つぶ問5-1(財務諸表論)―引当金・繰延資産、退職給付


【解答】

1.不要
 一般債権に分類される債務者であるため、当社が債務保証による代位弁済を行う可能性は高くない。よって、引当金の発生の可能性が高い場合という要件を満たさないことから不要である。

2.不要
 割引手形について遡求義務にもとづく損害については引当金ではなく保証債務として計上されるため、引当金の計上は不要である。

3.必要
 見積原価総額が受注額を上回ることによる損失が確定するのは将来であるが、その発生原因は昨年度の工事受注と当期の人件費の高騰にあり、見積りが適切に行われいるならば損失の発生可能性が高く見積りが合理的と認められる。よって、引当金の計上が必要である。

4. 不要
 訴訟を起こされたとしても、当社に落ち度がないならば損害賠償による損失の発生の可能性が高いとはいえないため、引当金の計上は不要である。

5. 必要
 過去に行った工事という当期以前の事象に起因して将来に補修工事を行うものであり、当社の手抜き工事であることから当社の負担で工事を行う可能性が極めて高く金額の積算により金額の合理的な見積りも終えている。よって、引当金の計上が必要である。

6.不要
  損害額の算定が終わっていないため、まだ金額を合理的に見積ることができないことから、引当金の計上は不要である。

7. 不要
 金額が確定していることから、引当金ではなく確定債務として未払金などの適切な勘定科目で負債を計上することになるため、引当金の計上は不要となる。


【解説】
 どのような状況において引当金の計上が必要になるかを確認する問題です。ポイントは、引当金の4つの要件をすべて満たしているか否か、引当金以外の負債で計上されるものに該当するか否かの2つです。

 1と4は発生の可能性が高いという条件を満たさず、6は金額の合理的な見積りという条件を満たさないため、それぞれ引当金の計上は不要となります。このように、引当金は4つの要件をすべて満たした場合に限り計上しなければならないものとなります。4については、自社が責任を認める場合や敗訴する可能性が高い場合、もしくは第一審で敗訴した場合(第一審判決を受け入れられず第二審に進む場合も)には発生の可能性が高いものとして計上が必要になります。

 また、2と7は引当金以外の負債として計上されるケースです。2について、債務保証等は単独の契約として締結して4つの要件を満たした場合は債務保証損失引当金となりますが、債権の譲渡等にともなう場合は保証債務を負債として時価で計上します。また、7は金額が確定しているため、引当金ではなく未払金により計上される項目となります。

つぶ問は、2018年9月号~2019年8月号までの連載「独学合格プロジェクト 簿記論・財務諸表論」(中村英敏・中央大学准教授/小阪敬志・日本大学准教授)に連動した問題です。つぶ問の出題に関係するバックナンバーはこちらから購入することができます。

【つぶ問】一覧
つぶ問1-1(財務諸表論)
つぶ問1-2(財務諸表論)
つぶ問1-3(財務諸表論)-概念フレームワーク
つぶ問1-4(財務諸表論)-企業会計原則
つぶ問2-1(財務諸表論)-棚卸資産の評価
つぶ問2-2(財務諸表論)―棚卸資産の評価
つぶ問2-3(財務諸表論)―固定資産の減損
つぶ問2-4(財務諸表論)―棚卸資産
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つぶ問5-1(財務諸表論)―引当金・繰延資産、退職給付
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つぶ問10-4(財務諸表論)―連結、のれん
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