
ボザイ(山本賢志朗)
【編集部より】
税理士試験直前期にどう過ごすか。独学と通信で税理士試験全科目に一発合格(簿財消法相)し、格闘2024年DEEPで総合格闘技プロデビューを果たし、連勝中の格闘家税理士ボザイさんにアドバイスをいただきました。
第1回:合格を掴むためのメンタルの整え方
第2回:直前期に向けての食事の管理
第3回:夏場に2時間戦える体の作り方
はじめに
年に一度、真夏のピークに実施される税理士試験。それは、合格率十数パーセントという狭き門を突破するための、知識と精神力が試される総力戦です。そして、多くの受験生が見落としがちな、しかし合否を分ける極めて重要な要素がフィジカル、すなわち万全の体調です。これまでの膨大な学習時間を無駄にしないためにも、学力だけでなく「戦える体」を計画的につくり上げることが、合格への最後のワンピースとなるのです。
①本番からの逆算思考
②フィジカル戦略
今回は私が実践から得た知識や経験を上記の2つにまとめてご紹介させていただきます。
すべての基本は「試験本番からの逆算」思考
税理士試験のような長丁場の戦いでは、ゴールから逆算して計画を立てることが合格への王道です。これは複雑な計算問題を解くための学習計画だけでなく、体調管理においても全く同じです。
漠然と「体調を整えよう」と考えるのではなく、「試験当日の朝9時、最高のコンディションで席に着いている自分」という明確なゴールをまず設定しましょう。そして、そのゴールから時間を遡って「今やるべきこと」を具体化していくのです。
【本番からの逆算タイムスケジュール】
・試験1ヶ月前
生活リズムを完全に「試験モード」へ移行させる。
人間の脳が最も冴えるのは、起床から2〜3時間後と言われています。試験開始が午前9時であれば、その時間帯に脳の活動がピークに達するよう、逆算して生活リズムを構築する必要があります。
夜型の人が急に早起きするのは困難であり、かえって体調を崩しかねません。まずは1週間ごとに30分ずつ起床時間を早める等、無理のない範囲で徐々に体を慣らしていきましょう。
・試験10日前
カフェインの摂取をゼロにし、睡眠時間を伸ばします。ぎりぎりの睡眠時間の中で日々の勉強に向き合うためには必要なカフェインですが、カフェインを抜くととたんに睡眠の質があがります。
・試験1週間前
新しいことには手を出さない。体調維持に注意を注ぎます。通勤時にマスクやうがいをし風邪など引かないように対策をします。
体のリズムにも気を付けます。試験開始時間が9時からだとしたら9時から2時間の試験問題を解くなどして、9時からトップギアで走りだせる体を1週間で作ります。
・試験前日
最終チェックは早めに切り上げ、リラックスして過ごす。消化の良い夕食を摂り、十分な睡眠を確保する。持ち物の最終確認を済ませます。
・試験当日
脳のエネルギーとなる消化の良い朝食を摂ります。試験30分前に250mlぐらいのコーヒーを飲みカフェインを体に取り込みます。10日ほど摂取していなかった分、すごく集中力が高まる感覚がありました。
以上ですが、個人差があると思うのでご自身にあったルーティンを見つけるために実践したことを記録に残して翌年修正をしてオリジナルを作り上げてください。
直前期からでも遅くない!3つのフィジカル戦略!
