中野 貴元(公益社団法人 全国経理教育協会専務理事)
税理士試験、特に税法科目は主に会計科目をクリアしてきた受験生の中での戦いになるため、相当難関です。
このため、学習をスタートしてもなかなか先が見通せず、思うように学習が進まないという方も多いと思われます。
また、そもそも税法は複雑、難解なため、資格試験に限らず企業、会計事務所等に勤められている方の中にも習得・実践するのに苦心される方も多数いらっしゃいます。
こうした中、このたび公益社団法人全国経理教育協会主催の税法能力検定が、税理士試験対策および実務のスキルアップできるように大きくリニューアルされることとなりました。
では、実際どのように変わるのか? そして受験生・実務に従事されている方にどのようなメリットがあり、どう活用したらよいか、専務理事の中野貴元様に全2回にわたり解説していただきます。(編集部)
全経税法能力検定試験とは?
公益社団法人全国経理教育協会(以下、全経)では、昭和43年(1968)9月29日を第1回として現在まで税法能力検定試験を通算108回実施しています。
当初は所得税法と法人税法の2税法でしたが、この間に平成9年の税率改正を契機として平成11年(第62回)から消費税法を、日本の少子高齢化社会に対する相続・贈与への社会的ニーズの高まりにより令和2年(第104回)から相続税法をそれぞれ加え、現在は4税法が対象となっています。
税法能力検定試験は、個人や法人を取り巻く各税法について、自身の生活や企業の経理担当者や会計事務所の職員等の実務に役立てるよう、その理論や条文、計算力を問う試験です。
税法を対象とした単独検定試験としては国内ほぼ唯一の検定試験であり、5月・10月・2月の3回の試験に年間約1万人の人たちに受験をいただいています。
税法能力検定は当初専門学校の生徒の皆さんが学校で習う税務の授業を支援することを目的としてスタートしましたが、近年の受験者層は約半数が専門学校生以外の社会人にシフトしてきました。
企業の経理を担当している方や会計事務所にお勤めの方など、日常的に各税法に触れている人たちが多く受験するようになりました。
こうした変化の中で、特に最上級の1級についてその学習の先にある税理士試験の税法科目と学習傾向がリンクしていないという声をいただいており、このたび試験内容を抜本的に見直すことになったのです。
1級は税理士試験の計算力の確認として、2・3級は実務のスキルアップとして
このようなニーズの変化に応じて、今回以下のようにすることを基本方針としました。
1級:8月に実施される税理士試験税法科目の計算力が確認できる試験
2・3級:実務でよく使われる内容を問う試験
また、税理士試験受験生が学習の達成度をはかりやすくするため、試験実施日を次のように見直します。
(従来)
・すべての級:10月と2月
↓
(2022年度より)
・1級:5月と10月
・2級・3級:10月と2月
実際に検定試験をどう活用する?
<税理士受験生の方>
税理士試験の本試験は例年8月に実施され、9月から新しい科目の学習や同じ科目でもフレッシュスタートをきることも多いことから、たとえば受験生は次のように活用することが考えられます。
9月:学習スタート → 10月:3級 → 2月:2級 → 5月:1級 → 8月:税理士本試験
税理士試験は長丁場ですので、本検定を上手に活用して学習をステップアップしていくとよいでしょう。
<実務での実力をUPさせたい方>
会計事務所や企業にお勤めの方でしたら、それぞれのお仕事のペースに合わせて、となりますが、例えば3月決算の企業や顧問先を想定すると、次のような学習計画が考えられます。
7月:学習スタート → 10月:3級 → 2月:2級 → 10月:1級
なお、令和4年3月11日に全経のホームページで新しい試験範囲表と新試験に対応したサンプル問題を公開しています。
次回の「その2」では、所得税法・法人税法・消費税法の各試験で具体的に何が変わるのかについて解説をしていきます。
<試験主催者のご紹介>
公益社団法人 全国経理教育協会
昭和31年(1956年)設立。職業教育の振興を図るため、簿記・経理および税務の教育に関する研究調査ならびにその教育に携わる者の指導育成を行い、あわせて関係諸団体と緊密に連携し、わが国の簿記経理教育の普及向上ならびに産業経済の発展および生涯学習社会の進展、国際化に寄与することを目的とする団体です。主な事業活動として簿記能力検定をはじめ12検定を実施しています。