わたしの独立開業日誌 #会計士・東屋圭逸


【編集部から】
士業の魅力は、独立開業できることにもあります。「将来は独立」を目標に合格を目指している方も多いのではないでしょうか。
そこで、「わたしの独立開業日誌」では、独立した先輩方に事務所開業にまつわるエピソードをリレー形式でお話しいただきます(木曜日の隔週連載)。
登場していただくのは、税理士・会計士をはじめ、業務で連携することの多い士業として司法書士や社労士などの実務家も予定しています。
将来の働き方を考えるヒントがきっと見つかるはずです。

アパレル企業で社会人を経験してから会計士試験に挑戦

はじめまして。
大阪府大阪市で公認会計士・税理士事務所を経営している東屋圭逸(あずまや けいいつ)と申します。

大学卒業後、アパレル企業のトゥモローランドでの勤務を経て、公認会計士試験に挑戦しました。
合格後、監査法人に入所して、会計事務所を経て2021年1月に独立開業しています。

アパレル企業を経験してからの会計士受験は、少し珍しい経歴かもしれません。
私の経験が、大学生や受験生、独立を考えている方の参考になれば幸いです。

普段はラフな服装で仕事をしています。

セレクトショップでの販売に明け暮れ、簿記とは縁遠かった学生時代

大学時代は朝からパチンコ屋でスロットを打っているか、セレクトショップで洋服を売っていました。

大半が簿記3級を取得するような学部に所属していたのですが、上記のような学生生活だったので、受けたことがありませんでした(ちなみに今でも簿記3級はもっていませんが…)。
大学の単位取得もギリギリで、簿記についての知識は皆無でした。

大学卒業後は、そのままセレクトショップに就職し、店頭に立っていました。
アルバイト時代から数えると、合計で4年ほどアパレル業界で働きました。

「将来は洋服屋をやりたい」「独立した先輩を助けたい」税理士になろうと思い立つ

セレクトショップで働く間、独立して自分の店を持つ先輩もいました。
そのような先輩を見ているうちに、「自分も将来は独立して洋服屋をやりたい」と思うようになりました。

その先輩が、「仕入などは展示会などでの経験があるけど、お金のことはよくわからない」と言っていて、ふと、「それなら自分が税理士になって、独立した先輩を助けつつ、自分でも洋服屋をやったら絶対楽しいやろな~」と思ったのです。
そして、「若いうちに税理士資格を取ろう!」と、そのアパレル企業を辞めました。

早速、専門学校に申し込みをしに行くと、受付の人に「公認会計士になったら、税理士資格も登録できる。今は公認会計士試験が受かりやすい(2009年合格発表の情報による)」と言われました。

その真偽について、公認会計士になった高校時代からの友達に聞いてみたところ、「その通りだ」と言われたので、公認会計士試験に転向しました。

監査法人ではアパレル企業の監査を担当することも!

公認会計士試験合格後は、監査法人トーマツに就職しました。

アパレル企業での勤務経験があったためか、アパレル企業の監査を1年目から担当したり、3年目からはIFRSアドバイザリー事業部と兼務し、1ヵ月のカナダ語学留学にも参加しました。

とても充実した監査法人ライフを過ごすことができて感謝していますし、監査法人時代の経験や人との繋がりは今でも重宝しています。

ちなみに、監査法人時代にアパレルでの起業がいかに難しいかを痛感し、「洋服は趣味にしよう…」という考えに至りました。

「もっと税務に詳しくなりたい!」と会計事務所に転職

IFRSクライアントの対応をしていても、税務について質問を受けることがあります。
ある時、地方税の申告書についてクライアントに質問され、恥ずかしながらさっぱりわかりませんでした。

「アパレルの先輩を手伝いたくて勉強を始めたのに、これでは力になれない…」「もっと個人事業主や中小企業を助けられるようになるために、税務に詳しくなりたい」と思うようになり、会計事務所に転職をしました。

