🍀春休みに本を読もう!太田裕貴先生(静岡産業大学)がオススメする課題図書📚


【編集部より】
新年度が始まりました。この春から「会計の勉強を始めよう」と考えている人も多いのではないでしょうか。
そこで、本企画では、学者・実務家など6人の読書愛好家から、会計人コースWeb読者の皆さんにオススメする「春休みの課題図書」をご紹介いただきました(1日お一人の記事を各週で掲載します・順不同)。
受験勉強はもちろん、仕事や人生において新しい気づきを与えてくれる書籍がたくさんラインナップされています。ぜひこの機会にお手にとってみてください!
今回の記事では、太田裕貴先生(静岡産業大学准教授)に課題図書をお薦めいただきました!

春は新しいことを学びたくなる季節です。新しい学びとして財務諸表分析はいかがでしょうか。
これまで簿記を学習されてきた方にとって貸借対照表や損益計算書は聞いたことがあると思います。
ただし、これらの財務諸表をどのように読み解けばよいのか、について「わからない」という方もいらっしゃるかもしれません。
今回は財務諸表分析の基本をレクチャーしてくれる書籍2点を紹介します。

オススメ①『財務諸表分析 8版)』桜井久勝著、中央経済社

私が本著と出会ったのは大学のゼミでした。
本著には貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の仕組みについて丁寧な解説が書かれています。
加えて、本著を活用することで、収益性、安全性、生産性、不確実性、および成長性の5つの側面から財務諸表を分析する方法を学ぶことができます。

ゼミでは、当時のキリンHDとサントリーHDの経営統合に向けた会談を題材として「飲料業界におけるキリンHDのベストな経営統合相手はどの会社か?」を探究しました。
この探究に財務諸表分析は欠かせませんでした。
本著のお陰で関心を寄せる企業を多角的に考察することができました。
そして、教員となった今、財務諸表分析を学生に教えるときに大変重宝しています。

オススメ②『財務諸表分析 3版)』乙政正太著、同文舘出版

本著も桜井先生の書籍と同様に財務諸表分析の基本が丁寧に学べる一冊です。
本著で個人的に好きなのは「利益マネジメントと財務諸表分析」の章です。
利益マネジメントとは、「経営者がある目的を遂行するために会計利益をコントロールしようとする裁量行動」(289頁) のことを言います。
減価償却費の算定方法のように、複数の会計処理方法が認められている場合、経営者は何らかの動機に基づいて会計処理方法を選択することになります。
本著は利益マネジメントの方法や経営者の動機が整理されています。
また、利益マネジメント行動の検出方法としてアカデミックの世界で頻繁に利用されているアクルーアルズ (会計発生高) の算定についても紹介されています。

財務諸表で報告される会計数値がもしかしたら経営者によって操作されているかもしれない。
本著を読みこむことで、財務諸表分析における新しい視点を持つことができます。

さらに学びを深めたい方へ

皆さんの中には「基本的な財務諸表分析の方法は知っている」と言う方がいらっしゃるかもしれません。
より学びを深めたい方は『企業会計 (2022年8月号)』の特集をオススメします。
この特集のタイトルは「財務諸表分析の未知なる可能性」となっています。
前述した書籍にはほとんど触れられていない最先端かつ高度な内容が掲載されています。
アカデミックで議論されている内容の一端に触れられる貴重な機会になると信じています。

最後に、『実証会計・ファイナンス:Rによる財務・株式データの分析』(新世社) をご紹介します。
財務諸表分析は数社程度の企業に焦点を当てることが多いかもしれませんが、大規模サンプルを対象とした分析を実施したいと思われる方も中にはいらっしゃるかと思います。
その際、おそらく何らかの統計ソフトを利用することになりますが、本著ではRを利用した財務データの分析方法が学べます。
Rの基本的な機能から丁寧に解説されているので、自分のペースで学びを進めていくことが可能です。
私もゼミ生と一緒に本著を利用して学んでいます。

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読者の皆さんがそれぞれの関心に合わせて学びを深めていただければ嬉しいです。

(著者紹介)
太田 裕貴
(おおた ゆうき)
静岡産業大学経営学部准教授 博士(経営学)大阪市立大学
2016年大阪市立大学大学院経営学研究科後期博士課程修了。2015年4月大阪経済法科大学非常勤講師を経て、2016年4月より静岡産業大学情報学部専任講師、2021年4月より現職。
主な論文に、「経営者交代後の在職期間と設備投資の関連性」『証券アナリストジャーナル』第57巻第12号、2019年、「コーポレートガバナンスが経営者による負債の満期選択に与える影響 : 実証研究の証拠に注目して」『産業経理』 第82巻第1号、2022年、「財務諸表情報を用いた投資の効率性の推定」『企業会計』第74巻第8号、2022年、他多数。


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