わたしの独立開業日誌 #税理士・丸尾和之
- 2025/10/16
- 独立開業日誌

はじめに
皆さん、こんにちは。開業税理士の丸尾です。
令和7年2月に税理士事務所を独立開業し、本稿執筆時点で8か月目となります。
今回「わたしの独立開業日誌」への執筆依頼を頂きました。
独立開業を夢見て税理士を志したものの、いざ独立開業の段となると受験予備校時代のようなテキストやマニュアルの類はなく、紆余曲折ありました。
今回はそれらを包み隠さずご紹介しますので、皆さんの税理士受験のモチベーション向上の一助となれば幸いです。

独立開業に至った経緯
元々独立開業を目指して税理士試験を受験していたこともあり、税理士試験合格後はタイミングを見計らって独立開業したいと考えていました。
そんな中、独立開業するにあたり一つ課題がありました。
住宅購入と独立開業のどちらを先にするかの決断です。
我が家は、私と妻と長男(現在8歳)と次男(現在4歳)の4人家族です。
元々賃貸マンションに住んでいましたが、子どもが大きくなるにつれて、家が手狭に感じるようになってきました。
そこで住宅購入に向けて住宅ローンについて調べてみたところ、審査上、サラリーマンの場合は年収ベース、個人事業の場合は所得ベースで3年分の黒字の実績が必要になるとのこと。
つまり、今独立開業すると最低3年は住宅ローンが通らないということになります。
しかも黒字が要件。
いかにサラリーマンの方が組みやすいかを痛感させられました。
妻は「家は3年後にする?」と言ってくれますが、住宅購入については税理士試験を受験していた時から話をしていましたし、これ以上は妻を待たせられないと思い、先に家を購入することを決断しました。それが昨年4月頃の話です。
そこから住宅購入に向けて行動し、8月頃に住宅の引渡しを受け住宅ローンが実行されたことで、独立開業に向けて行動できるようになりました。
そこで、翌年年初に開業できるよう、スケジューリングしながら準備を進めることにしました。
独立開業にあたって準備したこと
①情報収集
私の場合は、税理士試験合格後に入会した「近畿青年税理士連盟大阪支部(大阪青税)」の会合に参加し、独立した先輩方からリアルな体験談を聞くことで、独立開業に対して抱いていたぼんやりとしたイメージをより具体化していくことができました。
②退職(昨年9月~12月頃)
12月末の退職を考えていましたが、業務引継ぎ期間や有給休暇の消化を考慮して余裕をもって、退職予定の4か月前の8月末頃に上司へ告げました。
そして12月中旬を最終勤務日、12月末退職が決定しました。しかしながら、私の後任探しが難航し、業務引継ぎは11月に入ってからとなりました。
そこから1か月間、毎日9時から20時までみっちり引継ぎ対応が入ったせいで、平日は独立に向けた行動が全く行えず、開業日が1月から2月にずれ込む要因となりました。
③事務所探し(昨年8月~11月頃、家賃約8万円、礼金約11万円)
私の場合は、自宅開業は選択せず、事務所の賃貸一択でした。
仕事とプライベートをきっちり分けたかったのと、来客に対応するためです。
開業地は新居のある茨木市と決めていたので、休みの日の都度電車に乗って、茨木市にある不動産屋に足を運びました。
3軒回り、何軒か内覧をしましたが、しっくりくる物件がありませんでした。そんな中ふらっと入った4軒目の不動産屋で今の事務所に出会い、契約に至りました。

④事務所の内装工事(昨年12月~1月頃、約70万円)
契約した事務所は現状渡しで、床や壁がだいぶ劣化していましたので、内装工事が必要でした。不動産屋に紹介してもらった内装業者は、自身でレイアウトを指定する必要がある分、低予算で施工してもらえる業者でした。
インターネット上のオフィスレイアウトの事例を参考にしながら、手書きでレイアウト図を作成し、エントランスの造作壁の設置も依頼することとしました。

