
平林黎(TAC公認会計士講座講師)
【編集部より】
近年増えている指定校推薦での大学進学。大学受験の経験がないため、会計士試験での勉強法に悩む受験生も多いようです。本連載では、受験生の悩みに日々接する平林先生にアドバイスをいただきました。
第1回 指定校推薦は陸上トラック競技、会計士試験はマラソン!?
第2回 ”漆塗りのお椀”を作るには?受験勉強のコツ
第3回 本試験当日もコツさえ押さえれば大丈夫!
前回は、受験勉強におけるちょっとしたコツを紹介しました。
・まずは全体像を掴む
・優先順位を知って、タスクを絞る
・間違いを恐れない
実は、本試験当日にも、同じコツが活きてきます。
受験に慣れていない指定校推薦の方にとっては、毎回のテストの機会を本試験当日と思って受けることや、普段のイメージトレーニングが重要です。
合格後も必要となるため、ぜひ意識してみてください。
まずは、全体像
知らない土地へ行く時、地図アプリの縮尺はどのように設定しますか。まずは駅から目的地までを大きく映して、ざっくりと道順を把握するはずです。
本試験当日も、まずは全体を俯瞰することが重要です。
通常、時間は足りません。
1問目から丁寧に取り組むと、終盤の簡単な問題にたどり着けなくなるおそれがあります。
また、論文式試験の場合、大問全体にストーリーがあり、後半の問題が前半の問題に関する間接的な指示になっていることもあります。
監査でも、同じです。最初から全件詳細に資料を見ていくのではなく、まずは概観して、注力すべき箇所はどこか?とリスク評価を行うのが鉄則です。ざっと短時間で全体を把握する力が備わっているか?現場に出ても大丈夫か?が試験でも問われています。
限られた時間で、得点を最大化する
本試験当日、計算で「時間があれば解けそう、手強そうだけと解きに行きたいな」という問題が沢山あるはずです。
ここで、時間内で優先順位を付けられるか?が試されています。
問題を正確かつスピーディーに解く能力を普段の自習で高めた上で、本試験当日は、数箇所は一旦飛ばすという心積もりをしておきましょう。
大事な勘所を外さなければ、合格に達します。
監査でも、時間に制約がある中で、「今この1時間、一体どの仕事を優先すればいいの?」と悩む場面が沢山あります。受験時に培った、素早い優先順位付けの習慣が活きてきます(受験勉強の時と同様、優先順位付けで困ったら、自分なりに方針を立てて同僚に相談)。
間違いを恐れない、執着しない
受験に慣れていない方からよく伺うのが、「自信を持って解いたのに、出した数字が選択肢になく、10分以上費やした」「こんな簡単な問題を間違えるわけにはいかないと思った」という失敗談です。
仮に間違えたとしても、その問題1つで合否が決まるわけではありません。難易度の見極めが誤っていて、後で見たら難問だった、ということもよくあります。焦らず、次の問題へ進んで冷静に対処しましょう。満点が必要な試験ではありません。
ちなみに、試験中に自分のミスに気づいて修正できた、というケースはあまり聞きません。仮に時間を充てて一から解き直しても、その問題で正答し直せる可能性は低いです。他の問題をサラッと正答して、得点を最大化しましょう。
監査でも、何か重要な事実が見つかれば、臨機応変に監査計画を変えていくものです。
おわりに
以上、最後まで読んでくださりありがとうございます。
今まさに、学習の進め方で悩んでいる方も多いと思います。本連載記事で紹介した、全体像を把握→優先順位付け→間違えを恐れないという受験勉強・受験当日のコツが、皆さんの日々の学習のヒントになれば嬉しいです。
第1回でも書きましたが、指定校推薦の方は会計士としての適性があると感じますし、コツさえ身につければ、上位で合格される方も多いです。
ぜひ志を果たして、その後も長く続く職業人生を元気に送ってほしいと願っています。
応援しています!
【プロフィール】
平林 黎(ひらばやし れい)
TAC公認会計士講座講師(フォローチーム主任、学習相談/学習法セミナー/受講生向け公式LINE/財務会計論-理論質問対応)
1986年東京都多摩市生まれ。国際基督教大学教養学部国際関係学科卒業。体調を崩し、公認会計士試験を一度撤退。
2014年独学で保育士資格取得後、公認会計士を再度志す。
2016年論文式試験に合格し、現職。
2020年以降、オンラインでの相談対応・セミナーを開始。
下記SNSで主に受験生に向けた情報発信を行っている。
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