
江上 徹(Leapfrog合同会社 代表社員・公認会計士)
【編集部より】
今年12月の公認会計士試験短答式試験から英語による出題がされるなど、英語のスキルアップに力を入れている人も多いのではないでしょうか。一方で、ビジネスで求められるのは英語力だけではないようです。そこで、本連載では、グローバル人材育成を行う公認会計士の江上先生に海外ビジネスでうまくやるために知っておきたいことを教えていただきます(全4回、月1掲載予定)。
その”Sorry”は本当に必要か
「英語がスラスラ出てこないのは当たり前なので、言葉に詰まってもsorryはいりませんよ」
これは、私のグローバル人材育成プログラムで英語のプレゼンテーションを練習しているときに、かなりの頻度で受講者の方に指摘することです。
「資料依頼や問い合わせは業務なのですから、メールにsorryは入れなくても良いです」
これも、英文ライティングでビジネスメールの課題において多くの受講者の方に指摘する内容です。
このように、私たちはsorryを乱発する傾向が強いと言えます。
みなさんも「日本人はすぐに謝る」あるいは逆に「○○人は自分に非があっても絶対に謝らない」ということを聞いたことがあるのではないでしょうか。
すぐに謝るのは美徳なのか
もちろん私も日本人ですから、ついsorryと謝罪のひと言を入れてしまう気持ちはよくわかります。
日本人の感覚として、素直に謝ることは美徳であり、この人は誠実だとか真摯であるというポジティブな印象になります。逆に「謝らない人」というのは、あいつは信頼できないとか、言い訳ばかりするやつだなど、ネガティブな印象を与えるものです。
しかし、日本の感覚をグローバルの場に持ち込んでsorryを連発すると、必要以上に謝っているように響くのはご承知の通り。
我々としては邪気なく謝っているつもりでも、相手によっては「この人は自信がないのか」と思われたり、「何か非があるのではないか」と勘繰られることがあります。
あるいは「ずいぶんと下手に出る人だ」とか「強く言えば通せそうだ」といった印象を与えて、対等に見てくれないといった弊害が生じる可能性もあるのです。
では、「謝ること=悪いこと」なのかというと、もちろんそんなことはありません。
ときどき「日本人はすぐに謝るからナメられるんだ」なんて言いながら、必要以上に意固地になって謝罪しない人がいるのですが、これはこれで問題です。
外国人(と一括りにするのはあまり良くないのですが)だって、何かをミスすればきちんと謝ります。
よって、「謝るか、謝らないか」の二元論ではなく、「謝るべき時」と「謝る必要がないとき」の使い分けを、日本の感覚から少し調整してあげれば良いのです。
その調整の具体的かつ簡単な方法として、私は「日本語の『すみません』を『sorry』に直訳しないでください」と案内しています。
「すみません」はオールマイティ
日本語の「すみません」というのは実に万能な言葉です。
軽くぶつかったときに「あ、すみません」
何かミスしたときに「すみませんでした」
資料などを依頼するときに「すみませんが…」
感謝するときも「すみません、助かりました」
このように、日本語の「すみません」は非常に幅広い用途があり、だからこそ日常的に多用されるのですが、英語の「sorry」はそこまで万能ではありません。
なので、日本語の「すみません」をそのままsorryに置き換えてしまうと、外国人の感覚としては「なぜこんなに謝ってくるのだろう」となってしまうのです。
そこで私は、「すみません」を以下の3つに分類して英語に対応させるのが良いと考えています。
①軽い謝罪の「すみません」
- 駅や電車などでちょっとぶつかったとき
- 人が話している途中に割り込むようなとき
このようなときの「すみません」は、そのまま「sorry」で良いでしょう。
②正式な謝罪の「すみません」
- 自分が何かをミスしてしまったとき
- 誰かに迷惑をかけてしまったとき
このようなときの「すみません」は、「sorry」でも良いのですが、よりきちんとした印象の「apologize」を使うのが良いと思います。
③謝罪ではない「すみません」
- 英語に詰まって間があいたとき
- 何かを依頼するとき
- 感謝するとき
このようなときは、そもそもsorryもapologizeも不要です。
私はこの③、すなわち謝罪ではない「すみません」のときにも「sorry」を使ってしまうことこそ、「日本人は謝りすぎ」と言われる最大の要因だと考えています。
厳密には、急ぎで何かを依頼したり、その結果相手の作業を中断させるようなときは「Sorry to bother you, but…」のようにsorryを使うときもあるのですが、通常の依頼であればいったんsorryを外して考えてよいでしょう。
Sorryを乱発すると
いかがでしょうか。
本稿では、日本人の「謝りすぎ」を解決する一案として、「すみません」をそのまま「sorry」にするのではなく、状況に応じて「sorry」「apologize」「sorryもapologizeも不要」の3つを使い分けるという視点で議論を進めました。
たかだかsorryを使うか否かでそんなに変わるのか?と思われるかもしれませんが、もし機会があれば自分の会話を録音して聞いてみてほしいのです。思っている以上にsorryを連発している自分にハッとする人も多いはずです。
改めて書きますが、sorryを使うこと自体が悪いわけではありません。重要なのは、そのsorryが本当にその場面で必要なのかについて意識を向けることです。
軽い謝罪か、正式な謝罪か、そもそも謝罪ではないか。
一見、小さな使い分けのように見えますが、これができるか否かは、海外ビジネスにおけるコミュニケーションのカギとなるのです。
本稿が、少しでも読者の皆さんが「うまくやる」ために役立てばうれしい限りです。
<プロフィール>
江上 徹(えがみ・とおる)
Leapfrog合同会社 代表社員
公認会計士
大学卒業後、電機メーカー、監査法人、広告代理店でキャリアを積み、2021年に独立起業。Leapfrog合同会社を設立し、代表社員に就任。
「日本人のポテンシャルはとても高い。まだまだ飛躍できる」という固い信念のもと、海外展開している企業あるいは海外展開をもくろむ企業を主なクライアントとして、「普通の日本人」が海外で戦うための必携スキルである「英語・ファイナンス・文化理解」をパッケージ化した人材育成プログラム「Altus Leap」を提供している。
HP:https://altusleap.com/
Mail:contact@altusleap.com
X:https://x.com/imageruto


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