
矢島直(弁護士・司法試験講師)
【編集部より】
会計士試験でも税理士試験でも避けては通れない法律学習。最近目まぐるしく発達する生成AIですが、法律学習に使えるのでしょうか?弁護士で、司法試験受験指導をしている矢島先生に2回にわたりご執筆いただきます。
はじめに
前編では、生成AIのキホンと始め方について書きました。
後編では、本題の法律学習への応用について考えていきましょう。
重要なのは以下の4つです。
➀情報の整理
➁対話型学習・演習
➂文章生成・添削
④リサーチ補助
情報の整理
まず、情報の整理に活用できます。
膨大な法律文献や判例を短時間で処理し、学習の負担を軽減する活用法です。
| 分類 | 目的 | 生成AIへの指示文例 |
| 判例・文書の要約 | 長文の判例や学説、レポートの主要な論点や結論を瞬時に把握する。 | 「この判例の事案の概要と規範(ルール)を300字でまとめて」 |
| 概念の平易化 | 難解な法律用語や概念を、自分の理解度に合わせて解説させる。 | 「『善意無過失』という言葉を、法律を学んでいない高校生にも分かるように具体例を交えて説明して」 |
| 情報の一覧化 | 複数の情報を比較・整理し、体系的な理解を助ける。 | 「民法の錯誤と詐欺の違いを、要件と効果に分けて表形式で整理して」 |
例えばChatGPTに最高裁判所の判例のリンクを指定し要約を指示するとこんな感じになります。
単純ですが強力です。

次に、NotebookLMに判例PDFを読み込ませることで要約を得ることもできます。

この方法だと、➀音声解説、②動画解説、➂マインドマップ、④レポート、⑤フラッシュカード、⑥テストを簡単に作ることができます。
それぞれのクオリティには驚くばかりです。



対話型学習・演習
次に、対話型学習・演習に活用できます。AIを家庭教師や議論の相手(壁打ち相手)に見立てて、一方的な暗記ではない双方向の学習を行う活用法です。
| 分類 | 目的 | 生成AIへの指示文例 |
| 疑問点の即時解消 | 勉強中に生じた疑問をすぐにAIに尋ねて解決する。 | 「この条文の〇〇という規定が適用される具体的なケースを5つ挙げて」 |
| 論点の壁打ち | 自分の考えた解釈や論理構成が正しいか、AIに批判的検討を依頼する。 | 「A説に基づいてこの問題を解釈したが、A説に対するB説からの批判点を教えて」 |
| 模擬テストの作成 | 学習した範囲からオリジナルの問題を作成させ、アウトプット練習を行う。 | 「会社法の株式に関する知識から、重要な用語について一問一答形式の問題を10問作成して」 |
例えば、「会社法の株式に関する知識から、重要な用語について一問一答形式の問題を10問作成して」とGeminiに頼むとこんな感じで出題してくれます。

NotebookLMのテスト機能を使うとこんな感じです。

文章生成・添削
次に、文書の生成・添削に活用できます。
| 分類 | 目的 | 生成AIへの指示文例 |
| 論文答案・法的文書の下書 | 論文問題・法的文書の回答案を作成してもらう | 「当初はお金を支払う意思はあったものの、飲食店でご飯を食べた後に支払いたくないと思って逃走した場合、何罪が成立するか検討してください。司法試験の答案だと考えて作成してください」 |
| 論文答案の添削 | 自分の考えた論文答案を添削してもらう | 「文書を添削してください」などなど |
ChatGPTで作った答案はこんな感じです。

リサーチ補助
最後はリサーチです。
GenemiやChatGPTに単純に聞いてみるのも良いです。
あとは前述したLEGALLIBRARY(リーガルライブラリー)、LEGALSCAPE(リーガルスケープ)などを利用するのもありでしょう。
学生はお金がないでしょうが、社会人は検討してみてはいかがでしょう。
利用上の注意点
生成AIは法律学習において非常に有用ですが、虚偽情報の生成(これをハルシネーションと呼びます)のリスクが常に伴います。気軽に使って欲しいですが、必要に応じてAIが生成した判例の引用や条文の解釈は、基本書、判例集、法令集など、信頼できる情報源で裏付けを取ってください。
最後に
生成AIを使った法律学習法を解説してきました。実際に使ってみと、「すごい!」と驚くこともあれば「なんでこんなミスするんだ!」と残念に思うこともあるでしょう。
大事なことは、使ってみることです。
入力内容を変えれば、全く違う出力結果になることもよくあります。また色んな使い方も思いつくことでしょう。
本稿が、あなたの法律学習を、AIの力でさらに広げる一助となれば幸いです。
【プロフィール】
矢島直(やじま・なお)
司法試験講師。司法試験は公法系6位、民事系35位、総合50位で1回目合格。予備試験も合格。「努力する全ての人の夢を叶える」が講師理念。最近はアルゴリズム論などをテーマとした研究室にいた知見を法律実務・学習に活用すべく生成AIの知見を研究・発信。「生成AIを使った法律学習を、全ての人に」。
X:https://x.com/igXCMr5VXYsLNoz
YouTube:司法試験の処方箋チャンネルhttps://www.youtube.com/watch?v=_8F6U6a2hOE
前編はコチラ










