専門学校に聞く 第71回税理士試験どうだった?【簿・財・消】


第71回税理士試験を受験された皆さま、おつかれさまでした。昨年と同様にコロナ禍での試験となりましたが、実力を出しきれたでしょうか?

こちらでは、専門学校のご協力により、簿記論・財務諸表論・消費税法の講評を順次掲載いたします。

また、講評とあわせて、専門学校の解答速報サイトのURLも掲載いたしますので、より詳しい情報はそちらをご覧ください。

なお、学校ごとに、科目ごとに、解答速報の公開時間が異なりますので、各自でご確認のうえ、ご覧ください。

本記事が皆さまのお役に立てば幸いです。

※ 資格スクール大栄とネットスクールは、業務提携により共同でご執筆いただきました。

簿記論
財務諸表論
消費税法

簿記論

資格の大原

第一問

 問1および問2ともに難解な箇所と平易な箇所がはっきりしている問題でした。解答しにくい箇所は時間をかけずに解答する必要がありました。

 問1は、個人企業の総合問題でした。費用、収益、資産および負債の額の算定方法は株式会社と同様ですので、難易度の高い箇所を除いてミスなく解答できたかがポイントになると考えられます。

 問2は、割賦販売の利息区分法の売主と買主の双方の仕訳を問う問題でした。売主の売上算定時の割引現在価値をミスなく解答できたかがポイントになると考えられます。

第二問

 問1は解答しにくい箇所が多く、問2は解答できる箇所が多い問題でした。問1に時間をかけず、問2の解答できる箇所でミスなく得点する必要がありました。

 問1は、固定資産会計の仕訳と金額を問う問題でした。固定資産の交換・総合償却の処理方法は、難易度が高いと考えられます。

 問2は、連結会計の仕訳を問う問題でした。子会社株式の一部売却以外を解答できたかがポイントになると考えられます。

第三問

 本問は本店の決算整理前残高試算表をもとに、本支店合併前の決算整理後残高試算表の金額を算定する決算修正の問題でした。

 現金・当座預金・買掛金・有価証券・有形固定資産・借入金・社債・従業員賞与を中心に得点を積み上げることができたかがポイントになると考えられます。

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資格スクール大栄・ネットスクール

第一問

問1(個人企業の集計問題)
 分量が多く、推定を要する箇所もあるため、難易度は高い問題です。損益勘定と残高勘定の空欄は3~5箇所くらい正解できていれば十分です。

問2(車両の売買に関する仕訳問題など)
 販売側と購入側の処理が問われています。利息区分の計算などを正確に行う必要がありました。

第二問

問1(固定資産に関する仕訳問題など)
 自家建設、総合償却(除却)、交換など、あまり見ない論点が出題されたため、戸惑う可能性がある問題でした。

問2(連結会計)
 子会社株式の一部売却以外は、比較的対応しやすい連結仕訳が問われていますので、ここでどれだけ点数を確保できるかが重要となるでしょう。

第三問

 決算整理前残高試算表の空欄箇所が多く、例年どおりボリュームが多い問題となっています。内容的にも在外支店に関する処理や金利スワップなど、一部で対応しにくい論点が出題されています。現金預金、有価証券、有形固定資産、社債、従業員賞与などを中心に、解答しやすい箇所をしっかり解答していく必要があります。

予想合格ボーダーライン

 以上を踏まえ、予想合格ボーダーラインは次のとおりとなります。

 第一問 12点
 第二問 15点
 第三問 28点
 合 計 55点

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財務諸表論

資格の大原

第一問

 討議資料「財務会計の概念フレームワーク」、企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」、「企業会計原則注解」注18、「固定資産の減損に係る会計基準(同基準の設定に関する意見書を含む)」と多くの論点が出題されており、全体をとおして横断的に理解している必要がありました。

問1
 財務諸表における認識対象に関する問ですが、基本的な論点ですので正確に記号を選択していきたいところでした。

問2
 「会計上の見積りの開示に関する会計基準」からの出題でしたが、空欄補充と記号選択のみで構成されているため、得点できると有利になると思われます。

問3
 修繕引当金をベースとして、引当金の計上要件について問われていました。貸借のそれぞれの考え方を思い出して正確に解答したい部分です。

問4
 収益性の低下に関する問題でした。回収可能価額については、しっかりと対策をとられていたと思いますので、確実に得点しておきたいところです。

第二問

 問1については、企業会計原則からの引用であり損益計算全体を問うているため、第一問と同様に幅広い知識が必要でした。基本的な原則をしっかりと思い出し、具体的な内容につなげることができたかがポイントとなったでしょう。昨年に引き続き、考え方の名称を指摘する問題が出題されていた点も特徴的でした。