最高のコンディションを構築するための具体的な戦略です。「体力」「食事」「睡眠」は税理士試験においても非常に重要な3つの柱だと考えます。これらを整えて盤石な土台をつくり上げましょう。
体力編
【勉強効率もアップ!1日15分の筋トレ】
長時間の学習で凝り固まった体と運動不足による体力低下は集中力の大敵です。短時間でかつほとんどが室内で完結する筋力トレーニングで学習効率とストレス耐性の両方を手に入れましょう。
~部位別トレーニングのススメ~
筋肉は、トレーニング後の休息(48〜72時間)で回復する過程でより強く成長します(超回復)。「曜日ごとに鍛える部位を変える」ことで、効率よく全身を鍛えることができます。(以下で紹介するのは一例です)
月曜:胸、腕(腕立て伏せ)・・・肩幅より少し広く手をつき、胸を床に近づけます。頭からかかとまでが一直線になることを意識しましょう。
火曜:脚(スクワット)・・・足を肩幅に開き、椅子に座るようにお尻を突き出しながら腰を落とします。膝がつま先より前に出ないように注意。体力向上に最も効果的です。
水曜:肩(ショルダープレス、サイドレイズ)・・・ダンベルやチューブを使ってやります。ない場合は腕立ての体勢から腰を上に突き出して横からみたときにアーチ型になり、そこから腕立ての要領で曲げても良いと思います。
木曜:お腹(腹筋運動)・・・腹筋や仰向けに寝て足をのばしたまま床から垂直ぐらいまであげさげしたりします。
金曜:胸、腕(腕立て伏せ)・・・肩幅より狭くして腕の刺激を強くしてやります。
土曜:心肺機能(ランニング)・・・20分~30分程度やっていました。ランニングは全身運動なので特におすすめです。
日曜:背中(懸垂)・・・近くの公園で懸垂したり、ない場合は自宅の床でうつぶせに寝て行う背筋運動などでも良いと思います。
自宅でのトレーニングをはかどらせてくれるアイテムのひとつに「チューブ」があります。Amazonなどで安く買えるので買うと筋トレがはかどるのでおすすめです。
【応用編】短時間で効果大!ドロップセット法
「ドロップセット法」とは、「限界までやったら、すぐに負荷を軽くして、もうひと頑張りする」テクニックです。
例えば、通常の腕立て伏せを限界まで行った直後、10秒ほど休憩して膝つき腕立て伏せを限界まで行う、といった具合です。
この「キツい種目→楽な種目」のコンボで、15分でも絶大な効果が得られます。
食事編
試験当日のパフォーマンスは、直前期の食事で決まります。脳と体を最適化する食事を心がけましょう。
<脳のエネルギー源「糖質+ビタミンB1」>
白米やパン脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖(糖質)は必須です。ただし、白米やパンといった糖質を効率よくエネルギーに変えるためには、ビタミンB1が不可欠。豚肉やうなぎ、大豆製品をセットで摂るのがよいですが、私はサプリメントで補うことも少なくなかったです。
<食事で心を整える!イライラ・不安を和らげるお助け食材>
玄米やトマト、キムチ等に含まれる「GABA(ギャバ)」という成分。これは、興奮した神経をなだめてくれる、脳内のブレーキ役のような存在だと言われています。
また、牛乳・ヨーグルト等の乳製品、バナナ、そして納豆等の大豆製品に豊富な「トリプトファン」も良いです。これは、心を穏やかにする「幸せホルモン(セロトニン)」を作り出すための材料になります。
朝食にヨーグルトやバナナを加えたり、もう一品の食材として納豆を食べる等工夫をすることで、プレッシャーに負けない安定したメンタルづくりに繋がります。
私がよく食べていた食事の組み合わせは、主食を白米や玄米に、主菜はささみや鶏胸肉、副菜にキムチ、納豆等です。
食間に牛乳を摂取することもしていました。
体型維持のためにも一日の摂取カロリーは2,500kcal程度(個人差あり)にしていました。
ポイントは苦痛にならないことなのであまりこだわりすぎず、少し意識するというぐらいから始めると良いと思います。
睡眠編
税理士試験と睡眠の関係は非常に密接です。睡眠時間が確保できていない中での学習は効率が下がってしまいます。ぎりぎりの睡眠時間で頑張っているのでどうしても眠くなることがあります。そんな時は仮眠が有効です。
眠くなったら潔く寝てしまうことをおすすめします。10分~15分程度の短い仮眠が非常に効果的です。
30分以上寝てしまうと、起きた後にかえって頭がぼーっとするためアラームをセットして短時間で切り上げるのがコツかと思います。
まとめ
税理士試験は、孤独で長い戦いです。しかし、ゴールは目前です。これまで積み重ねてきた知識、そしてこの日のために丹念に整えてきたコンディション。その両方が揃って初めてみなさんの実力は100%発揮されます。
受験生のほとんどが不安をかかえています。万全の準備をして堂々と試験会場へ向かってください。それだけでみなさんは一歩リードです。この記事を読んでいただいた方が本番でいつも通りの実力をだし合格できることを心から応援しています。頑張ってください!
<執筆者紹介>
ボザイ
学生時代はスポーツ一直線で20代は営業職のサラリーマンとしてキャリアを築く。30代に入ってから、資格の勉強をしようと考え独学で簿記の勉強を始める。簿記の勉強を進めていくうちにその面白さに気づき、経理、会計業界に転職することを夢見る。はじめての日商簿記1級受験で合格し、その合格をきっかけに事業会社経理、会計事務所とキャリアを積み、令和5年に働きながら4年で税理士試験官報合格を達成。現在は税理士法人に勤務。
著書に、『税理士試験全11科目のすごい勉強法』(共著、中央経済社)。