まずはココだけ押さえたい! 経理・財務の業務フロー【第1回】業務フローを理解するのが大切なワケ


菅 信浩

【編集部より】
「簿記や財務諸表論などの問題は解けるけれど、実際の業務はどう進むの?」、「監査のために、仕事の流れが知りたい」という方も少なくないはず。本連載では、受験勉強だけでは得られない現場の経理・財務の業務プロセスについて、『業務をまるごと見える化する 経理・財務のフローチャート40』の著者、菅信浩氏に解説してもらいます(全5回予定)。
本連載を読めば、まだ働いたことのない受験生や各試験合格者も、「入社前に知ることができてよかった」、「業務プロセスのイメージがついた」と自信がつくはず!
もちろん、すでに業務についていて、より理解を深めたい経理・財務パーソンにもおすすめです♪

なぜ典型的な業務フローを理解する必要があるの?

今回、本連載を執筆する菅信浩です。あずさ監査法人勤務を経て、現在所属する総合商社の本社と駐在先では経理業務、JSOX対応、投資スキーム構築(会計・税務面)、投資評価、PMI(業務プロセス・内部統制の構築、監査対応、ITセキュリティや人事総務の体制構築など)、業務効率化等を行っています。

会計士、税理士、財務経理担当者(以下、専門家)にとって、まず初めに習得すべきことは何でしょうか?「会計」でしょうか?それとも「税務」?

はい、正解です。これらは簿記や税理士試験、専門誌などを通じて日々研鑽を図る必要があります。

しかし、実際にはこれら専門家には会計・税務だけでなく、俯瞰的に会社の管理体制を理解し改善提案することが求められることも多いです。

そのためには、一般的に行われている業務の流れ(どの組織において、どのような書類の回付や手続を経て、どのように人・物・カネが動いていくのか等)を理解することが非常に重要です。

これがわかれば、何(どの組織、どの活動、どのエビデンス)に基づいてビジネス(人・物・カネ)が動き、どのように会計・税務に反映されるか、さらにはリスクの所在とそれを低減するために必要な仕組み(内部統制)は何かについて、俯瞰的に把握・構築できるようになります。

そもそも経理・財務まわりにはどんな業務プロセスがあるの?

一般的にどのような業務があるのかをざっと一望してみましょう。

各業務プロセスの位置関係で経理・財務のプロセスを見ると、図表1のようになります。

【図表1】業務上の関係
(出所)『業務をまるごと見える化する』経理・財務のフローチャート40』

「会社に必要なルール」や「契約管理」をベースとして、「現金預金管理」から「給与・賞与・退職給付」や「資金計画・調達管理」の個別のプロセスが遂行され、さらに個別プロセスの結果に基づいて「決算業務」から「連結決算業務」といった決算関連業務が行われ、財務諸表等による外部開示等が行われることになります。

視点を切り替えて、これら業務を「貸借対照表・損益計算書との関係」で整理すると図表2の通りです。

【図表2】貸借対照表・損益計算書との関係
(出所)『業務をまるごと見える化する 経理・財務のフローチャート40』

会社に必要となる業務プロセスはこれだけにとどまりませんが、本連載における専門家がまず理解する必要があるプロセスはこのくらいです。

まとめ

このように全体像を見ると、理解しておくべき業務プロセスの数はたいして多くありませんが、意外と中堅の専門家でも理解が「歯抜け」状態になっていて経理・財務の全体像が掴めていないことがあります。

網羅的に会社の業務を学びたい方や、他のプロセスにもご興味がある方は、拙著『業務をまるごと見える化する 経理・財務のフローチャート40』(中央経済社)を手に取っていただけるとうれしいです。

一度にすべてを理解することは難しいので、次回以降では、若手が担当しそうな主要な業務からいくつか掘り下げて紹介していきます。

【執筆者紹介】
菅 信浩(すが・のぶひろ)
上場準備中の不動産デベロッパー(現在は東証プライム上場)にて営業経験を積んだのち、当該会社の上場を契機に公認会計士を目指す。合格後に朝日監査法人(現有限責任あずさ監査法人)へ入所し、100社超の監査業務、IPO支援、JSOXアドバイザリー等を担当。その後、大手総合商社へ転職後、数多くのM&AやPMI、内部統制構築に携わり、現在は台湾の海外子会社にCAOとして駐在。著書に、『チェックリストでリスクが見える 内部統制構築ガイド』『業務をまるごと見える化する 経理・財務のフローチャート40』(いずれも中央経済社刊)。


関連記事

ページ上部へ戻る