わたしの独立開業日誌 #司法書士・林 祐司


【編集部から】
士業の魅力は、独立開業できることにもあります。「将来は独立」を目標に合格を目指している方も多いのではないでしょうか。
そこで、「わたしの独立開業日誌」では、独立した先輩方に事務所開業にまつわるエピソードをリレー形式でお話しいただきます(木曜日の隔週連載)。
登場していただくのは、税理士・会計士をはじめ、業務で連携することの多い士業として司法書士や社労士などの実務家も予定しています。
将来の働き方を考えるヒントがきっと見つかるはずです。

職人」から「士業」の世界へ

はじめまして、司法書士の林祐司と申します。
司法書士としては少し珍しい「相続・家族信託専門」の司法書士事務所を、さいたま市の浦和で開業しています。

私自身は、学歴が全くなく、特にこれといったスキルもなかったため、司法書士になる前は鳶職や大工など職人の仕事をしていました。
しかし、力仕事をいつまで続けられるかわからず、将来への不安から「資格を取ろう」と考え、受験資格がない司法書士試験を選びました。

勉強経験があまりない中で、さらに独学で挑んだので苦労しましたが、行政書士、司法書士、宅建に、連続で独学合格することができました。

開業後のプロフィール写真

「はじめてのデスクワーク」で実務を学ぶ

司法書士試験に合格した後、はじめて司法書士事務所に勤務しました。
それまで、司法書士の実務経験はないどころか、デスクワークの仕事すらはじめて。
何をするにもはじめての経験で、多くの刺激を受けながら楽しく業務を学んでいました。

勤務から半年ほど経った頃、基本的な業務はすべて覚え、「このまま勤務していてもあまり学ぶものはない」と感じ、独立したい気持ちが強くなっていきました。
比較的短期間で一通りの業務を覚えられたことについては、その理由を聞かれることも多いですが、これには、「職人時代の教えや経験が生きた」と思っています。

というのも、職人時代の親方は非常に厳しい方でした。
最初に言われたのが、「仕事は教えてもらえると思うな」です。
そして、「教えている間は、俺の手を止めて教えていることを忘れるな」でした。

司法書士事務所に勤務した後も、この教えが根底にあったので、先輩の背中を見て、「どうやって仕事をしているのか、どうやったら効率よく仕事ができるのか」と、常に自分の頭で考えていました。
そして、朝は早く起きて自分で勉強し、仕事を覚えるために土日も出社していました。
そういった積み重ねが、比較的短期間で一通りの業務を習得できたことにつながったのだろうと思います。

勤務司法書士から独立開業へ

事務所の打ち合わせスペース

実際に開業したのは、事務所勤務から1年ほど経った頃でした。
職人時代や勤務司法書士時代に養った「自分の頭で考える力」というのは、開業する上でも役に立ちました。

その一つが、事務所の戦略です。
勤務時代、相続問題や認知症問題で困っている人が非常に多いこと、さらには、その人たちのほとんどがどこに相談していいかわからない状態であることを知りました。
そこで、「相続・家族信託専門」の事務所にしたらニーズがあるのではと考えました。

その他にも、「どうしたらお客様が喜ぶか、どのような需要があるのか」を常に考えています。
また、相続の仕事柄、税理士の方に相続申告の案件を紹介したり、連携をとったりすることもありますが、その時も、「どのようにしたら、その税理士が仕事をしやすいか、どのような案件を紹介したら喜ばれるか」などを常に考えています。

そうすると、税理士から相続登記や家族信託の案件が自然と返ってくるものです。
特に、私が相続・家族信託専門の司法書士であるということを打ち出しているので、税理士の方も案件を紹介しやすいようです。

なぜ独立開業を選んだのか

「独立する時に不安はなかったか?」と聞かれることも多いですが、私は全くありませんでした。
それよりも、雇用されて給料をもらうことでしかお金を稼げないほうが、よっぽどリスクだと考えていました。
なので、早く「自分で稼げる力」をつけたくて、独立を選択しました。

さらに言えば、司法書士のような士業の独立開業は、初期費用も、毎月の固定費もほとんど掛かりません。
もし開業に失敗して借金をしたとしても、さほど大きな金額にはならず、またどこか事務所や法人に勤務して、夜中も土日も働けば、借金なんてすぐ返せるという考えでした。

士業は本当に恵まれている職業で、需要に対し適切に供給すれば仕事はいくらでもあるものです。
常に相手の立場に立って、考えながら仕事をすれば、独立開業はそれほど難しくないのが、士業の良いところだと実感しています。

人から感謝される仕事

司法書士に限らず、士業全体で言えることなのかもしれませんが、近年は、試験に合格した後に、独立開業を選択せず、法人勤務で務める人も多くなっています。
独立する・しないは個人の自由です。
しかし、もし興味がある人には、自信を持って独立をおすすめします。

私自身は、毎日強制的に事務所へ出社することや、上司から理不尽なことを言われるのが、本当に嫌でした。
独立した後は、その嫌だったことがすべてなくなり、やりたい業務だけをやり、人から感謝されながら仕事ができていて、本当に幸せです。

受験生はつらいことも多いと思いますが、頑張ってください!

【執筆者紹介】
林 祐司(はやし ゆうじ)

司法書士・行政書士・宅地建物取引士。
平成30年4月にさいたま市浦和区に相続・家族信託専門の司法書士事務所を開業。開業当初から登記業務の脱却を経営方針に掲げ、相続の総合的なコンサルティング業務を中心業務とする。特に家族信託業務には力を入れており、年間実績は100件を超える。また、試験を独学で合格した経験から、勉強法などをYouTubeで情報発信し、司法書士受験生の個別指導も行っている。
事務所ホームページ
Twitter(@yuji_hayashi34)
YouTube(司法書士林祐司の勉強法チャンネル)

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