新山高一(東京CPA会計学院講師)
【編集部より】
さる11月29日(金)、令和6年度税理士試験の合格発表が行われました。合格発表をうけて、受験戦略を再検討する人、同じ科目の受験に再挑戦する人などさまざまだと思います。
来年の本試験まで、どのように学習計画を立てればよいかなどについて、主要科目ごとにアドバイスを頂きます。本記事を参考に、合格に向けてよりよいスタートを切りましょう!
例年に比べて高めの合格率
今年の本試験は、例年に比べて合格率が高かったため、合格するかどうか微妙だった人も合格したという人が多かった印象でした。
一方で、計算で引っかけ問題があったことから、そこで引っかかってしまい、悔しい結果となってしまった人もいました。
基本的な部分でしっかりと解答でき、引っかけ問題で引っかからなかった人が順当に合格できた試験だったのではないかと思えました。
来年の受験に向けたアドバイス
合格発表を受けて、令和7年度(第75回)税理士試験に向けて再スタートをする人もいるかと思います。
来年の本試験までの学習をどのように取り組めば良いかをまとめていきます。
慢心しないこと
今年の本試験は、例年に比べて合格率が高かったですが、これが今後も継続するとは考えにくいです。
来年の本試験からは、従来の合格率に戻ることが十分に考えられます。
従来の合格率に戻れば、合格者数が減るということになります。
「自分はあと少しだったから大丈夫だ」と慢心してしまうと、来年も同様の結果になりかねません。
慢心せずに学習に取り込むことがまずは大事です。
理論の精度をしっかりと高める
ここ最近の本試験では、理論問題に関し、基本的な取扱いを解答させる問題や事例形式の問題が出題されています。
事例形式の問題は、取扱いはわかるものの、どのように解答すれば良いのかわからない問題が出題されたり、取扱い自体が難しい問題が出題されたりしています。
そのようなところで点数に差がつくことは考えにくいです。
点数に差がつくのは、基本的な取扱いを解答させる問題でしょう。
基本的な取扱いを解答させる問題でしっかりと解答するために、理論の精度を高める学習をすることが重要といえます。
年内で学習する計算項目を再確認する
計算に関しては、難解な取扱いの取引が出題されることはだいぶ減りました。
逆に、基本的な論点を中心として、その論点でもさらに基本的なところを出題する傾向にあります。
年度によっては、年内の学習内容だけで全部解けそうな問題もあります。
そうなると、年内で学習する内容も、今の試験においては非常に重要といえます。
結果待ちだった受験生は、年内で学習する内容がおろそかになりがちです。
時間がある今のうちに、個別問題集などで再度確認するようにしてください。
条件によって取扱いが変わる論点をしっかりと確認する
法人税法では、条件によって取扱いが異なる取引が多々あります(今年の本試験では、寄附金と給与や交際費)。
どんなときに寄附金になるのか、給与になるのか、交際費になるのかといったその条件の違いをしっかりと確認しましょう。
このあたりの論点は、わかっているつもりがわかっていないことが十分にあります。
また、問題を解いて間違えても、分岐点となる要件の確認がおろそかであれば、再度解いたときにまた間違えます。
取扱いの分岐点となる要件をしっかりと確認しましょう。
問題文をしっかりと読む
ここ最近の本試験の計算では、法人の事業年度が9ヶ月しかなかったり、5月末決算の法人だったり、資本金5億円以上の法人によって完全支配されている法人であったりと、やや特殊な法人の取扱いが出題されています。
思い込みで解答すると、間違えてしまう問題です。
これに関しては、問題をたくさん解いても対策しようがありません。
常日頃から思い込みで解かない意識をすることが大事です。
税制改正を前もって確認する
理論にしても計算にしても,ここ最近の改正論点を出題してきています。
受験予備校の講義では、5月くらいに最新の税制改正は取扱いますが、年末ぐらいに税制改正の大綱の概要は公表されるため、前もって一通り確認しておくとよいでしょう。
そうすると、改正の講義も余裕が出て、他のことに時間を割けます。
ぜひ目を通しておきましょう。
おわりに
ここ最近の本試験は、基本的な論点から特殊な論点まで幅広い論点から出題されています。
ただ、合否の分かれ目は、「基本的な論点でしっかりと点数を取ること」です。
毎年のように言われることですが、「基本的な取扱いをまずはしっかりと押さえる」ことが、非常に大事です。
基本を忘れずに学習していくことが大事であることを念頭に置き、来年の本試験に向けて頑張っていってください。
【プロフィール】
新山 高一(にいやま・こういち)
東京CPA会計学院卒業。卒業年の翌年に税理士試験に合格し、その後、同校の講師として、主に法人税法を中心に指導を行っている。初学者でも法人税法がわかりやすく理解できるように、日々奮闘している。
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