【税理士試験 簿記論】「出題のポイント」公表を受けて:令和5年度試験で合格するために今からすべきこと


【編集部より】
さる10月7日(金)、国税庁ホームページにおいて税理士試験「令和4年度(第72回)税理士試験出題のポイント」が公表されました。
これを受けて、令和5年度税理士試験を受験される皆さんは、今後どのような取り組みをするとよいのでしょうか。
本記事では、【簿記論】について、資格の大原講師・嶋田先生にアドバイスをいただきました。

 嶋田和布(資格の大原講師)

「令和4年度の出題ポイント」を受けて

令和4年10月7日に国税庁より税理士試験「令和4年度試験の出題のポイント」が公表されました。
公表された出題のポイントから読み取れる試験委員の出題意図については以下のように考えられます。

第一問】―令和4年度の出題ポイント

問1 大陸式簿記法を前提とした総勘定元帳(開始残高勘定、損益勘定、閉鎖残高勘定)、決算関係情報、キャッシュ・フロー計算書の資料より解答要求されている金額の推定等を行う問題でした。本問では、簿記一巡の手続の理解及び解答要求されている金額を推定する上で必要な資料を効率よく見つけ出す力が求められていました。

問2 受託買付及び委託買付取引及び返品権付き販売取引の会計処理を問う問題でした。受託買付及び委託買付取引は、会計処理を比較する形式で出題され、委託者及び受託者双方の会計処理の理解が問われていました。また、返品権付き販売取引は収益認識に関する会計基準からの出題であり、当該基準に基づく会計処理の理解が求められていました。

第二問】―令和4年度の出題ポイント

問1 共用資産を含む減損損失の認識及び測定を原則法で行った場合の金額算定を問う問題でした。本問では、減損損失の仕訳を行うまでの兆候の有無、認識の判定、測定、配分という一連の流れの理解が求められていました。

問2 株式の取得及び売却、社債の償還といった有価証券に関する様々な会計処理を問う問題でした。満期保有目的の債券の利息法による償却原価法の計算、売買目的有価証券の洗替法・切放法の相違点、関連会社株式の帳簿上の仕訳及び連結財務諸表作成上で必要な持分法の仕訳の理解が求められていました。

第三問】―令和4年度の出題ポイント

形式面については例年と同様、決算整理前残高試算表から問題文に示された決算整理事項等に基づき、決算整理後残高試算表に計上される金額の算定を問う総合問題でした。内容面については工事契約及び不動産賃貸の出題は特徴的ですが、それ以外については現金・預金、金融商品、消費税等、減価償却費、圧縮記帳、貸倒引当金、賞与引当金、退職給付引当金、リース会計、税効果会計等の頻出項目からの出題となりました。本問では幅広い知識と総合問題の対応力が求められていました。

令和5年度試験で合格するために今からすべきこと

令和4年度の試験を総括すると簿記一巡の手続(金額推定)という古典的な論点が出題されている一方で、収益認識に関する会計基準に基づく会計処理(返品権付き販売及び工事契約に関する収益認識)といった時事的な論点も出題されています。

また、連結会計(持分法)や受託買付・委託買付取引といった論点についても出題されていることから、幅広い会計知識を身に付ける必要があります。
それに加えて今回の本試験の第二問のように難易度が平易な問題が出題された際にミスなく正確に解答する計算力、第三問においては総合問題を素早く解答する計算力と解答戦略が必要であると言えます。

正確に解答する計算力を身に付けるために、日頃から問題を解答する際には時間を意識して解答すること、そして必要に応じてメモ等を活用する解法を確立することを心掛けて学習をしましょう。

また、総合問題の解答戦略については、総合問題をただ闇雲に解いているだけでは身に付きません。常に優先的に解答すべき項目は何かを考えながら解答することが必要です。

日頃から総合問題を解答する中で、比較的容易に解答できる項目は何か、逆に手数が掛かり、解答が難しくなる傾向にある項目は何かを意識して学習をしましょう。

令和5年度試験を受験される皆様にとって今後の学習の一助になれば幸いです。

<執筆者紹介>
嶋田和布(しまだ かずのぶ)
資格の大原 税理士講座講師
高校在学中に簿記と出逢い、資格の大原を受講して日商簿記検定1級に合格。簿記の魅力や楽しさを沢山の方に伝えたいという思いから簿記論の講師として資格の大原に入社し、現在も簿記論一筋で受講生の合格をサポートしている。

資格の大原 税理士講座ホームページ



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