【編集部より】
令和7年度の税制改正大綱が12月20日に公表されました。
主な内容は各種メディアでも報じられていますが、受験生が気になるのは「税理士試験に影響はあるの?」ということ。
そこで税理士の石川浩之先生に、令和7年度の税制改正が税理士試験(法人税法・消費税法・所得税法・相続税法)に与える影響を「影響度大☆☆☆~影響度小☆」でまとめていただきました。
令和7年度はどのような税制改正が行われるのか、受験予定の科目に影響はあるのかをチェックして、学習の参考にしてください。
石川浩之(公認会計士・税理士・不動産鑑定士)
法人税法
1.リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例の廃止(大綱P.74)【影響度☆☆】
新リース会計の導入に伴い、税務上も延払基準による処理が廃止されるため、リース資産の引渡し時に譲渡損益を一括で計上することになります。
実務的には、主にリース会社向けになりますが資金繰りの観点で大変重要な改正です。
延払基準を適用している法人は従来よりも益金の認識時期が早くなるので、まだリース料を受け取っていないのに先に税金を払わないといけなくなります。
個人に置き換えてみると、まだお給料をもらっていないのに5年分の税金を先に払ってくれと言われたら大変ですよね。
税理士試験でも重要性が高い理論のため、☆2つにしました。
2.中小企業者等に対する軽減税率の延長(大綱P.53)【影響度☆】
年800万円以下の軽減税率15%の適用期限が2年延長されます。
ただし、2点見直しがあります。
- 所得の金額が年10億円を超える事業年度は17%に引き上げられます
- グループ通算制度の適用を受けている法人は除外されます
実務上は重要な改正ですが、税理士試験で考えると重要性が下がるので☆1つにしました。
消費税法
リース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例の廃止(大綱P.80)【影響度☆☆】
新リース会計の導入に伴い、税務上も延払基準による処理が廃止され、リース資産の譲渡対価の全額がその引き渡しを行った日の属する課税期間における資産の譲渡等の対価の額に含まれます。
実務的には、主にリース会社向けになりますが資金繰りの観点で大変重要な改正です。
延払基準を適用している法人が従来よりも譲渡の時期が早くなるので、まだ消費税を受け取っていない(預かっていない)のに先に税金を払わないといけなくなります。
税理士試験でも重要性が高い理論のため、☆2つにしました。
所得税法
1.物価上昇局面における各種所得控除の見直し(大綱P.20~21)【影響度☆☆☆】
物価上昇に伴う税負担の調整のため、各種所得控除の一部が引き上げられ、通称103万円の壁が123万円になります。
- 基礎控除の引き上げ
合計所得金額2,350万円以下の個人は控除額が10万円引き上げられ58万円になります(現行48万円)
- 給与所得控除の引き上げ
給与所得控除について、55万円の最低保障額が65万円になります。
- 特定親族特別控除(仮称)の新設
同一生計の19歳以上23歳未満の扶養親族が居る場合、その親族の合計所得金額が123万円以下のときは(配偶者特別控除のように)一定の金額を控除することができます。
問題文の最後に控除額の表が出ると思いますので細かい金額は覚える必要はないですが、今年一番ニュースになっていた内容で試験に出そうなため☆3つにしました。
2.住宅ローン控除の子育て支援(大綱P.28~29)【影響度☆】
特例対象個人(夫婦のいずれかが40歳未満の者または19歳未満の扶養親族を有する者)が認定住宅等の新築等をして令和7年中に入居した場合に控除対象借入限度額が上乗せされます。
住宅ローン控除自体は実務上重要性の高い制度ですが、今回の改正は控除対象限度額が上乗せされたもので税理士試験上の重要性は高くないと考え、☆1つにしました。
相続税法
1.直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の延長(大綱P.39)【影響度☆】
適用期限が2年延長されます。
元々あまり人気がない制度で廃止が検討されていましたが、延長されることになりました。
実務上も税理士試験上も重要性は高くないと思いますので☆1つです。
2.事業承継税制の見直し(大綱P.39)【影響度☆】
個人版の事業従事要件と法人版の役員就任要件がともに、贈与の直前において(現行:贈与の日まで引き続き3年以上)満たしていれば適用できることになります(令和7年1月1日以後の贈与より適用)。
実務上は重要性が高い制度ですが、3年縛りが緩和されただけなので☆1つにしました。
◆執筆者紹介
石川 浩之(いしかわ・ひろゆき)
公認会計士・税理士・不動産鑑定士
石川公認会計士・税理士・不動産鑑定士事務所 所長
北海道札幌市出身、沖縄県那覇市在住。
ボクシングの世界チャンピオンを目指す、背筋力MAX300キロ➡交通事故で断念➡公務員➡公認会計士合格➡相続税専門税理士法人➡開業。
【相続税専門にした理由は3つ】
・幅広く仕事をしてきた中で相続税の仕事が1番面白かった
・相続は涙ながらに喜んでくれるお客さまが多くてやりがいがある
・沖縄にも優秀な税理士の先生はたくさん居るけど、相続税が得意な税理士の先生は少ない
【事務所の経営理念】
・お客さまに最高のサービスを適正な価格で提供する
・沖縄で優秀な人材(税理士)を育成する
【趣味・好きなもの】
・ピアノ、ZARD・安室ちゃん・TWICEとココイチとラーメン