【編集部より】
さる11月30日に令和4年度(第72回)税理士試験結果が公表されました。
消費税法は、受験者数6,488人、合格者数740人、合格率は11.4%(昨年は11.9%)と、昨年からやや合格率が下がりました。
来年度の試験にチャレンジするにあたり、今からどのように取り組むと良いか、加藤久也先生に当面の勉強のヒントを伺いました。
加藤 久也(税理士/名城大学大学院非常勤講師)
第72回(令和4年度)の合格率をみて
「令和4年度の合格発表」がありました。合格された方、おめでとうございます。
残念な結果に終わった方へは、令和5年度試験で合格するために今から始める受験勉強についてアドバイスしたいと思います。
今年度、消費税法の合格率は11.4%でした。過去10年間の合格率を振り返ってみると、最高が平成29年度(第67回)の13.3%、最低が平成26年度(第64回)の10.3%、この間の平均合格率は12.0%となっており、今年度の合格率が特に厳しい合格率ではないものの、この数年は低めの合格率が続いています。
この合格率は、昨年度に引き続き他の科目と比較し最低の合格率で、合格率が一番高かった簿記論23.0%の半分以下となっています。しかし、合格者数は740名で税法科目の中では群を抜いて多いことから、一概に合格しづらい科目ということではありませんので、悲観的になることはありません。
今年度の出題は、第一問、第二問とも、難解な出題内容があったものの、基本項目について着実に正答を重ねることができた受験生が順当に合格したものとみています。
今から始める受験対策
令和5年度の試験へのカウントダウンはすでに始まりました。合格発表の11月30日から来年8月8日まであと251日です。今日の1日も試験前日の1日も同じ1日です。
さあ、気持ちを切り替えて、今から試験勉強をスタートしましょう。
理論対策
今年の試験対策では、理論暗記が足りなかった、甘かったとの反省を抱く人も多いと思います。何はともあれ、今から理論暗記を始めてください。覚えようと思えば覚えられます。完璧な暗記を目指し、最後の理論暗記にすべく努力してください。
消費税法の理論問題は、1日1問暗記していけば、1月終わりには1回転できます。
忘れることを恐れずガンガン覚えましょう。
また、応用理論対策については、過去問や問題集の問題文を読み、解答の骨子を書きだした後で答え合わせするという方法で、効率よく理解を深めるようにしてください。このトレーニングをすることで、個別理論についても解答のポイントがつかめ、計算問題を解答するときにも役立ちます。
計算対策
基本的な総合計算問題集を年内に1回転することで、計算問題を解答する勘を取り戻してください。消費税法の計算項目に難しいものはありません。規定を理解し練習を重ねることで合格レベルに達することができますから、しっかり練習してください。
また、個別問題集の解答も始め、スラスラと解ける問題と解けない問題を仕分けしてください。間違ったり、迷ったりする問題があなたの弱点です。対策していくべき箇所を絞り込むことで、今後の受験勉強時間の節約につながります。
年末年始休暇には
年末年始の時間が取れる時期には、ぜひ通達や国税庁が公表しているQ&Aに目を通すことをお勧めします。理論問題の事例や、計算問題の出題内容の中にはこれらの中から出題されているものが多くあります。
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「国税庁Q&Aの効果的な活用法と、読んでおきたい消費税法Q&Aベスト3」
基本をしっかり身につけること
消費税法の受験対策として大切なことは、基本的な知識を確実に身につけることです。
令和5年10月から適格請求書等保存方式が施行されることから、計算問題は、ますます複雑化するものと予想されます。しかし、消費税法の基本的な構造は変わっていません。
基本項目について、繰り返し訓練することで確実に解答できるようにすることが大切です。理論暗記の正確性と計算問題の解答能力をアップしていきながら、条文の意味や内容について理解を深める復習もしていくようにするとよいでしょう。
最後に、わずかの点差で不合格となった受験生の方へ。
今の悔しさを忘れずに挑戦を続けましょう。合格までのあと数点をどう取るかが課題です。今年その数点を取れなかった原因について真摯に振り返ってみてください。
不合格の原因は必ず自身の中にあります。この時期に反省すべきことは反省したうえで、いかに気持ちを切り替えて新たなスタートを切るかが、来年の合否を左右します。
あなたの努力があなたを裏切ることはありません。あと数か月消費税法の勉強時間を与えられたと思い、最善を尽くしてください。来年、あなたからの合格の報告を楽しみにしています。
<執筆者紹介>
加藤 久也(かとう・ひさや)
税理士/名城大学大学院非常勤講師(消費税法担当)
1991年、富山大学理学部卒業。1991年~1995年、株式会社日立製作所に勤務。1998年、税理士試験合格。2000年、税理士登録。2002年、愛知県春日井市に加藤久也税理士事務所開業。税理士業のほか、1998年~2019年に名古屋大原学園、2016年より名城大学、2019年より愛知淑徳大学にて非常勤講師を務める。2017年より東海税理士会税務研究所研究員、2021年より同研究所副所長に就任。2019年より日本税法学会所属。著書に『ワークフロー式消費税[軽減税率]申告書作成の実務』(共著、日本法令)がある。
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