【私の理論暗記「超」追い込み法】外国人が日本語の税法をどのように覚えたのか?


李 華
(令和4年度税理士試験合格者)

【編集部より】
8月の税理士試験に向け、「理論暗記をもっと強化したい」と考える受験生も多いのではないでしょうか。「自分に合う方法をいかに早く見つけるか」が勝負どころのようですが、なかなか一筋縄にはいきません。
そこで、5人の合格者の方々がどのような方法をとって、直前期に追い込みをかけていたのかを教えて頂きました。いいなと思った方法はぜひ取り入れてみてください!

暗記のメカリズムを理解すること

日本語を母国語とする他の受験生と比べて、私は外国語で税法を暗記して、受験するわけですから、とても不利な状況でした。なので、科学的で効率がよい方法が必要でした。そこで、今回は私が実践した方法を紹介します(合格体験記はコチラ)。

まず、暗記のメカニズムを理解し、それを利用して、暗記の効率を高めることが大事です。

学習で得られた新しい知識は、最初は短期記憶で保存され、その内の一部が大脳皮質などに移されて長期間にわたって保存されます。何をすれば長期記憶に残されるのかは、ある程度解明されたもので、一つは「繰り返し暗記すること」、もう一つは「感情を交えて暗記すること」です。

「繰り返し暗記」というのは、時間をかけて努力するしかないということです。でも、ただ時間をかけるのではなく、科学的で効率が良い方法を行うことです。繰り返し暗記する方法として有名な説に「エビングハウスの忘却曲線」があるので、これに基づいて暗記スケジュールを組むことが大事です。

「感情を交えて暗記」するのは、人それぞれの好みと相性があると思うので、自分に合うやり方を見つけることが大事です。でも、見つからなくても大丈夫です。繰り返し暗記するだけでも、十分に暗記できます。

暗記管理表。忘却曲線に従って定期的に繰り返し、暗記ができたかを記録した。

具体的な暗記方法―インプットよりもアウトプット

まず、「すらすら読める」ように

税法条文はとても癖が強い文章だと思います。その文章に慣れるのが大事なので、まずすらすら読めるくらい「音読」をすることです。

見ながらでもすらすら読めない文章を、見ずにすらすら書けるはずがありません。すべてのスキマ時間を利用して音読するために、自分の音読を録音して、それを聞きながら復唱していました。

目でインプットして声でアウトプットしたものを、さらに耳でインプットして声でアウトプットすることにより、通勤時に駅まで歩く時間や家事の時間などのようなスキマ時間で音読をしていました。

また、録音した音声と条文を照らし合わせながら、読み間違えたところがないかをチェックしました。例えば、「資産の譲渡」を無意識に「資産の譲渡等」と読んでしまうなど、自分が普段無意識に間違ってしまうところがわかるので、それ以降は気をつけることで暗記の精度が高まりました。

次は、「書ける」ように

「書く」のはかなり時間がかかるので、代わりにタイピングでもよいと思います。重要な条文については、暗記した後に一回書くようにしました。思ったより漢字が書けなかったり、重要な専門用語を書き間違えたりするので、暗記の精度を高めるためには良い方法だと思います。

理論は「目次」から覚えること

理論の全体像を把握することがとても大事です。目次を暗記することで、全体のイメージができ、条文と条文の繋がりがわかりやすくなり、より深く全体を理解することができます。

全体像が見えているため、暗記のスケジュールも立てやすくなります。また、目次の暗記は、解答の作成にもとても役に立つので特にオススメです。

最後の1ヵ月間は、犬の散歩中に条文暗記をしていましたが、その時にも、まず「目次」を思い出して、この目次の中でその日の散歩中に暗記する範囲を絞って、その範囲内の条文を一つ一つ暗唱しました。最初は思い出すのがとても辛く、何十回も音読して暗記したはずなのに、思う通りには暗唱できませんでした。

散歩から帰ったら、思い出せなかった条文をもう一度見て、暗記していました。これを毎日繰り返すことで、最終的には1時間ほどの散歩で、半分の条文をすらすら暗唱できるようになりました。「思い出す過程」が長期記憶に転換する過程であることが身に染みてわかりました。

税法に「興味」を持つこと

同じ条文を何十回も読んでいるのに、不思議と毎回新しい発見がありました。最初は、すらすら読めるようになることで精一杯でしたが、段々と条文同士の繋がりを理解できるようになり、条文の意味もより深く理解できるようになっていきました。

ある条文を暗唱しているときに、「もしかして、これはこういう意味かな⁉」とふと気づいた瞬間はとても嬉しかったです。興味を持っているから、つらい勉強も楽しくできたと思います。毎日、今日はどんな新しい発見があるのか、ワクワクしながら暗記していたのが、私にとって「感情を交えて暗記」する方法だったのかもしれません。

税理士試験はとにかく時間が足りない試験です。試験場で作文する時間はありません。問題文を読んだら、すぐ税法の全体からどの部分の条文を書くか範囲を絞って、その条文の中でも、制限時間内に書ける内容を頭の中で選定して、後はひたすらハイスピードで書くことです。

「税法の全体像を理解すること」と「条文を丸暗記すること」の重要性を理解し、最後の最後まであきらめずに必死に頑張るという心構えがとても大事です。

外国人の私もできたものですから、あなたならもっとできます! 自信をもって頑張りましょう!!

【執筆者紹介】

李 華

中国出身。大学での専攻は土木と環境工学。2012年に日本に移住後、就職のため日商簿記1級を取得。税理士法人勤務を経て、現在は事業会社で総合職(経理)として勤務。
税理士試験簿記論・財務諸表論は大学院在学中に独学合格、消費税法は月40時間以上の残業をこなしながら受験し合格。消費税法に合格後、2ヵ月の独学で宅地建物取引士試験合格。
・会計人コースWeb合格体験記「【税理士合格体験記】来日10年、弱点は日本語。試験までの1カ月で理論を丸暗記し、消費税法にリベンジ合格!


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