【令和4年公認会計士試験(第Ⅱ回短答式)】自己採点で合格ラインに届かなかった受験生が、再スタートをきるため今するべきことは?


井上 修
(福岡大学准教授・公認会計士)

つらいときこそ踏ん張りどころ

短答式試験後、自己採点をして合格ラインに届かず、「これからどう勉強したらよいのか」「このまま受験を続けてよいのか」と思い悩み、勉強がなかなか手につかない受験生も多いと思います。

しかし、公認会計士試験は、能力や学力よりもモチベーションが非常に重要です。

私も合格する気満々で臨んだ最初の短答式試験は不合格でした。結果は本試験直後にした自己採点の時点でわかっていたので、その翌朝6時には専門学校に行って早朝答練を受けました。

たしかに勉強するのは精神的につらかったですが、明らかに早朝答練の参加者は減っていたので、努力と精神力で他の受験生に勝っているならば、それを武器にして日々の勉強を丁寧に行っていけば必ず合格できると思いました。

他の人がつらいと感じているときに踏ん張ることができれば、きっとそれは大きな差を生みます。たとえるならば、「雨の日に外をちょっとでも走ってみる努力」です。

うまくいかなかったとき、ほんのちょっとでもいいので勉強を継続してみてください。勉強を習慣化するための踏ん張りどころは意外と少ないもので、このちょっとしたつまずきポイントで踏みとどまれれば、「あのときも頑張ったんだから」と、今後も自信を持つことができると思います。

とはいえ、「何のためにこんなつらいことを続けているのだろう」、ふとそう思うこともあるでしょう。

そんなとき私は、「自分のために」と考えると、どうしても自分に甘くなってしまうように思います。私の考えでは、人は「他の人のために」と思うと強くなれます。公認会計士を目指す皆さんの周りには、応援してくれる親、友人、予備校のスタッフや講師がいて、公認会計士に合格した先輩たちも、皆さんを応援しています。当時、公認会計士を目指していた私も、「応援してくれる人のために」「支えてくれる親を喜ばせたい」という想いを忘れずに勉強を続け、結果としてその想いが自分を少しでも強くしてくれました。

ただ、最後はやはり、自分自身のことを考えてください。10年先、20年先……どんな自分になっていたいか、想像してみましょう。そうすると、今やるべきことが明確に見えてくると思います。

受験を続けるなら、時間を無駄にせず気持ちを切り替える!

割合として短答式試験に失敗する方のほうが多いですが、それは何もマイナスではありません。

論文式試験の場合、自己採点が客観的に行えないため、どんなに手応えがなくても、心の奥底で「もしかしたら合格しているかもしれない」と期待を抱いてしまいがちです。しかし、一度よい夢を見てしまった状態で論文式試験に失敗すると、立ち直る時間もかかり、なにしろモチベーションが上がりません。

一方で短答式試験は、自己採点によって合否がほぼ明確に判断できます。もし、今回の短答式試験で合格ラインに届かなかったものの受験を継続する意思のある人は、

「短答式試験でよかった。モチベーションが続けばすぐ再スタートできる」

「5月短答でよかった。次の12月短答に合格して論文式試験まで十分な対策をしよう」

と考えてください。時間を無駄にすることなく、気持ちをしっかり切り替えて前に進んでいきましょう!

具体的に何をすべきか―当面は論文式試験の勉強をしよう!

では、具体的に何から始めればよいでしょうか?

今回の短答式試験で合格ラインに届かなかった方は、まずは論文式試験の勉強をオススメします。

短答式試験はいわば枝葉(細かい知識)を勉強するもので、論文式試験は幹(もととなる知識)を勉強するものです。木の幹があってこその枝葉なので、論文式試験の勉強は短答式試験にも活きてきます。

ある程度の実力がある方は、租税法を勉強するのもよいと思います。

今から十分な論文式試験の準備を進め、10月頃から短答式試験の対策をすれば、12月には十分に間に合います。何よりも、論文式試験を意識した勉強は、短答式試験の力を大きく伸ばすことになります。

論文式試験の場合は、「絶対に大丈夫」という状態で臨んでもらうのが理想です。

今回の短答式試験で合格ラインに届かなかった方も、気持ちを切り替えて今すぐ再スタートをきれば、来年度の論文式試験合格にグッと近づくことができるでしょう。応援しています!

〈執筆者紹介〉
井上 修(いのうえ・しゅう)
福岡大学准教授・公認会計士
慶應義塾大学経済学部卒業。東北大学大学院経済学研究科専門職学位課程会計専門職専攻、同大学院経済学研究科博士後期課程修了。博士(経営学)。研究分野は、IFRSと日本基準の比較研究、特別損益項目に関する実証研究。福岡大学では「会計専門職プログラム」の指導を一任されている。当プログラムでは、現役の大学生が多数、公認会計士試験や税理士試験 簿記論・財務諸表論に在学中に合格を果たしている。本プログラムから2018年は10名、2019年は5名、2020年は6名が公認会計士試験に合格。


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