わたしの独立開業日誌 #司法書士・植田麻友


【編集部から】
士業の魅力は、独立開業できることにもあります。「将来は独立」を目標に合格を目指している方も多いのではないでしょうか。
そこで、「わたしの独立開業日誌」では、独立した先輩方に事務所開業にまつわるエピソードをリレー形式でお話しいただきます(木曜日の隔週連載)。
登場していただくのは、税理士・会計士をはじめ、業務で連携することの多い士業として司法書士や社労士などの実務家も予定しています。
将来の働き方を考えるヒントがきっと見つかるはずです。

「やりたいこと」のために独立開業

こんにちは、大阪で司法書士をしております植田麻友と申します。
私は2012年に司法書士試験に合格後、大阪の司法書士法人に勤務しておりました。そして、独立までの約8年をその法人で過ごし、2021年1月に大阪・堺市で独立しました。

もともと、司法書士合格当時に独立願望はなかったのですが、年数を重ねることで経験や業務内容も変わっていき、自分自身で「やりたいこと」が生まれた結果、独立しました。

勤務していた頃から「中小企業支援」をしたいという想いがあり、現在もお客様のほとんどは法人です。
そうなりますと、自然と「税理士・公認会計士との連携」も多く、実際にお客様とのお打ち合わせに同席することもあります。

◆開業後のプロフィール写真

司法書士と税理士・公認会計士との連携

中小企業のお客様にとって、税理士とは、「毎月の相談ができる信頼できる相手」です。
税理士の方からよく聞くのは、「税理士なので当然、税務顧問として契約しているものの、相談は多岐にわたり、労務や法務、登記の相談まで受けることが多い」のだとか。

士業間での専門というのは、お客様にはとても分かりにくく、仮に専門外だと分かっていたとしても、「信頼している人(=顧問税理士)から聞きたい」という気持ちがお客様にあるためです。
そういったことから、私のような「中小企業支援に強い司法書士」が、お客様から相談を受けた税理士・公認会計士の方から、そのご相談を受けることもあります。
あるいは、直接お客様をご紹介いただき、ご不安を解消するということもあります。
そういった形で、税理士・公認会計士の方と連携させていただくことが多いです。

最近であれば、「役員の登記手続きを忘れた結果、過料が課せられる…」ということを防ぐために、弊所で「役員任期の管理」を行い、税理士の方にご報告をしているという例もあります。

独立開業にあたって準備したこと

「司法書士」と「税理士」は、もちろん職域は異なりますが、独立にあたって準備すべきことについては、かなり似ていると思います。
私たちのような司法書士の仕事も、極端な話ですが、パソコンさえあれば完結できるといっても過言ではありません。
しかし、それだけでは快適性や効率化は確保できないため、それ以外の備品も整えていきます。

◻️私が独立初月に揃えた備品◻️
 ・ノートパソコン(基本持ち運び)
 ・A4レーザープリンタ
 ・司法書士業務支援システム
 ・名刺
 ・ホームページ

いずれも必要最小限です。ホームページは、特に集客を目的とするものではなく、検索したときにヒットするためだけのものとして作成しました。
開業準備にかかった費用は、50万円もないと思います。そして、ここから徐々に自分が快適に仕事をできる環境・効率的に仕事ができる環境を作り上げ、現在に至ります。

◆事務所ホームページのトップ画像

独立するときに決めていた事務所の戦略

私が独立したときに決めていたことは、「事務所の規模拡大はしない」・「あえて人は採用しない」ということです。
これは顧客を増やさないということではなく、「ひとり事務所として維持していくことを考えている」ということです。

今後、士業事務所は、司法書士だけではなく税理士・公認会計士も、大規模事務所と小規模事務所の「2極化」があるものと考えます。
私がかつて勤務していた司法書士法人は、60人規模の比較的大きな事務所でした。
そのうえで感じているのは、「大規模事務所と小規模事務所ではお客様も求める役割は違う」ということです。

「ひとり事務所」の醍醐味

私が小規模事務所であろうと思うのは、「自分自身のファンになってくださるお客様を大切にしたい」という一心です。
大規模事務所は組織である以上、案件規模や費用のかけ方は小規模事務所とは圧倒的に違います。
一方で、担当者はいわゆる「従業員」ですから、いつか異動になるやもしれません。
以前勤めていたときにお客様に言われたのは、「担当が変わってばっかりで、もう誰が誰か分からない」という言葉でした。

その経験は、今でも私の中に強く残っており、独立した以上は「目の前のお客様と一生のお付き合いをする」という気持ちでいます。
それができるのは、小規模事務所の醍醐味だと考えます。
ただし、小規模事務所(ひとり事務所)の場合、もし所長が倒れるなどしたときの措置が必要なので、これについてはもちろん対策が必要です。

肩書きや会社名よりも大切なこと

これは税理士・公認会計士の方にも同じことが言えると思いますが、多くの経営者は、肩書や会社名よりも「目の前のあなたが信頼できるか」を考えます。
ひとり事務所にはその可能性がつまっているのです。

大規模事務所にも、小規模事務所にも、それぞれの可能性を秘めています。
ご自身がどのような開業を目指すのか、考えてみるのも大切なことです。

最後に

資格取得を目指される方には、「すぐに独立開業したい方」と「すぐには独立開業は考えていない方」と、さまざまな方がいらっしゃるかと思います。

私自身、受験勉強をしていた当時は、独立については一切考えていませんでした。
一方で、合格当時から独立を考え、法人に所属して経験を積むことを選択した方もいます。

どちらを選択するかには正しい解答はないのです。
それでも、どんな環境にいても、学んだことは必ず役に立つでしょう。

【執筆者紹介】
植田 麻友(うえだ まゆ)

大阪・堺で開業している司法書士。全国に拠点を持つ大手司法書士法人の社員を経験後、2021年に司法書士事務所Mayを開業。中小企業支援を掲げ、商業登記・M&A支援に従事している。経営心理士・ISD個性心理学インストラクターの資格を持ち、法律的な視点と心理学的な視点をあわせて企業経営者へアドバイスを行っている。税理士事務所やライフプランナー向けの勉強会を得意とする。

Twitter(@mayrin_ueda)
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