その後、会計事務所で2年間経験を積み、2021年1月に独立しました。

独立について

独立にあたって決めたこと

独立することを決めたとき、多くの公認会計士が悩むのが「どこの監査法人で非常勤をするか」だと思います。しかし、私は「非常勤をせずに乗り切る」と決心しました。
お金の面では非常勤をするほうが安心ですが、創業融資を受ければ済む話です。周りを見ても、非常勤をせず、独立初期の苦しい時にひたすら試行錯誤をした公認会計士のほうが、ゆくゆくうまくいっているようにも思えたからです。

初期投資について

ノートパソコン等は当たり前として、独立時に悩むのは「申告ソフト」と「事務所を借りるか」でしょうか。

私は、申告ソフトは「達人」を選びました。少し高めですが、周りで使ってる人が多かったのが理由です。わからなければ、ご飯を奢る代わりに教えてもらおうと思っていましたが、実際は運営会社のサポートがかなりしっかりしていて、良くサポートセンターに電話して教えてもらっています。

事務所に関しては、独立当初から約15坪と広めのところを借りました。「名刺に住所がないと信用されないかもしれない」という昭和的な考えからです(実際に、「名刺に事務所を書いているので安心して依頼できた」と言われたことが1件ありました)。
いずれ従業員を雇うつもりでもいたので、広めの物件を選びました。

賃料が高めの事務所を借りることで、もちろんキャッシュフローは悪くなりますが、「そのための創業融資だから」と割り切って考えました。

営業について

独立してから、お客様に認知してもらうためにHPを作り、ブログを更新したり、インスタをしたり、Google広告を出したりしました。

効果はほぼゼロ。
半年経った頃、「大きめのクライアントからの依頼は紹介が多く、弱小個人事務所のHPからは依頼は来ないのでは? 自分の経歴からも、税務のことが全然わからない”ひとり社長”の気持ちが良くわかるし、HPではターゲットを”ひとり社長”に絞るべきでは?」と気づきました。

そこでHPをカジュアルな雰囲気に変えました。さらに、ブログの記事も”ひとり社長”が困っているであろうテーマを集中的に書きました。

カジュアルにしたホームページ

すると、徐々にですが、検索→ブログ→問い合わせの動線ができ始め、2023年9月ではHPからの問い合わせが4件、成約3件と好調に推移しています。
公認会計士試験の経営学で、SWOT分析やターゲティングを学びますが、実務でも本当に重要だと痛感しました。

私が意識的にカジュアルな服装での写真をHPに載せているせいか、お客様のほとんどが、お問い合わせ後の初回面談のさいにカジュアルな私服で来られます。これも、弊所の特徴かもしれません。
お金のことを少しでも身近に考えてほしいので、こういったことで、「専門家に相談する」というハードルをできる限り下げられるといいな、と思っています。

もちろん、この方針が合わないお客様もいるとは思いますが、それは弊社のターゲティングのせいですので、気にしなくてもいいかなと思っています。

これから

独立してからの3年弱で、「アパレル時代の先輩を手伝う」という当初の目標も達成できました。
また、縁あってファッションビジネスに関連する大学で、非常勤講師として「会計入門」を担当しています。

これからは”ひとり社長”のサポートをしつつ、もう少しアパレル関連の仕事も増やしていきたいと考えています。

<プロフィール>
東屋圭逸(あずまや・けいいつ)


東屋圭逸税理士事務所代表。
1985年大阪で生まれる(独立とは関係ないですが、双子です)。2008年神戸大学卒業後、株式会社トゥモローランドへ入社。
2010年株式会社トゥモローランドを退職し、公認会計士を目指す。2011年公認会計士試験に合格し監査法人トーマツへ入所。2019年会計事務所へ転職。2020年より現職。2022年より大阪府内のファッションビジネスに関連する大学にて非常勤講師として「会計入門」の授業を担当。

ホームページ:https://az-kaikei.com/

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