
【編集部より】
税理士試験まであと少し。本企画では、『税理士試験全11科目のすごい勉強法』の執筆陣からの応援メッセージを掲載します。
メッツ
はじめに
税理士試験が目前に迫った今、皆さんの心の中には、さまざまな感情が渦巻いているのではないでしょうか。
本試験まであと何をやればいいのか、本当に合格できるのかと不安や焦りを感じることもあると思います。
それだけ真剣に取り組んできた証拠であり、試験合格にかける想いが強い証拠だと思います。
私は税理士試験をすべて働きながら受験しました。
限られた時間の中で、日々の業務と勉強との両立を図るのは決して容易ではなく、多くの葛藤や困難がありました。
今回、私からは主に「働きながら勉強・受験する社会人」に向けて、応援メッセージを書かせていただきたいと思います。
試験前に休みが取れなくても悲観しないで!
税理士事務所に勤務されている方であれば、5月・6月決算法人の担当を抱えており、申告業務の真っただ中で勉強との両立に苦労している方もいらっしゃるでしょう。
事業会社の財務経理に勤務されている方であれば、四半期決算や開示資料の作成などで忙しくされている方もいらっしゃるかと思います。試験直前に入っても仕事が忙しく、平日丸1日を勉強に充てられる環境など夢のまた夢、そんな方も少なくないでしょう。
私自身も試験直前に長期の休みを取れるような職場に勤務していたわけではなく、せいぜい試験前1週間に有給休暇をいただくのが限界。試験前日まで通常通り仕事してから、翌日に試験に臨んだ年もありました。試験直前になると、やはり周囲の受験生のことが気になるものです。あの人は1か月前から休みに入ったらしい、平日昼間に自習室で勉強しているらしい、そんなふうに、つい比較しては落ち込んでしまったこともあります。
けれど、私自身の経験からお伝えしたいことがあります。
それは「試験直前にまとまった休みが取れないことに、必要以上に悲観しないでほしい」ということです。
私は最終的に3科目に合格しましたが、振り返ってみると試験直前に休暇を取った年ほど、結果は芳しくありませんでした。
一方、試験直前まで通常通り仕事をしていた年に合格できたのです。
これは偶然かもしれません。
でも私は、「日々の仕事と勉強を両立させる中で、限られた時間をどう使うか」という姿勢が、本番で大きな力を発揮したのではないかと思っています。
働きながら受験している方は、時間の大切さ、1日の重みを誰よりも知っています。
だからこそ、時間管理力や集中力、効率良く学ぶ工夫など、自然と多くの力が養われているはずです。これこそが社会人受験生の強みであると思います。
もちろん、試験直前に丸一日勉強できるに越したことはないかもしれません。
でも焦って詰め込むよりも、日々の積み重ねの中で得た知識と、限られた時間の中で自分なりに磨いてきた対応力の方が、よほど本番で役立つのではないでしょうか。
どうか焦らず、気負わず、前向きに、これまでコツコツ続けてきた試験勉強を当日まで継続してください。
おわりに
私は今年3月に大学院を修了し、税法科目免除の決定通知の到着を待っている状況です。
到着後に税理士登録申請をすれば、晴れて「税理士」として新しいスタートを切ることになります。
なかなか合格できずに苦しんでいた日々が、今ではかけがえのない自分の糧になっていることを実感しています。
皆さんの努力もきっと必ず形になります。
どうか最後まで、自分自身を信じて歩みを進めてください。
最後に、酒税法合格者として酒にまつわる話を添えたいと思います。
日本には「酒は百薬の長」という言葉があります。
それは適度な酒が人の心をほぐし、体を癒すものであるという意味です。
皆さんがこれまで積み重ねてきた日々も、試験が終わったあとは、きっと心と人生を豊かにする「百薬」になるはずです。
試験後の一杯はきっと格別です。
どうかその一杯を、合格という最高の肴とともに味わえますように。
皆さまのご健闘を心よりお祈り申し上げます。
【プロフィール】
メッツ
2011年簿記論、2012年財務諸表論、2021年酒税法に合格。3科目取得後、税理士法人に勤務しながら税法大学院に通学。相続税法における財産評価に関する修士論文を執筆し2025年3月修了。中学3年時に将来は手に職をつけて働きたいと税理士を志し、スポーツ推薦を断って商業高校に入学。高校卒業と同時に地方の税理士法人に就職し、それ以降複数の税理士法人に勤務。中小企業から上場企業までさまざまな業種・規模の税務申告業務を経験した後、現在はオーナー企業に対する事業承継・組織再編コンサルティングをメインに従事している。著書に『税理士試験全11科目のすごい勉強法』(共著、中央経済社)。