わたしの独立開業日誌 #税理士・廣島元彦
- 2025/10/30
- 独立開業日誌

27歳フリーターから税理士へ!freee特化で東京・板橋区に開業
はじめまして、宮崎県日向市出身の税理士、廣島元彦と申します。
2025年1月に税理士登録し、同年2月に東京都板橋区で開業しました。
妻と2歳の子どもがいます。
今回は、私の開業前から開業後までの話を、税理士試験の受験生や独立を考えている方に向けて執筆させいただきます。
参考になれば幸いです。

声優志望→27歳フリーターから税理士へ
アニメや漫画が好きで高校卒業後に声優を目指して東京へ出てきましたが、競争が激しく挫折しました。
就職しようにも27歳で社会経験無しという条件では難しかったため、何か資格をと考え、商業高校で経験のある簿記2級を受験しました。
ありがたいことに、2ヶ月で合格することができ、努力が成果として現れる「勉強の楽しさ」に目覚めました。
また、「税金やお金の専門家である税理士になれたなら、多くの人の役に立てるだろう」と考え、税理士の道へ進もうと決めました。
働きながらの受験生活
その後、働きながら予備校に通っていました。
家に帰ると勉強できないタイプだったので、朝はカフェで勉強してから出社、お昼休みはもちろん、夜もカフェや自習室で勉強してから帰るようにしていました。
「多少お金はかかっても、税理士になれば取り返せる!」というマインドでした。
実際、勤務先では科目合格で年収が上がりましたし、開業した今、税理士資格の価値をすでに体感しています。
試験勉強で最も苦労した暗記は、歩きながら暗唱していました。
翌朝の信号待ちや電車待ちで「昨日何覚えた?」と脳に不意打ちして思い出させる方法が記憶の定着に効果的だったように思います。
簿記論・財務諸表論・消費税法に合格後、産業能率大学大学院で論文を執筆し、2025年1月に税理士登録しました。
勤務時代での経験
独立に至るまで、記帳代行中心の会計事務所で2年間、税理士法人で6年間勤めました。
その中で、月次から申告まで1人で完結する総合力を身につけました。
勤務先では、顧問先の社長との月次面談がありました。
「何聞かれるんだろう、怒らせたらどうしよう」と最初は怖くて仕方ありませんでしたが、所長から「失敗は誰でもする。大事なのはそこからどうするかだよ」と言ってもらい、失敗を恐れず前向きに向き合えるようになりました。
役員報酬や倒産防止共済など、実務でわからないことを1つひとつ勉強しながら、その積み重ねが「自分の資産」になっていく感覚が楽しく、面白い仕事だと思いました。
独立への決断
もともと開業しようと考えていたわけではありませんでした。
税理士試験に3科目合格した頃から、少しずつ開業という選択肢が頭をよぎるようになりました。
税理士法人は恵まれた環境でしたので、そのまま勤め続けるか非常に迷いましたが、次の理由から独立の道を選びました。
1つ目は家族の存在です。大学院1年生のときに子どもが生まれました。
貴重な幼少期をできるだけ一緒に過ごしたいと考え、時間の自由が持てる働き方が魅力的でした。
2つ目は業務効率化やAIへの関心です。
クラウド会計やAIなど業務効率化に役立つ情報を目にすると試したくなるのですが、会社員の立場ではなんでも自由というわけにはいきません。
独立すれば、試すことも辞めることも自分の判断でできる自由さが魅力的でした。
3つ目は成長への危機感です。
尊敬する所長の元では甘えてしまって、そのままでは自分が同じ境地に到達できると思えませんでした。
ゼロから積み上げる経験が私の税理士人生にも必要だと感じました。
そして最後に、妻の「やりたいことをやったらいい」という言葉が背中を押してくれました。
開業準備と初期投資
事務所についてはレンタルオフィスを借りました。
自宅では集中できなかったことと、契約書等に自宅の住所を載せることに抵抗があったためです。

