまりありません。
もちろん、意思決定の責任やリスクは増えていますが、その分やりがいも何倍にも大きいです。
自分が提供したい価値を考えながら、事務所運営できる自由度は何物にも代えがたいです。
税理士は、経営者にとって「ちょうど良い他人」だと感じています。
その会社の業績を誰よりも把握している第三者は、税理士以外にいないでしょう。
そして、他人だからこそ提供できる視点があるし、その会社の従業員じゃないからこそ受けられる相談も多いはずです。
スタッフ・クライアントを幸せにする組織づくりを目指して
現在はまだ5人のグループですが、10月には7人になる予定です。
規模を追うための拡大ではなく、クライアントもスタッフも幸せにする組織づくりが目標です。
税務・会計の正確さはもちろん前提として、その先にある意思決定と人の心理に寄り添う事務所であり続けたいと思っています。
最後に、受験生の皆さんへ。
挫折も、悔しさも、必ず糧になります。
合格の先にある世界で、一緒に面白い仕事をしていきましょう。
プロフィール
中村圭吾(なかむら・けいご)
ホームスチール税理士事務所 代表税理士
税理士・経営心理士
2025年1月独立開業、大学卒業後税理士法人ゆびすいへ入社し10年半勤務、相続専門部・医療介護専門部などで実務経験を積む傍ら社内の新入社員育成などに従事、税務だけでなく経営心理学の視点を用いて伴走型の財務支援を提供、趣味はランニングとボクシング。