<直前期集中連載>財表理論 インプット&アウトプット同時マスター講座(第17回)―固定資産の減損


Ⅲ 資産会計⑨ 固定資産の減損

6.固定資産の減損に係る会計基準
33.「基準」設定の必要性
 ★★
 固定資産の①収益性の低下に伴い,帳簿価額が価値を過大に表示したまま将来に損失を繰り延べていることによって,財務諸表への社会的な信頼を損ねている。減損に関する処理基準が整備されていないために,②裁量的な固定資産の評価減が行われるおそれがある。よって,③固定資産の回収可能性を帳簿価額に反映させることによって,④投資者に的確な情報を提供するとともに,会計基準の国際的調和を図る観点から,同基準の設定が必要とされる。

34.固定資産の減損と減損処理の定義 ★
 固定資産の減損とは,①資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態であり,減損処理とは,そのような場合に,②一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理である。

35.減損処理と時価評価との相違点 ★★
 固定資産の減損処理は,事業用資産の①過大な帳簿価額を減額し,将来に損失を繰り延べないために行われる会計処理であり,金融商品に適用されている時価評価とは異なり,②資産価値の変動によって利益を測定することや,③決算日における資産価値を貸借対照表に表示することを目的とするものではなく,④取得原価基準の下で行われる帳簿価額の臨時的な減額である。

36.減損損失の認識 ★
 ①減損の兆候がある資産又は資産グループについての減損損失を認識するかどうかの判定は,②資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額と③帳簿価額を比較することによって行い,④資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には,減損損失を認識する。 

37.減損損失の測定 ★
 減損損失を認識すべきであると判定された資産又は資産グループについては,帳簿価額を①回収可能価額まで減額し,当該減少額を減損損失として当期の損失とする。
ここで,①回収可能価額とは,資産又は資産グループの②正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額をいう。

38.減損損失の戻入れの可否 ★
 減損処理は①回収可能価額の見積りに基づいて行われるため,その見積りに変更があり,変更された見積りによれば減損損失が減額される場合には,②減損損失の戻入れを行う必要があるという考え方がある。しかし,本基準においては,③減損の存在が相当程度確実な場合に限って減損損失を認識及び測定することとしていること,また,④戻入れは事務的負担を増大させるおそれがあることなどから,⑤減損損失の戻入れは行わないこととした。

*自宅学習などで音読可能であれば、ぜひ音読しましょう!


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