 問2については、為替予約取引の会計処理に関する問題でした。全体的に難易度が高いため、計算の知識を使って記号選択の問題は正確に解答したいです。

第三問

 商品販売業を前提とした財務諸表(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書)の作成問題でした。ボリュームは標準ですが、複数の外国通貨や固定資産の減損における将来キャッシュ・フローの見積り(大規模修繕)、決算賞与など見慣れない項目も出題されていました。基本的な項目を正確に解答し、得点を積み重ねることができたかが合否を分けていると思います。

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消費税法

資格の大原

第一問(理論)

 問2の事例理論問題の一部には難解な設問もありましたが、全体としては普通レベルでした。

 問1は、「課税売上割合が著しく変動した場合の調整対象固定資産に関する仕入れに係る消費税額の調整」、「法人の確定申告書の提出期限の特例」および「電子情報処理組織による申告の特例」に関するシンプルな個別理論であり、解答しやすい問題でした。ただし、問1の解答量が非常に多く、解答時間に合わせて解答範囲を調整する必要がありました。

 問2は、平成29年本試験と同形式の正誤事例が4問出題されました。1問目は、非居住者であるプロスポーツチームの監督が行った競技指導が特定役務の提供に該当するかどうかが問われました。また、4問目は、消化仕入れを行っているデパートにテナントを出店している法人の簡易課税制度の事業区分について問われました。両問とも非常に細かなレベルの出題であり、正答は困難だと思われます。

第二問(計算)

 全体として難易度は高く、解答量が非常に多かったため、完答することは困難だと思われます。解答時間を考慮しつつ、取引の課非区分など得点しやすい箇所を確実に得点する必要があります。

 問1は、適用税率や事業ごとの課税売上割合に準ずる割合をテーマとする、個人事業者の原則計算の総合問題でした。複数税率であることや、事業ごとの課税売上割合に準ずる割合の算出のために、売上高や共通課税仕入れを区分する必要があることから、非常に煩雑な集計等が求められ、解答時間を要する問題でした。

 問2は、居住用賃貸建物及び調整対象固定資産に関する税額調整を問う個別問題でした。課税賃貸用部分が併存する居住用賃貸建物や、居住用賃貸部分の一部を課税賃貸用へ転用した場合の取扱いが出題されており、難易度の高い問題でした。

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資格スクール大栄・ネットスクール

第一問(理論)

問1
 「課税売上割合が著しく変動した場合の調整対象固定資産に関する仕入れに係る消費税額の調整」、「法人の確定申告書の提出期限の特例」、「電子情報処理組織による申告の特例」という個別問題が3題出題されていました。1問目と2問目については、正確な解答が要求されると思います。しかし、3問目については、ほとんどの受験生が対応できていないと思われますので、この問題が合否を分けることはないと考えます。

問2
 事例問題が4題出題され、問題文の文章が正しいか誤っているか判断し、その理由を消費税法令に基づき説明するというものでした。4題のうち、「社会福祉事業等に係る取引区分と国内取引に係る国内課税仕入れの取扱い」については解答できていなければならないと思います。しかし、「特定役務の提供の判断」と、「デパートに出店しているテナントの簡易課税制度上における業種区分」については、Q&Aや質疑応答事例からの出題であったため難易度の高い問題でした。

第二問(計算)

問1
 仕入れに係る消費税額を、消費税法第30条第2項の規定にしたがって計算する総合計算問題が出題されました。ここで目立ったのが、近年の改正項目である「軽減税率」と「契約書に用途の記載がない賃貸借契約」が出題された点です。なお、これら2点については、問題文にどのように処理するか説明がありましたが、どこまで正確に問題文の指示を読み取れたかどうかで合否が分かれると思います。

問2
 居住用賃貸建物を課税賃貸用に供した場合等の仕入れに係る消費税額の調整計算の問題が出題されました。この調整計算については、令和5年度税理士試験の計算問題として出題されると思っていましたが、令和3年度での出題となりました。A建物、B建物及びC建物それぞれについて計算する問題でしたが、A建物は1階が店舗として使用されていることから難易度の高い問題だと思います。ただし、B建物とC建物は練習問題レベルのため解答したいところです。

予想合格ボーダーライン

 以上を踏まえ、予想合格ボーダーラインは次のとおりとなります。

 第一問 30点
 第二問 31点
 合 計 61点

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