【論述に強くなる!財表理論講座】第5回:金融商品会計③



全31回のプログラムで、税理士試験・財務諸表論に強くなる! 
論点ごとに本試験に類似したミニ問題を用意しました。まずは問題1にチャレンジし、文章全体を何度か読み直したところで問題2(回によっては問題3も)を解いてみましょう。そして、最後に論述問題を解いてください。


長島正浩
(茨城キリスト教大学経営学部教授)

まずは問題にチャレンジ!

( ① )とは,先物取引,先渡取引,( ② ),スワップ取引及びこれらに類似する取引である。
ヘッジ取引とは,ヘッジ対象の資産又は負債に係る( ③ )を相殺するか,ヘッジ対象の資産又は負債に係る( ④ )を固定してその変動を( ⑤ )ことにより,ヘッジ対象である資産又は負債の価格変動,金利変動及び為替変動といった( ③ )等による(  ⑥ )の可能性を減殺することを目的として,( ① )をヘッジ手段として用いる取引をいう。

問題1 
文中の空欄(   ①   )から(   ⑥   )にあてはまる適切な用語を示しなさい。

問題2 
ヘッジ取引のうち一定の要件を充たす場合に適用される会計処理を説明しなさい。

解答

問題1

① デリバティブ取引
② オプション取引
③ 相場変動
④ キャッシュ・フロー
⑤ 回避する
⑥ 損失

問題2

当該会計処理をヘッジ会計といい、ヘッジ会計とは、ヘッジ取引のうち一定の要件を充たすものについて、ヘッジ対象に係る損益とヘッジ手段に係る損益を同一の会計期間に認識し、ヘッジの効果を会計に反映させるための特殊な会計処理をいう。

基本的な考え方

・デリバティブ取引により生じる正味の債権及び債務は、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は、原則として、当期の損益として処理する。

・相場変動等による損失の可能性を回避しようとする対象項目をヘッジ対象といい、その目的のために利用されるデリバティブなどをヘッジ手段という。

・ヘッジ会計の方法には、繰延ヘッジ会計時価ヘッジ会計の2通りの方法がある。

論述問題にチャレンジ!

デリバティブ取引により生じる正味の債権債務はなぜ時価評価するのか?

デリバティブ取引は、取引により生じる正味の債権又は債務の時価の変動により保有者が利益を得又は損失を被るものであり、投資者及び企業双方にとって意義を有する価値は当該正味の債権又は債務の時価に求められると考えられるから。

デリバティブ取引により生じる正味の債権債務はなぜ時価評価するのか?

デリバティブ取引により生じる正味の債権及び債務の時価の変動は、企業にとって財務活動の成果であると考えられるから、当期の損益として処理する。

ヘッジ会計の2つの方法とは?

繰延ヘッジ
繰延ヘッジ会計とは、時価評価されているヘッジ手段に係る損益又は評価差額を、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで純資産の部において繰り延べる方法である。

時価ヘッジ
時価ヘッジ会計とは、ヘッジ対象である資産又は負債に係る相場変動等を損益に反映させることにより、その損益とヘッジ手段に係る損益とを同一の会計期間に認識する方法である。

〈執筆者紹介〉
長島 正浩(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師、会計事務所(監査法人)、証券会社勤務を経て、資格予備校、専門学校、短大、大学、大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後、松本大学松商短期大学部准教授を経て、現在に至る。この間30年以上にわたり、簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。

※ 本記事は、会計人コース2020年1月号別冊付録「まいにち1問 ポケット財表理論」を編集部で再構成したものです。

〈バックナンバー〉
第1回:キャッシュ・フロー計算書
第2回:1株当たり当期純利益
第3回:金融商品会計①
第4回:金融商品会計②


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