【税理士試験 財務諸表論】「出題のポイント」公表を受けて:令和5年度試験で合格するために今からすべきこと


【編集部より】
さる10月7日(金)、国税庁ホームページにおいて税理士試験「令和4年度(第72回)税理士試験出題のポイント」が公表されました。
これを受けて、令和5年度税理士試験を受験される皆さんは、今後どのような取り組みをするとよいのでしょうか。
本記事では、【財務諸表論】について、加茂川先生(税理士・TAC講師)にアドバイスをいただきました。

加茂川悠介(税理士・TAC講師)

「令和4年度の出題ポイント」を受けて

本試験を受験された方々、お疲れさまでした。税理士試験「令和4年度の出題ポイント」を受けて簡単に本試験を振り返ってみたいと思います。

第一問】―令和4年度の出題ポイント

多くの専門学校が出題予想に挙げていた「収益認識基準」が出題されました。新基準ということで話題性もあり、多くの受験生が対策を練って本試験に臨まれたことでしょう。しかし、すべての設問に正答することは難しかったように思います。

「令和4年度の出題ポイント」からは基本的な論点を出題している旨がうかがえるものの、取捨選択、つまり「得点すべきところを漏れなく正答できたか」が鍵となったと思われます。
具体的には、問1の空欄補充問題や問2(1)の空欄補充問題、問2(2)の並び替え問題、問2(3)②および③の選択肢問題、問3(1)の空欄補充問題、問3(3)①の用語を問う問題です。
これらについては多くの受験生や専門学校が対策をしていたと思われるため、取りこぼすことなく得点を積み上げたかった箇所と考えられます。

第二問】―令和4年度の出題ポイント

第二問は第一問と異なり、あまり受験生が想定できていなかったであろう「総合償却」についての出題でした。第一問同様、「令和4年度の出題ポイント」からは基本的な論点の出題であることはうかがえるものの、多くの受験生にとって解答するのが困難だっただろうと思われます。

近年の簿記論で「総合償却」が出題されていたことから、一部の簿記論学習者には有利に働いたようですが、そこまで得点に差がついたようには思われません。具体的には、問1(1)の空欄補充問題や問2(1)の計算問題を取りこぼすことなく、正答できたかが鍵となりました。

第三問】―令和4年度の出題ポイント

全体的には例年通りのオーソドックスな問題だったと思います。第三問の計算問題については、過去の本試験問題や専門学校等の計算問題集を何度も解くことが効果的だっただろうと思います。

個々の論点に関してもそこまで難しいと思われるものはなく、これまで積み上げてきた実力を大いに発揮できたかが鍵となりました。注記に関しても、B/S注記とP/L注記という定番の出題で、すべてを正答することも可能だったと思われます。

唯一、例年と異なった点は何といってもボリュームの多さでした。「第三問にどの程度時間を割くことができたか」が合否の分かれ道だったように思います。

令和5年度試験で合格するために今からすべきこと

簡単ではありますが、ここまで本試験を振り返ってきました。今回の本試験から今後の学習において3つのアドバイスがあります。

まず、第一問で検討したように「空欄補充問題」で正答することが鍵となります。今回の本試験もそうであったようにほとんどの本試験の場合、空欄補充問題は選択肢がなく会計基準など原文通りに解答できるかがポイントです。これは一夜にしてできるようなことでは決してなく、日々の努力の積み重ねが重要だろうと思います。

次に、第二問で検討した問2(1)の計算問題を落ち着いて正答できたかという点です。第二問は多くの受験生が準備をしておらず、本試験当日、焦ったのではないでしょうか。
そのような状況でも、基本的な計算問題は確実に正答できる「計算力」が求められたように思います。計算力こそ、日々の鍛錬の賜物であり、財務諸表論の理論問題においても求められる力だと思います。最近の本試験の傾向として、比較的簡単な計算問題が理論問題の中で問われています。これらを確実に正答できるように、ゆるぎない「計算力」を身につけていきましょう。

最後に、合格をするためには「柔軟性」も必要だろうと思います。今回の本試験は第三問の計算問題が例年よりもボリュームが多かったので、第三問に多くの時間を割くことができた受験生は得点を伸ばすことが可能だったと思われます。

一般的には、理論問題解答時間が40分、計算問題解答時間が80分と言われたりしますが、本試験当日にある程度「柔軟性」をもって対応することが求められます。
日々の受験勉強は「自信」を持てるように一生懸命取り組むのですが、「これだけやったんだから絶対に合格できるだろう」と過信するのは危険です。
常にいろいろなケースを想定しながら、日々の勉強に励んでもらいたいと思います。

「いろいろなケースを想定する」ということで言えば、今回の本試験では理論の論述問題が難しくて、あまり書けなかったかもしれませんが、次回本試験は論述問題がたくさん出題されたり、それらが合否を分ける可能性もあります。
理論問題の論述対策もしっかりとしておきましょう。

【執筆者紹介】
加茂川 悠介(かもがわ・ゆうすけ)
税理士、CFP®。中央大学法学部、早稲田大学大学院法学研究科修了後、大手専門学校で教鞭をとる。その後、立命館大学大学院法学研究科で税法を学び、会計事務所勤務を経て、財務捜査官採用試験に合格。宮城県警退職後、資格の学校TAC税理士講座で講義を行う。現在、TACほか芦屋大学や近畿大学等でも講義を行い、日々、わかりやすい講義に向けて自己研鑽している。


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