長島正浩
(茨城キリスト教大学経営学部教授)
【編集部より】
税理士試験の財務諸表論、公認会計士試験の財務会計論。
「計算は得意だけど理論はニガテ」という受験生の方は多いですよね。
理論が得意になるためには、個々の論点をただ暗記するのではなく、隣り合った論点を「総合的かつ横断的」に理解することが大事です!
その1つの学習方法が、基本書を使って、キーワードをもとにさまざまな箇所で解説されている内容を横断的に押さえること。
本連載では、長島正浩先生(茨城キリスト教大学経営学部教授)に、代表的な基本書である『財務会計講義』(桜井久勝著)の索引を手がかりに、「総合的かつ横断的」な理解に不可欠な論点を解説していただきます。
ぜひ理論の得点アップにお役に立てください!
まずはウォーミングアップ
第1回のテーマは「時価」である。
ここで、ウォーミングアップとして、私と時価との出会いを話しておこう。あれはたしか私が24歳くらいの頃であったろうか。30数年前の出来事である。
友人と飲みに行き、見知らぬ一軒の店に入った。ひととおり飲み食いして、ふと壁に目をやると、「アワビの踊り焼き 時価」と紙に書いて貼ってあるではないか。人生初である。
他のメニューはすべて金額が書かれているのに、アワビの踊り焼きだけは漢字で大きく「時価」と書かれているのである。酔っぱらっていたからか、テンションが上がり、金額も聞かずに注文した。
当時は専門学校で簿記の講師をやっており、商品も有価証券も原価評価の時代であったので、例外的に時価評価を説明することはあったが、日常生活で、しかも食べ物の価格で「時価」と出会ったのは、このときが初めてであった。
「いくらだったのか早く教えろよ」という声が聞こえてきそうだが、結局合計額を友人たちで割り勘にしたので、あの「時価」がいくらだったのかはわからなかった。
というより、そのときの私は「時価」なんかに興味はなかった。「アワビの踊り焼き」のほうに興奮し、金額がいくらであろうと人生初のアワビを堪能したかったのである。