
【編集部より】
本を読むのにぴったりな季節。「何かオススメはないかな~」と探している人もいるのではないでしょうか。
そこで、本企画では、実務家などの読書愛好家から、会計人コースWeb読者の皆さんにオススメする「読書の秋の課題図書」をご紹介いただきました(1日お一人の記事を順不同で掲載・不定期)。
受験勉強はもちろん、仕事や人生において新しい気づきを与えてくれる書籍がたくさんラインナップされています。ぜひこの機会にお手にとってみてください!
まえがき
招き猫.mdbと申します。メーカーでかれこれ15年以上にわたり原価計算実務に携わってきました。
様々な知識と胆力を要する原価管理は、まさに「会計の総合格闘技」とも言える業務です。今回は自身の現場経験を踏まえ、原価計算の枠を超えて視野を立体的に広げてくれる、異なる切り口のオススメ書籍4冊をご紹介します。
オススメ書籍①『経営危機時の会計処理 レオパレス21は難局をどう乗り越えたか』(日野原克己、中央経済社)
施工不備で危機に瀕した同社の会計処理検討のプロセスについて臨場感たっぷりに書かれた一冊です。引当金や減損などの論点が「背景→基準→実務→監査人協議→振り返り」の順で整理されており、自社で会計処理を検討する際の思考フレームワークとしても、そのまま活用できそうな分かりやすい記述となっています。
特に、本書で描かれる継続企業の前提の注記を巡る生々しい検討は、読み物としても面白く、不測の事態に対して妥当なロジックを組み立てる大きなヒントになりました。期末に工場で災害が発生したりすると引当金の検討にメーカー経理はとても苦労します。会計基準が実務の現場でどう「生きた知識」として機能するのかを体感できる良書です。
オススメ書籍②『あなたの会社は原価計算で損をする』(一倉定、日経BP)
伝説の経営コンサルタント一倉定氏が、全部原価計算の経営管理上の限界と直接原価計算の優位性を舌鋒鋭く突いた迫力ある一冊です。驚くべきは、原価計算基準が制定された翌年の1963年に刊行されている点です。
在庫の増減によって利益が歪む固定費配賦の問題を経営陣へどう説明すべきか苦慮した経験をお持ちのメーカー経理担当者は多いと思います。本書を読んだ際、今なお現場を悩ませる本質的な課題が原価計算基準制定当時から指摘されていたことに強い衝撃を受けました。
アメーバ経営に通ずる部門別業績管理の記述もあり、優れたコスト管理の本質は今も昔も変わらないことを考えさせられます。簿記などの試験で学ぶ計算手続きの裏にある「経営に活かす会計とは何か」を学べる一冊となっています。
オススメ書籍③『わかる!使える!うまくいく! 内部監査 現場の教科書』(浦田 信之、中央経済社)
本書は「現場の教科書」の名の通り、内部監査の目的や流れ、指摘の勘所が実践的に整理された一冊です。近年、工場が各種監査を受ける機会が増えていますが、主体や目的が異なる「三様監査(会計監査・監査役監査・内部監査)」に現場が戸惑う場面も目にします。
私自身、メーカー経理として工場の担当者から「監査の意図が分からない」「会計的な説明ができない」と相談を受け、質問の趣旨を咀嚼して現場と監査部門のハブとなった経験があります。本書には内部監査の目的を理解し、経理として現場へ適切な対応を促すためのヒントが詰まっています。内部監査が実際の企業現場でどう機能しているかを立体的に捉え直せる好著です。
オススメ書籍④『エンジニアが学ぶ会計システムの「知識」と「技術」』(広川 敬祐編・著、翔泳社)
現代の経理実務は手入力から脱却し、販売や生産などの基幹システムから集約されたデータを、いかに正しく会計帳簿へ変換するかが主眼となっています。私自身、データベースの構造やデータ連携の仕組みを理解していたことが、異常値となる仕訳データの要因解析など普段の業務への対応だけでなく、基幹システム改修PJへの参画においても決定的な強みとなりました。
本書はエンジニア向けですが、会計システムが持つべき機能や導入・運用の全貌が平易に解説されており、経理担当者にも一読の価値があります。AI時代であっても「ビジネスデータを会計ルールで変換し会計帳簿(データベース)に累積する」という本質は変わりません。
会計知識だけでなく「ITにも強い経理」へステップアップするための会計システムの基本が学べるオススメの一冊です。
<著者紹介>
招き猫.mdb
メーカー経理/中小企業診断士
Excelよりも先にAccessを覚えさせられた経理。
「会計はデータベースを作る仕事」が持論で、普段はメーカーでSAPを使った原価計算業務に従事。基幹システムだけでは解決できない課題をAccess/Power query/Power pivot等を駆使して無理矢理対応してきた悲しき集計屋。本業以外に中小企業診断士として中小企業に向けた原価計算導入アドバイスも実施しています。
X(@nekokure1984)















