【論述に強くなる!財表理論講座】第31回(最終回):一般原則②


長島正浩
(茨城キリスト教大学経営学部教授)


全31回のプログラムで、税理士試験・財務諸表論に強くなる! 
論点ごとに本試験に類似したミニ問題を用意しました。まずは問題1にチャレンジし、文章全体を何度か読み直したところで問題2(回によっては問題3も)を解いてみましょう。そして、最後に論述問題を解いてください。


まずは問題にチャレンジ!

企業会計は,その処理の原則及び手続を( ① )して適用し,みだりにこれを( ② )してはならない。企業会計上継続性が問題とされるのは,一つの( ③ ) について2つ以上の会計処理の原則又は手続の( ④ )が認められている場合である。このような場合に,企業が選択した会計処理の原則及び手続を( ① )して適用しないときは,同一の( ③ )について異なる利益額が算出されることになり,( ⑤ ) の期間比較を困難ならしめ,この結果,企業の財務内容に関する( ⑥ )の判断を誤らしめることになる。 従って,いったん採用した会計処理の原則又は手続は,( ⑦ )により( ② )を行う場合を除き,( ⑤ )を作成する各時期を通じて継続して適用しなければならない。

企業の財政に( ⑧ )を及ぼす可能性がある場合には,これに備えて適当に ( ⑨ )をしなければならない。企業会計は,予測される将来の危険に備えて ( ⑩ )に基づく会計処理を行わなければならないが,過度に保守的な会計処理を行うことにより,企業の( ⑪ ) 及び( ⑫ )の( ⑬ )をゆがめてはならない。

問題1
文中の空欄( ① )から( ⑬ )にあてはまる適切な用語を示しなさい。

問題2
「企業会計上継続性が問題とされる」の前提となる「経理自由の原則」の意義を説明しなさい。

解答

問題1

① 毎期継続
② 変更
③ 会計事実
④ 選択適用
⑤ 財務諸表
⑥ 利害関係者
⑦ 正当な理由
⑧ 不利な影響
⑨ 健全な会計処理
⑩ 慎重な判断
⑪ 財政状態
⑫ 経営成績
⑬ 真実な報告

問題2

経理自由の原則とは、企業会計上、1つの会計事実に対して2つ以上の会計処理の原則または手続が存在する場合、企業の適合条件に照らして、その中から最も合理的な唯一の会計処理方法を特定できず、少なくとも2つ以上の方法間に優劣がなく同程度に合理性が認められるならば、そのうちからいずれの方法を選択適用するかは、企業の自由な主体的判断に委ねることを認める会計思考である。

基本的な考え方

正当な理由には、その変更を正当化する(1)大規模な経営方針の変更、(2)急激な経済環境の変化、(3)会計関連法令の制定改廃などがある。

論述問題にチャレンジ!

継続性の原則はなぜ必要なのか?

企業がいったん選択し採用した会計処理方法を毎期継続して適用しないときには、同一の会計事実に対して異なる測定値が生み出され、財務諸表の期間比較による企業の趨勢を洞察することが困難となり、企業の利害関係者の判断や意思決定を阻害することになる。継続性の原則は、このような阻害要因を排除し、財務諸表の期間比較を可能とし、同時に企業会計の有用性を高めることになるから。

〈執筆者紹介〉
長島 正浩(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師、会計事務所(監査法人)、証券会社勤務を経て、資格予備校、専門学校、短大、大学、大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後、松本大学松商短期大学部准教授を経て、現在に至る。この間30年以上にわたり、簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。

※ 本記事は、会計人コース2020年1月号別冊付録「まいにち1問 ポケット財表理論」を編集部で再構成したものです。


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