【新春特別インタビュー】日税連・石原健次専務理事、髙橋俊行専務理事にきく 令和4年度税制改正大綱に示された税理士試験・制度改革と税理士の未来


3 これから求められる税理士とは?

――資格要件の緩和=税理士受験生を増やすことを目的としている場合、試験制度のみならず、資格自体の魅力をアピールすることが重要ですが、両先生の考える税理士の魅力をお教えください。

石原 現在までも小中高での租税教育や大学での寄附講座で税の知識や税理士の重要性を啓蒙してきているところですが、今回の試験制度の見直しを受けてさらにこうした活動を行っていかなければならないと考えています。

税理士の魅力ですが、私自身は、責任ある仕事を自由な時間のもとに行える、さらに感謝される仕事である点だと思っています。

税理士業務は無償独占です。これが他の士業と大きく異なり大事な点ですね。なぜ税理士業務が無償独占なのかは、税に携わる仕事であり、税は国家財政のベースになるものだからです。つまり、納税者の納税義務をサポートし国家を支える大きな意義のある仕事をしているのが税理士だと考えています。

髙橋 税理士はアカウンタントであるだけでなくロイヤー(法律家)でなければなりません。税法をはじめ周辺の法律を幅広く駆使していくことが求められています。また、ビジネスアドバイザーとしての役割があります。企業の全体像を見渡してサポートできる点は、まさに「経営者の味方」であり、大きな魅力だと思います。

――最後に受験生にメッセージをお願いします。

髙橋 税法を丸暗記するような勉強ではなく、もう少し大きな視点で税制をみてほしいですね。

たとえば、税制改正は「改正要望→与党税制改正大綱→政府税制改正大綱→税制改正の要綱→法律・政令・省令・通達」という流れで行われます。これらはすべてネットでみられますので、こうした流れの中で、どのような議論を経て改正が決まったのか、そして、それと現在の国民の暮らしを比較してみると楽しくなると思います。

こうした視点でみて、さまざまな意見を集め、われわれは税制改正の建議を行っています。つまり、税理士は、税制を適用するだけでなく、つくることも含めて、納税者を助ける仕事をしているという広い視野をもって勉強していってほしいですね。

石原 税理士の登録者数は現在約8万人です。以前よりも増えていますが、でも仕事は絶対になくなりません。なぜなら、「税理士それぞれに合うクライアント」が必ず存在するからです。その先生を信頼できるというクライアントが絶対に現れます。不思議なんですけどね。

現在、求人をかけても税理士資格をもっている方の採用が難しくなっています。税理士資格をもとにした責任のある仕事を求められることもますます増えていますが、本当に人材が不足している状況です。

さらに、税理士業務は複雑化していますので、1人で対応するよりも複数で対応したほうがよい案件も増えてきており、その点でも税理士は不足していると感じます。

受験生は合格することが目標になってしまいがちですが、税理士は社会的な意義が大きく魅力的な仕事を行っていることを十分認識していただきたいですね。試験そのものはそのステップの1つにすぎません。ぜひ合格後を見据えて勉強し、1日も早くわれわれの仲間になっていただければと思います。

(石原健次先生)

(2021年12月21日:日本税理士会館にて)


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