令和7年度税理士試験合格発表を受けて今後の学習アドバイス【財務諸表論】


加茂川悠介

【編集部より】
さる11月28日(金)、令和7年度税理士試験の合格発表が行われました。合格発表をうけて、受験戦略を再検討する人、同じ科目の受験に再挑戦する人などさまざまだと思います。
来年の本試験まで、どのように学習計画を立てればよいかなどについて、主要科目ごとにアドバイスを頂きます。本記事を参考に、合格に向けてよりよいスタートを切りましょう!

はじめに

11月28日に税理士試験の合格発表がありました。
合格されていた方、おめでとうございます。
これまでの努力が実を結びましたね!
素晴らしいことです。

今回は合格率が31.9%と、大変高かったのが印象的です。
前回の合格率が8.0%でしたから、前回、残念ながら悔しい想いをした方々もたくさん合格されたのだろうと思います。

受験し続けると、必ずチャンスがやってきますね。
合格された方は税法科目等、次なる科目に全力で取り組んでもらいたいと思います。

また、年齢別での合格率では、20歳以下が35.4%、21歳から25歳が29.4%というように、全体の合格率である21.6%よりも遥かに高くなっています。
前回までと同様、今回の試験結果からも、「できるだけ早くから試験に取り組むと有利である」ことがわかりました。

これからどうするのか

落ち込んでいる暇はない!

残念だった方はさぞ、悔しい想いを抱かれているかと思います。
税理士試験に限らず、多くの試験では「ほんのちょっとの差」により、合格になったり不合格になったりするものです。
年に1回の試験ですから、「また勉強か」とガッカリしておられる方もいらっしゃるでしょう。

ただ、落ち込んでいる場合ではありません。
本試験を経験された方だったらご存じかと思いますが、すでに来年の本試験に向けて勉強をされている方がたくさんいらっしゃいます。

私が講師をしているTACでも、5月からや8・9月から勉強をされている方がたくさんいます。私のクラスの受講生を見ていると、初めて財務諸表論を勉強されている方が多いので、本試験を経験された方とは実力差があるかもしれませんが、それでも一生懸命勉強されていますから、今回残念だった方も油断はできません。

何が言いたいのかというと、「すでに戦いは始まっている」ということです。
気持ちを切り替えて、「来年は必ず合格するぞ」という気持ちですぐに勉強を再開してもらいたいと思います。

何から手を付ければいいか?

「何から手を付ければいいのですか?」このような質問はこの時期によく受けます。

計算

「計算」については毎年、貸借対照表や損益計算書等の財務諸表を作成する問題が出題されており、本試験の出題傾向もあまり変わりはありません。
したがって、まずはお手元の個別問題集を一通り解いて、計算問題の解く感覚を取り戻すのがいいでしょう。

個別問題集はごくごく基本的な問題レベルで構いません。
間違えたところはお手元の計算テキストで確認されると効果的です。

おすすめは、間違えたときに計算テキストの該当箇所を読んだら、その横に「日付」を書いておくことです。
こうすることで、「日付」のたくさん書かれている箇所は「自分の弱点」であることがわかりますので、復習をするときに効果的に自らの弱点補強ができるだろうと思います。

また、間違えた時に手間でも計算テキストを開くことによって、頭の中で「知識の整理」がなされます。
だんだんと「あれはこの辺に書いてあったな」とか、「これは前も計算テキストで確認したテーマだ」とか、計算テキストがまるで頭の中にあるかのようなイメージになられる方もいます。

「知識」はただただ頭の中に詰め込んでいても得点には繋がりません。
詰め込んだ「知識を整理して」聞かれたときに「必要な知識を取り出す」ことが大切だからです。
ぜひぜひ、問題を解いて間違えたときは計算テキストで確認するようにしましょう。

個別問題集を一通り解き終わったら、本試験と同じような総合問題(80分程度)を解いていってください。
社会人の方はお仕事等で難しいかもしれませんが、可能であれば「1日1題」解けるとよいですね。
簡単なレベルから難しいレベルまで、少しずつレベルを上げていってもらえればよいかと思います。
市販されている問題集でもよいですし、予備校等に通われている場合はそちらの問題を利用してください。

そして、同じ問題を1週間くらい時間を空けて繰り返し解きましょう。
間違えたときは、解答解説を見て終わりとするのではなく、計算テキストで確認すると飛躍的に実力がアップすると思います。

理論

「理論」についてはどうでしょうか。
国税庁のホームページにある「出題のポイント」を見ると、「概念フレームワーク」「資産除去債務会計基準」「収益認識会計基準」「退職給付会計基準」「研究開発会計基準」と、出題が多岐にわたっていることがよくわかります。

ここから本試験まで少しずつ、丁寧に「理論暗記」をする中で大切なことは、「どこが出題されるかわからない」本試験で、いかに「基本的な問題をしっかりと解答できるか」です。

ヤマを張ってもおそらく当たりません。
ヤマを張らず、「まんべんなく、覚えては忘れ、また覚える」の繰り返しです。
これができた方が、見事合格されるのだろうと思います。
何事もそうですが、少しずつの積み重ねが合格へと繋がっていくのです。

最後に

今回は高い合格率だったので多くの方が合格されただろうと思います。
それでも、おおよそ7割の人が不合格になる厳しい試験であることに変わりはありません。

私も、受講生からちらほら報告をもらっている最中ですが、TACの解答速報ベースで「60点後半ぐらいが合格ラインだったのかなぁ」という印象です。
この点数を取ろうと思うと、例年通り計算で75%以上(35点以上)正答する力がもちろん必要です。
加えて、今回のように比較的取り組みやすい理論問題が出題されると、「ヤマを張らずまんべんなく基本的な論点を覚えてこられたか」がいかに大切か、痛感しました。

得意なところ、不得意なところ、いろいろあるかと思います。
その中で、「いかにまんべんなく様々な理論を覚えるか」が本試験合格に不可欠といえます。

来年こそはリベンジ!
合格しましょう!
期待しています。

【著者紹介】
加茂川悠介
(かもがわ・ゆうすけ)

CFP®。中央大学法学部、早稲田大学大学院法学研究科修了後、大手専門学校で教鞭をとる。その後、立命館大学大学院法学研究科で税法を学び、会計事務所勤務や河合塾ライセンススクール講師を経て、財務捜査官採用試験に合格。宮城県警退職後、資格の学校TAC税理士講座で講義を行う。現在、資格の学校TACのほか芦屋大学や大阪産業大学、近畿大学等でも講義を行い、日々、わかりやすい講義に向けて自己研鑽している。著書に『ストーリーとまとめ問題でよくわかる! かけるくんの簿記入門』(Parade Books)がある。


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