わたしの独立開業日誌 #社労士・山本武尊


【編集部から】
士業の魅力は、独立開業できることにもあります。「将来は独立」を目標に合格を目指している方も多いのではないでしょうか。
そこで、「わたしの独立開業日誌」では、独立した先輩方に事務所開業にまつわるエピソードをリレー形式でお話しいただきます(木曜日の隔週連載)。
登場していただくのは、税理士・会計士をはじめ、業務で連携することの多い士業として司法書士や社労士などの実務家も予定しています。
将来の働き方を考えるヒントがきっと見つかるはずです。

介護業界に特化した社労士になる!

皆さま、はじめまして! 埼玉県で開業をしております社会保険労務士の山本武尊と申します。
本業は社会福祉士・主任ケアマネージャー(主任ケアマネ)として、介護の仕事をしています。具体的には、地域包括支援センターにてセンター長として勤務をしており、主に地域住民の介護の相談業務や介護保険を利用する方のケアマネジメント業務など、地域の介護の身近な相談窓口の対応から地域づくりまで、幅広い業務に対応をしています。
2020年に7回目の受験をしてようやく社労士試験の合格を手にした私が、開業(兼業)するまでの経緯や今後についてお話を共有できればと思います。        

開業時のプロフィール写真

長かった受験生時代

私は他の受験生の方と比べて要領が良いわけではありませんでした。
子どもが生まれた頃に始めた社労士試験も諦めがつかず、社労士受験の7年間で一通りの失敗はしてきたと自負しております。
社労士試験は1年に一度行われる試験ですが、試験には「選択式」と「択一式」の2形式あります。それぞれに設定された合格基準点をクリアしなければ合格できません。
合格する前の3年間は、選択式試験であと1点が足りなくて、その1点が遠く辛い日々が続きました。
今思うと、それでも私が社労士になることを諦めなかったのは、介護業界に貢献をしたいという想いが強かったからです。

受験生時代の合格後の目標

合格後から開業を決意するまで

あれだけ開業することを夢見ていたのに、念願の合格を果たした後、具体的な行動に移すことができませんでした。
「すべてを捨てて、もし上手くいかなかったらどうしよう…」と開業をすることへの不安が生じてきました。
そこで、開業の準備ということで、実務に関連する他資格の勉強(年金アドバイザー・メンタルヘルスマネジメント・給与実務計算等)に取り組みました。

しかし、むしろそれらの資格を取っても安心材料にはならず、不安を払拭できないまま「資格の勉強に逃げている自分」に気がつきました。
そこで、先輩社労士に相談をするなかで、「兼業」という働き方もあることを知り、精神的にも落ち着いて、開業へ向けて準備を始めることができました。

今振り返ると、私の事務所理念は介護業界特化に特化しているため、兼業という働き方でなければ、それこそ業界特化することは難しかったかもしれません。

「兼業」からの社労事務所開業スタート

そんな中で開業を決意した私ですが、兼業にもメリット・デメリットがあることがわかってきました。

兼業のメリット

業界に特化できたのも、兼業だからこそだと感じています。
ゼロからのスタートであれば、開業後に事業資金も底を尽き、やりたいことができなくなっていた可能性もあります。

兼業のデメリット

時間管理が難しいことです。とにかく時間がありません。
仕事も、社労士の通常業務(顧問業務)ではすぐに限界が来てしまうので、研修やセミナー講師などスポット業務で対応するなど工夫をしています。
また、顧問の依頼があった場合は、正直に兼業で事務所を運営していることを伝えた上で、別の社労士をご紹介するなど、お客様のご要望に応じて対応をしています。

そのような中で、介護事業経営コンサルの方とのご縁があり、単に社労士として介護業界に特化することで、業界の中から見える課題解決をする必要性が出てきました。

開業1年の振り返り

私には本業として介護の仕事があるので、積極的な営業はせずに、社労士としての実務経験を増やすために、支部の研修会に参加をしていました。
また、コロナ禍ではありましたが、逆にチャンスと捉え、Zoom等のオンラインミーティングの積極活用をしました。
時間管理に課題がある私にとっては、まさに追い風になりました。
平日の夜はオンラインミーティングや研修等で少しずつ予定が埋まるようになってきました。

今振り返るとまだ運が良かったのかもしれませんが、それでも想定外のできことが次々に起こりました。
SNSで知り合った方とリアルでお会いしたことがきっかけで、介護記事の監修依頼やセミナーの依頼につながりました。

また、社労士のつながりで介護業界を取り巻く環境や処遇改善加算の手続きをきっかけに介護業界に興味をもっていただきたいことをオンラインセミナーで200名の社労士の前でお話をするという、貴重な経験ができました。

その他にも、仕事と介護の両立支援というテーマでは、産業ケアマネとして企業と従業員の架け橋となれるようにセミナーを行う予定です。

業界に特化することで、「介護業界と言えば私」と思い出していただくことで、他の社労士からご紹介をいただくことや、介護アドバイザーとして他の社労士と一緒に関わることができています。
結果として、開業当初に想像をしていた未来とは別の景色を見ることができました。

ウェビナーの様子

今後について

現職を辞めるという選択を考えられるようになった

当初は、兼業というスタイルでの自己実現の予定ではありましたが、介護というニッチなテーマでも、今後の社会ニーズに合致した取り組みができることを確信することができました。
まだ収入面で安定していないこと、本業の職場での人間関係も大事にしたいという理由はありますが、「3年以内の完全独立を目指していきたい」という気持ちに変わりました。

介護という切り口でも社労士の枠を超えて働いていきたい

社労士の独占業務や顧問先との関係は大事であり、基盤となることは間違いないですが、介護業界に特化をしたのであれば、社労士というその枠を超えた活動をしていきたいと思っています。
具体的には、「仕事と介護の両立」「介護離職防止」というテーマや外国人労働者(特定技能・技能実習)の受け入れなど、日本の介護業界の課題に対して、自分がどんな貢献できるかも考えていきたいです。

すべてのご縁とご恩に感謝

ここまでは全て私の力ではなく、私を活かして下さる方、応援をして下さる方とのご縁や御恩によるものだと思います。
開業2年目を迎えた現在では、周囲へ感謝を忘れずに、自分のやりたいことを少しずつカタチにしていきながら、さらに飛躍ができるように精進をしていきます。

【執筆者紹介】
山本 武尊(やまもと たける)

社会保険労務士・社会福祉士・主任ケアマネージャー。
介護現場の最前線で業務をすると共に、介護業界の低待遇と慢性的な人手不足の課題解決のため介護に特化した社会保険労務士として開業。
現在は介護関連の執筆・監修者、介護事業所向け採用・教育・育成や組織マネジメントなど介護経営コンサルタントとしても幅広く活躍中。
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