大手監査法人のシニアマネジャーってどんな仕事?(前編)


【編集部より】
公認会計士試験合格者の大半が大手監査法人への就職を志望する一方で、監査法人離れが進んでいるともいわれています。また、公認会計士という資格の魅力の一つとして、キャリアの多様性が挙げられることも多くなりました。
そこで今回は、“大手監査法人のシニアマネジャー”にフォーカスし、「監査でキャリアを積むこと」について、有限責任監査法人トーマツ(以下、トーマツ)の種田翔太先生にお話を伺いました!

Interview:種田翔太先生(有限責任監査法人トーマツ監査・保証事業本部 シニアマネジャー 公認会計士)

監査プロジェクトのリーダーと人財育成

―トーマツに入社以来約15年、監査の仕事を続けられている種田先生に、大手監査法人のシニアマネジャーが普段考えていることなどをお聞きします。
まず、前提として、「シニアマネジャー」というのはどういった役割なのでしょうか。

種田先生 監査法人では、経営層であるパートナー以外は基本的に「職員」といわれ、その中で、シニアマネジャーとマネジャーはいわゆる「管理職」にあたります。
マネジャーとの比較という観点からいえば、シニアマネジャーは責任や権限の範囲がより広く、深い位置づけになります。
たとえば監査の現場では、より社会的な影響度の大きい会社、各業界を牽引する大企業の監査においてプロジェクトリーダーを担います。

また、パートナーが経営層であることとの関係性でいえば、シニアマネジャーは監査法人の経営に貢献するという立場にあります。
監査法人にとっては当然、「監査の品質」がもっとも大事であり、その品質を確保するための重要な要素として「人財育成」が欠かせません。そのような側面も含めて、より組織に広く、深く貢献をすることもシニアマネジャーの役割だと考えています。

インタビューを実施したトーマツ東京事務所にて

―大企業の監査プロジェクトリーダーとしての役割という点で、現在はどのようなチームをまとめられていますか。

種田先生 全国展開する国内企業を中心として大手複数社の監査を担当しています。
監査プロジェクトのメンバー構成は各企業の規模によって変わりますが、大手企業の場合、企業グループを構成する国内外の会社数が多かったり、事業内容が複雑かつ多岐にわたったりすることも多いため、監査チームの規模も相応に大きくなります。

監査プロジェクトを達成するために、税理士、IT専門家、弁護士、年金数理人、企業コンサルタントなど必要となる特定分野の専門家とも幅広く連携し、必要な知見を収集・活用しながら、多種多様なメンバーの知見と経験を最大限に発揮できるようプロジェクトを管理しリードすることが重要な役割になります。

―ちなみに、秋頃の今はどのような業務をされているのですか。

種田先生 今は3月決算企業であれば四半期レビュー、年度監査計画の立案や内部統制の検討の時期になります。繁忙期は通常4〜5月ですが、最近は「監査の変革期」と言われ、各企業でデジタル化が進む中、監査する立場として私たちも理解をしっかり深めて、より先取りして期中を通じて対応する必要があります。
そのため、監査法人としてもインフラ整備や監査のやり方を変えるという大きな波の中にあり、昨今は監査の要求水準も非常に高まってきているので、チームメンバーは今、求められる要求水準を満たすためにより高度なデータアナリティクスの導入など必要となる取り組みに邁進しています。

コミュニケーションなしに監査はできない

―シニアマネジャーのもう一つの役割として、人財育成の側面もあるとのことですが、日頃から心がけていることは何かありますか。

種田先生 せっかくトーマツに入社してきてくれているので、公認会計士としての仕事の面白みを念頭に置き、それぞれがその思いを醸成できるようにするにはどうしたらよいかを考えながらメンバーと向き合うようにしています。
ただし、これは短期的なものではありません。中長期的な志にもつながるだろうと思っています。

どんなビジネスにも共通すると思いますが、特に監査はチームプレーで、メンバーそれぞれの強みや得意分野を生かして、チーム力を発揮することで、より大きなプロジェクトを達成することができる仕事です。
それぞれの強みを発揮し、それらを調和させながらチームとして高いパフォーマンスを発揮していくことが、企業からの信頼にもつながり、より付加価値を提供していけると、個人的には考えています。だからこそ、「人と人との繋がり」がとても大事なのです。