手書きのレイアウト図
⑤オフィス家具購入・搬入(1月頃、約35万円)
オフィス家具については、新品は値が張るため、主に中古のものを購入することにしました。中古のオフィス家具を取り扱う店舗に足を運び、様々な家具を見ましたが、意外と美品が多く、特にアウトレット品(展示していただけの未使用品)のコスパが良かったです。ここで、応接ソファーセット・机・椅子・本棚を購入しました。


⑥備品等の購入(昨年11月~2月頃)
・ノートパソコン(約33万円)
・複合機(約7万円)
・ロゴマーク作成(約13万円)
⑦資金調達(2月~4月)
⑥までの検討・準備に時間がかかり、融資の申込みが後回しになり、その結果、開業後の資金調達になりました。2つの金融機関から融資を受けることとなりましたが、いずれも知人から担当者を紹介してもらったので、手続きはスムースでした。
事務所の営業戦略や方針
誰もが気軽に相談に来られるオフィス
室内を土足禁止オフィスにすることで、清潔に保ち、よりリラックスした環境を提供しています。また、応接エリアは、ファミレス席を導入し、会議室よりも和やかな雰囲気を作りました。
顧問先様が安心して本業に専念できるようサポート
基本サービスとして「毎月対面」「記帳代行丸投げOK」を掲げています。毎月顧問先様とお会いすることで、タイムリーな財務報告と、経営者様の抱える心理的負担の軽減を可能としています。また、記帳代行を引き受けることで、顧問先様が記帳に割く時間をゼロにし、本業としてより価値を生む業務に専念いただくことをモットーにしています。
集客に税理士紹介会社を利用
税理士の場合、集客方法として、紹介(知人・金融機関・他士業)、ホームページ、SNS等が挙げられます。私の場合、最初の顧問先様は知人から紹介してもらいましたが、以後は税理士紹介会社を活用しています。成約時等に契約金額に応じた多額の紹介料を支払う必要はあるものの、数多くの見込み顧客を紹介してもらうことができます。融資の使途の大半をこの紹介料が占めています。また、税理士紹介会社HPに寄せられる税務相談に回答することで、メディア露出を徐々に高めています。
独立して苦労していること
業務と集客に充てる私自身のリソースの配分に苦労しています。
最初の顧問先様が3月決算法人で、2月に前任税理士から引き継いだため、1年分の記帳の見直しや、決算処理・税務申告書作成で5月末までかかりきりとなりました。
6月からようやく集客へ向けた行動に移せたものの、7月から知り合いの税理士事務所から業務委託案件を請け負い、6月決算法人の1年分の記帳代行、税務申告書作成で8月末までかかりきりとなりました。
そして、本稿執筆時点でようやくホームページの作成を進めています。
独立開業すると全て自分自身で行うこととなるため、単純に業務にかかる時間だけでなく営業や集客などにかける時間も考慮して仕事を請ける必要があるとしみじみと感じております。
おわりに
初めての独立開業で、紆余曲折を経ながらも、仕事をする時間が自由になったことで、トータルで考えるとメリットが多いように思います。資格取得後の将来への展望を考える際に、この記事を参考にしていただければ幸いです。
【プロフィール】
丸尾 和之(まるお かずゆき)
北摂マルニー税理士事務所 代表税理士
大阪府茨木市に事務所を構え、顧問先様が安心して本業に専念できるよう毎月対面・記帳代行丸投げOKをコンセプトとした税務会計顧問サービス提供しています。
1985年 大阪府吹田市生まれ
2008年 情報システム会社に入社、SEとして製薬業の顧客のシステム開発・運用保守を担当
2014年 税理士法人に転職、中小法人・個人の税務会計の実務を経験
2016年 上場企業子会社の経理シェアード会社に転職、経理の税務担当として大法人の税務会計、税務勉強会講師に従事
2022年 税理士試験官報合格(簿記・財表・消費・所得・住民)
2023年 税理士登録
2025年 北摂マルニー税理士事務所 開業
ホームページ:https://maruney.jp/
X:https://x.com/maruney_tax
丸尾先生が執筆した書籍はこちら