自己資金は生活費の10ヶ月分ほど貯めていました。
開業費用は税理士登録費用やPC、レンタルオフィスの初期費用なども合わせて100万円弱でした。
税理士は固定費のかかるビジネスモデルではありませんが、紹介会社を利用した場合の手数料が前払いであることと、自分でも融資申請の経験を積んでおきたかったので、日本政策金融公庫で700万円のご融資をいただきました。
新しいAIの利用料やセミナーやイベント代など、投資する価値があると判断したものに遠慮なく資金を使える余裕がもてたので借りておいてよかったと思います。
事前に用意しておいてよかったものとしては、独自のドメインアドレスです。
開業前後にメールアドレスを登録する機会が多く、プライベートなものを使い続いていると、後で変更する手間や、見落としてしまうリスクがあります。
HPは自作しようとしたのですがうまくいかず、士業専用のテンプレートをSAMURAI PRESSさんで1万円弱で購入しました。
名刺はCanvaで印刷代2,000円で簡単につくれました。
料金表はすごく悩みました。
自分に何ができて、どんな人・会社に対して、どんなサービスを、どんな値段で提供するのか、したいのか。したくないのか。考えさせられました。
値段設定については、従業員を雇用しない場合は受けられる仕事に限界がありますから、必要なお金と自分のキャパシティから逆算すると、必要な顧問料が導き出せるかもしれません。
(私の料金表はHPで公開しています。)
freee特化という戦略
会計ソフトはfreeeを選択しました。
機能をアップデートし続けていること、利用者目線の設計思想に共感したこと、会計から申告までつながる連動性があることが主な要因です。
また、マーケティングの観点では今後freeeは利用者が増える一方で、freeeに対応できる税理士が少ない点がチャンスだと捉えました。
freeeの使用経験はありませんでしたが、「1週間チャレンジ」という学習コンテンツがあり、そこである程度使いこなせるようになりました。
少し前は会計事務所の人間には使いづらいという声もあったそうですが、現在は既存の会計ソフトのように使える機能(補助元帳に直接入力など)も拡充されていますし、freeeユーザー同士の相談会や情報交換の場もあるので、横のつながりという安心感もあります。
最近は『bixid』という、未来予測会計を可能とする経営分析や事業計画策定に強いシステムを導入し、freeeと掛け合わせて会計を経営判断に役立てる支援に力を入れています。
開業前に準備したこと
大学院を卒業したタイミングで開業を決意し、そこから開業までの9ヶ月間何ができるか考えました。まず最もつまずくであろう営業のセミナーに参加したり本を読みました。
特にニール・ラッカム「大型商談を成約に導く『SPIN』営業術」(海と月社)は、売り込まない営業として、私の営業に対する印象を大きく変えてくれました。
マーケティングについては、特に神田昌典著「非常識な成功法則」「あなたの会社が90日で儲かる」(ともにフォレスト出版)が参考になりました。
税理士試験と開業は全く別の能力が求められます。
税務知識の研鑽は税理士としてし続けるのは当然として、営業やマーケティングという分野について勉強することが必要ではないかと思います。
開業後に苦労したこと
2月開業でしたので最初は確定申告のスポット案件を受注していきました。
しかし先行きの不安からか依頼を受けすぎてしまい、子供の寝顔しかみられない日々が続き「あれ、なんで開業したんだっけ?」という思いをしました。
4月からは顧問契約のご面談を2か月間で約50件実施したのですが、17件連続で失注したときはかなり落ち込みました。
値下げも考えましたが、freeeの方に「値下げして後で苦しむ姿をみたくない」と励ましていただき、踏みとどまりました。
面談の書き起こしをChatGPTに分析してもらったところ、「こちらが話しすぎている」「深掘りが不足している」などの課題が明確になりました。
「自分が聞きたいことではなく、相手の悩みを引き出す質問」に改善した結果、5月以降は成約率が大幅に向上しました。
現在もAIをフル活用し、面談前のシナリオ準備(見えている課題・見えていない課題、適した料金プランの選定)から、面談後の評価改善、商品設計の壁打ち、資料作成(法人成のメリット・デメリットなど)、マニュアル作成など多岐にわたって活用しています。
現在と今後の展望
顧問契約は当初からのお客様も合わせて半年で20社以上となりました。
事務所の強みはfreee特化の導入支援・法人成り支援です。
今後は中小事業者の業績改善を使命に、5年後の2030年には7名規模で経営に伴走できる事務所を目指しています。
私のような異業種からの転職や会計事務所未経験の方でも活躍できる事務所にしたいと考えています。
受験生へ
皆さんはなぜ税理士を目指しましたか?
私は明確にこれがやりたい!というものはありませんでした。
税理士資格はあなたに人生の選択肢を与えてくれます。
そのまま働くのもいいし、転職してもいいし、開業してもいい。
選択肢があなたの人生を豊かにすると思います。
まずは結果にこだわってぜひ合格を掴んでいただきたいです。
独立を考えている方へ
開業を通じて学んだのは、「応援してもらえる人」になることの大切さです。
お客様や仲間(友人やfreeeの方々)、家族からの応援が、苦しい時期の背中を押してくれました。
もし開業を考えるなら、いまの自分が応援される人物かどうか、どうすれば応援される人になれるのかを考えてみてください。これは私自身、今でも自問し続けているテーマです。
一緒に税理士業を盛り上げていけたら嬉しいです!
【執筆者プロフィール】
廣島元彦(ひろしま・もとひこ)
税理士。ひろしま税理士事務所代表。宮崎県日向市出身。27歳までマクドナルで勤務したのち税理士を志し、35歳で税理士登録・東京都板橋区にて独立開業。クラウド会計(freee・bixid)を活用した自計化支援や未来会計、事業計画づくりを得意とする。経営判断に役立つ、「未来の数字を可視化するシミュレーター」開発にも注力している。
著書に、『税理士になるための大学院進学ガイド』(共著、中央経済社)がある。
ホームページ: https://hiroshima-tax.com/
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中央経済社編『税理士になるための大学院進学ガイド』