―どちらかと言えばクールな仕事のイメージが強かったのですが、印象が変わりますね。

種田先生 監査“Audit”は「聴くこと」が語源となっていて、監査人には「聴く能力」が強く求められます。
その力は、メンバー間のやりとりといった対内的なコミュニケーションや、企業の経営者や担当者とのやりとりといった対外的なコミュニケーションの双方を通じて研磨されていくものと考えています。
そのためにも、お互いを適切に理解し対話を繰り返しながら、しっかりとチーム内や法人内、対企業での信頼関係を築くことが大切なのだと思います。

さらに言えば、監査はコミュニケーションなしには絶対に達成できません。各メンバーが相対する企業やその担当者の方との信頼関係を個々に築くこともとても大事なことです。
個々の積み上げが全体としての信頼関係の強化につながっていきます。そのようなことを念頭に置いて、相手に積極的に働きかけることを積み上げていけば、それぞれの成長速度も加速して高まるであろうと考えています。

約15年監査の仕事を続けて感じる醍醐味

―トーマツに入社以来、一貫して監査部門でキャリアを積まれているということですが、監査をどのように捉えていますか。

種田先生 少し大きな話からすると、大前提として「自分がどういう人生を歩みたいか」をしっかりと考える必要があると思っています。

社会で生きるということは「多くの人たちによい影響を与えられること」が非常に重要だと考えていて、それは世間的に言われる「社会貢献」ということかもしれません。
それとともに、「次の世代にしっかりとつなげていくこと」も大事だと思っています。

そのような自分の人生観を仕事に当てはめたとき、監査というのは「公認会計士の主たる業務」で、重要な社会的インフラとしての機能があります。
この仕事によって、多くの人たちや経済社会に大きな良い影響を及ぼすことができるので、すごく貴重なやりがいのある仕事だと感じています。

監査は保証業務であり年度では「監査報告書」を発行することがゴールではありますが、その過程を通じて各企業と対話を行うことで、助言・指導機能も発揮していかなければなりません。
たとえば、内部統制の構築・運用において企業に対して一定の改善提案を行うなどといった活動を通じて、年数が経つにしたがい、その企業の成長にも貢献し、社会全体にも好循環を及ぼすことができる可能性があります。
これは、私たちの大事な役割の一つであり、助言・指導機能をしっかりと発揮していくことは非常に重要な要素だと考えています。

―そのようなやりがいを感じられるようになったきっかけは何かあるのでしょうか。

種田先生 私の場合は、学者であった父の勧めで公認会計士を目指すことになったのですが、受験することになったときも、試験に合格した後にも、公認会計士像を具体的に描けていませんでした。
そんな状態でトーマツに入社し、最初はさまざまな業種の企業を見る機会が多かったので本当にがむしゃらで、自身の経験値が低かったこともあり、踏ん張りをきかせないといけない時も当然ありました。

それでも、「なぜ仕事にやりがいを感じられたか」というと、やはり人間関係・つながりも大きいです。
優秀な良い先輩や後輩たちに恵まれ、困難な道のりがある中でも、監査プロジェクトを一緒に一つひとつ達成していくことで、法人内はもちろん企業との間にもベースとなる信頼関係が構築されていきました。
それをどんどんつなげていくことで、良い循環が生まれ、インフラとしての機能を発揮することで広く社会に働きかけられるのではないかと考え、それがやりがいに感じられました。

―後編では、監査の仕事が面白くなった時期と現在の監査離れといわれる状況などについてお聞きします!

(後編へつづく)

<お話を聞いた人>

種田 翔太(たねだ・しょうた)先生

有限責任監査法人トーマツ 
監査・保証事業本部 第一事業部 監査第三部
シニアマネジャー
公認会計士

2008年12月に監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)に入社、国内監査事業部で監査に従事し多種多様な業界での監査を経験してきた。監査と並行してアドバイザリー業務や上場に向けたアドバイザリー、配員調整業務など周辺業務も経験を有する。現在は大手企業複数社に対して監査プロジェクトのリーダーを中心に担っている。多くのヒトと連携し、監査を通じてヒト、組織、社会に好循環をもたらすことを志して日々取り組んでいる。


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